レーシック治療の情報をインターネットなどで調べていると、白内障や緑内障の情報も目にすることが多いかと思います。そして、「レーシック治療をしていると白内障手術が受けられなくなる?」「レーシック治療をしていると白内障や緑内障の発見が遅れる?」など、不安に駆られる情報を目にすることもあるのではないでしょうか。この記事では、そのように不安や疑問を抱える方に向け、レーシックと白内障の関係性について解説します。
レーシックと白内障の関係
視力矯正手術であるレーシックと、加齢により多くの人が発症する白内障には、どのような関係があるのかをご存じでしょうか。「レーシックを受けていても、白内障になる?」「レーシックを受けていたら白内障手術は受けられない?」など、疑問をお持ちの方も多いと思います。白内障は、80代ではほぼすべての人が罹患すると言われている疾患です。知識を深めることで、いざ白内障になったときにも慌てないように、またできる限りの予防ができるように過ごしましょう。
レーシックとは
レーシックとは、近視、遠視、乱視を矯正する手術のことです。レーザーを角膜に照射することで角膜の形状を調整し、屈折異常を矯正します。手術後は、眼鏡やコンタクトレンズを使わずとも物が見えるようになるため、そういった視力矯正器具の使用にわずらわしさを感じる方にとって魅力的な治療法となっています。また、角膜を削って行う治療法のため、一度手術をしてしまうと元に戻すことはできませんが、ICL治療などと比べると比較的安価で受けられることが魅力の一つとなっています。
レーシックの仕組み
レーシック治療では、光の屈折を行う角膜を、エキシマレーザーの照射により削ることで屈折力を矯正します。そのため、角膜が薄い方や角膜の形状がいびつな方、円錐角膜の方や重篤な疾患をお持ちの方などは、手術の適応が認められない場合があります。しかし、出血を伴ったり縫合や抜糸をしたりすることなく行える手術であり、点眼麻酔のため麻酔時の痛みがない点は、患者さんの負担を抑えていると言えるでしょう。また、手術後は早ければ当日、遅くても翌日には視力の回復が見込める点も大きなポイントです。
レーシックの施術内容
レーシック手術では、まず目にレーザーを当てて角膜の表面にフラップと呼ばれる蓋を作ります。その後、フラップをめくった状態でレーザーを照射し、角膜の形状を調整します。レーザー照射時間は、両目を合わせても1、2分ほどです。また、事前に点眼薬による麻酔を施すため、痛みを感じることはありません。角膜の形状調整が終了したら、フラップを閉じ、数十分ほど安静時間を取れば医療機関内での施術は完了となります。フラップは、自然と吸着するため縫合などは必要なく、術後に勝手に開いてしまうようなことはありません。
白内障のままレーシックは受けられない
では、近視や遠視だけでなく、白内障も発症している場合はレーシック治療を受けることで症状は改善するのでしょうか。残念ながら、白内障をすでに発症している状態ではレーシック治療で視力を回復させることはできません。それは、角膜の形状の変化では、白内障による視力低下を改善させることはできないからです。
白内障とは
ここでは、白内障について説明いたします。前述のとおり、白内障は早ければ40代で発症し、80代ではほぼすべての人が発症する疾患です。どなたでもなり得る病気ですので、正しい知識を身に付け、できる限りの予防に努めましょう。
白内障とは
白内障は、水晶体と呼ばれる、目の中でレンズの役割を果たす組織が白濁してしまう病気です。
白内障の症状と原因
白内障では、水晶体が白く濁ることにより眼底まで光が届かなくなり、視界がぼやけたり、物が二重に見えたり、必要以上にまぶしく感じたりといった症状が現れます。症状には個人差があり、また、初期には自覚症状を感じにくいという特徴があります。原因は加齢であることがほとんどですが、先天的なもの・外傷、アトピー・薬剤、放射線・そのほかの目の病気(炎症)によって起こるものの場合もあります。
白内障手術の内容
初期の白内障の場合は、点眼薬で症状を遅らせることができる場合もあります。しかし、すでに濁ってしまった水晶体は、点眼薬などの薬剤で元に戻すことはできません。そのため、症状が進んでいる場合には、濁った水晶体の代わりとなる眼内レンズを挿入する手術が選択されます。この眼内レンズを挿入する手術は、日帰りと入院のどちらでも行われています。手術自体は短時間で行えるにもかかわらず入院が必要となるのは、手術翌日の通院が必要になることや、手術後は眼帯をつける必要があるためです。一度帰宅してもすぐに通院しなければならないことや、眼帯をつけての通院は危険も伴うことから、入院での手術を推奨する医院や、それを選択される方も多くなっています。
レーシックと白内障手術の違い
同じように視力の回復を目的とするレーシックと白内障手術ですが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
施術方法と目的の違い
レーシックと白内障手術では、まず施術方法が異なります。例えばレーシック治療の場合、角膜を削ることによって屈折異常を矯正します。それに対し白内障手術では、局所麻酔下で目の中に吸引器具を挿入し、白濁の原因となっている水晶体の中身を吸引します。そのうえで、眼内レンズを挿入することで視力の改善を促します。「視力回復」という大枠は同じでも、レーシックが角膜の厚みを調整することで網膜にピントを合わせる手術なのに対し、白内障手術は水晶体の透明性の回復と人工レンズの挿入により視力回復を目指す点も異なっています。
費用の違い
また、費用に関してもレーシックと白内障手術ではそれなりの差があります。まず、レーシック治療に関しては、自由診療のため医療機関によって差はありますが、20万円から40万円ほどが相場となっています。それに対し白内障手術は、1点に焦点が合う「単焦点眼内レンズ」の場合は保険適用となっています。そのため、負担割合にもよりますが2万円から5万円程度が費用相場となっています。
しかし、同じく白内障手術で使われるレンズでも、複数の場所にピントが合う「多焦点眼内レンズ」は選定療養(追加費用を自己負担することで、保険適用外の治療を保険適用の治療と併せて受けることができる制度)で、各医療機関で設定されたレンズの差額を自費で支払う必要があります。さらに、日帰りではなく入院で白内障手術を行う場合は、入院費用が別途必要となります。また、レーシックにしても白内障手術にしても、その費用に検査費用が含まれているのか、アフターケアの費用は別途払う必要があるのかなどは、医療機関によって異なります。想定外の高額出費を抑えるためにも、事前にしっかりと確認しておくことが大切です。
レーシックを受けた後に白内障手術は受けられるのか
「すでに白内障を発症している状態ではレーシック治療で視力は回復できない」と説明しましたが、では逆にレーシック治療を受けた後に白内障を発症した場合はどうなるのかご存じでしょうか。
レーシック後に白内障手術はできる
レーシック治療後に白内障を発症した場合、白内障手術を受けることは可能です。これは、角膜と水晶体というように、それぞれ手術をする箇所が異なっているからです。しかし、レーシック治療により変化した角膜を考慮したうえでの眼内レンズ挿入であるため、目の状態を熟知した医師・医療機関で受けたほうがリスクはより少なくなります。そのため、可能であればレーシック治療を受けた医療機関で白内障手術を受けることをおすすめします。
それが難しい場合には、レーシック治療に対応している医療機関を選ぶとよいでしょう。これは、レーシックに対応していない医療機関では、白内障手術で用いる眼内レンズがレーシック患者さんに対応していなかったり、レーシック患者さんの白内障手術におけるハードルが高かったりすることがあるためです。近年では、白内障手術の眼内レンズの計算方式が更新され度数ずれは起こりにくくなりましたが、レーシックにも白内障手術にも知見を持つ医療機関を選ぶことが、よりリスクの少ない白内障手術につながると言えるでしょう。
白内障手術後にレーシックを受けるケースも
白内障手術をした後に、レーシックにより遠視や近視、乱視の矯正を行うこともあります。これは、白内障手術では完全な視力矯正ができなかった場合や、わずかな誤差などが生じた場合に検討されます。しかし、強度の近視や乱視の場合には、レーシックによる視力矯正が難しい場合があります。白内障手術の後にレーシック治療を受ける場合は、状態が十分に安定してから、しっかりと医療機関で検査や説明を受けたうえで行いましょう。
レーシックと白内障手術のリスク
ここからは、レーシック治療と白内障手術、それぞれのリスクについてご説明いたします。メリットだけでなくデメリットやリスクも知っておくことで、後悔のない選択をしやすくなるでしょう。
レーシックのリスク
レーシックには、主に「角膜を削ることによるリスク」「合併症のリスク」「感染症のリスク」「術後視力低下のリスク」の4つのリスクがあります。
・角膜を削ることによるリスク
角膜は削ってしまうと元には戻せません。角膜には光を屈折させる働きや目を守る働きがあるため、それを削って薄くすることにはリスクが伴います。
・合併症のリスク
ケラトエクタジア(医原性の角膜不正乱視)やドライアイ、ハロー・グレア現象などが代表的な合併症です。しかし、ケラトエクタジアに関しては事前の適応検査にて精密に目の状態を調べることで発症リスクを確認することができますし、ドライアイやハロー・グレア現象も事前に発症するかどうかを推測でき、発症してしまった場合も時間がたつにつれ徐々に症状は治まる場合がほとんどです。そのため、信頼できる医療機関を選ぶことや、事前の検査をしっかりと行ってもらうことが、リスクを抑えるためには重要だと言えるでしょう。
・感染症のリスク
感染症のリスクについて、治療器具の滅菌・消毒をしっかり行っているかどうか、手術後のアフターケアについてきちんと指導してもらえるかどうかなど、信頼できる医療機関選びが重要となります。また、患者自身が決められた日程で術後検診に通い、目の保護や衛生管理といった注意点を守ることも大切です。
・術後視力低下のリスク
術後、一時的に近視が戻ってしまうことがあります。術後半年から数年すると度数が安定してくることが多いですが、気になる症状がある場合には医師に相談をしておくといいでしょう。
白内障手術のリスク
白内障は多くの方が発症する疾患のため、手術に関しても身近に感じられることがあるかと思います。しかし、ほかの治療と同様にリスクは存在しています。例えば、術後の見え方に関してです。「眼内レンズを挿入すれば、以前と同じように見えるようになる」と考えている方も少なからずいますが、まったく同じように見えるようにはなりません。レンズの色によって少し青みや黄みがかって見えたり、コントラストがあまり見られなくなってしまったり、年齢によって見え方が異なる場合もあります。
また、手術直後には角膜浮腫、虹彩炎、眼圧上昇といった症状が一時的に現れたり、細菌感染による術後眼内炎や嚢胞様黄斑浮腫など、治療が必要となる合併症にかかったりする場合もあります。後発白内障という、術後数年たってから視力低下が現れる疾患を発症する場合もありますので、手術をした後も定期的な検診で目の健康を守ることが大切です。
まとめ
レーシックと白内障手術の関係について、知識を深めることはできたでしょうか?レーシックは認知度が高まっている治療法とは言えども、まだまだインターネット上などではさまざまな情報が飛び交っているのが現状です。
メリットだけでなく、リスクやデメリットもきちんと取り入れることで、正しい判断ができるようにしておきましょう。また、気になる症状や治療法がある場合には、信頼できる医療機関に早めに相談し、適した時期に適した治療を受けられるよう準備しておくことも大切です。
参考文献