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白内障が急に進むことがある?原因・症状・予防法を解説

白内障が急に進む原因や症状

目の水晶体が濁って見えにくくなる白内障は、高齢者に多く発症します。症状は年齢とともに進行するのが一般的です。ところが、場合によっては急に症状が進むこともあります。

白内障の原因は老化だけに限りません。ほかの病気によるものや外傷性のものなどさまざまです。なかには急に進行するタイプもあり、年のせいと放置すべきではありません。

この記事では急に進む白内障について原因・症状・予防法を解説します。最近見え方が変わったと感じる方は、この記事を参考にしてください。

白内障が急に進む原因や症状

白内障が急に進む原因や症状

白内障が急に進む原因は何ですか?
急に進む白内障の原因は主に以下の4つです。

  • ステロイド薬
  • 糖尿病
  • 放射能
  • 外傷・刺激

まずステロイド剤の副作用が挙げられます。全身的な病気の治療に使うステロイド内服薬や喘息の吸入薬による白内障の進行は早く、数ヵ月で症状が現れ1年で手術が必要になる例もあるほどです。
また、糖尿病による高血糖の影響でも白内障がおこり、特に若い方で進行が早くなります。
そして、放射線・紫外線被ばくでも水晶体に濁りが生じて白内障になり、進行を早める要因は被ばく量です。
白内障は目に対する外傷・刺激でも発症します。アトピー性皮膚炎での白内障はステロイドの影響もありますが、目の周囲におこる炎症を掻く・叩くことも原因です。また、スポーツなどでの打撲による外傷性白内障もみられます。

白内障は自己治癒が望めますか?
白内障は、目をカメラに例えるとレンズにあたる水晶体が濁る病気です。この濁りは自然に消えたり薄くなったりするものではなく、したがって自然治癒は望めません
水晶体はタンパク質でできた透明な組織です。何らかの要因でタンパク質を構成するアミノ酸に変化が生じて、異常なサイズのタンパク質ができてしまいます。そのタンパク質が濁りとなったのが白内障です。
この濁りは透明な卵の白身が熱で白くなったようなもので、もとの透明な状態に戻すことはできません。眼科では薬も使われますが、進行を遅らせることしか期待できないのが現状です。
白内障は自覚症状のある疾患ですか?
白内障は視覚の要として光を集める水晶体が濁る病気なので、当然自覚症状があります。しかし、進行しないと自覚しにくく、外観でもわかりにくい症状なのが特徴です。
白内障による水晶体の濁りは外周から始まります。中心部がまだ透明な初期段階では自覚症状はほとんど感じません
また、両方の目が同時進行していない場合もよくあります。その場合片方に症状が出ていても、良い方の目で代替えできてしまうのも自覚しにくい理由です。
さらに、症状に痛みがないのも特徴で、この点がさらに白内障の自覚を遅らせています。
白内障は薬での回復は望めませんが、進行を抑えることは可能です。早期に発見すれば薬治療で進行を遅らせ、手術しないまま過ごせる可能性もあります。50歳ごろからは定期的な検査がおすすめです。
白内障のよくある症状について教えてください
白内障の初期は症状をあまり感じず、やや進行した時点で次第に症状が現れ始めます。主な症状は以下のようなものです。

  • 視力が落ちる
  • 視野が白くかすむ
  • 薄暗く見える
  • 夜に光をまぶしく感じる
  • ボケて見える

どのような症状が出てくるかは人により違いますが、初期には視力の低下が多くみられます。メガネの調整では改善せず、眼科で検査をして白内障が発見される事例が多いようです。
水晶体が濁ることから白くかすむ症状は推察できる通りですが、それよりも光の透過度が落ちて薄暗く感じる症状の方が多くみられます。
また、濁った水晶体内部で光が拡散するため、夜間に街路灯や対向車のライトをまぶしく感じる症状も特徴的です。
進行にともなって水晶体が変形して屈折率が変わるため、対象がぼやけたり逆に老眼が改善する例もみられます。

白内障の手術や保険適用

白内障の手術や保険適用

急に進行した場合手術をした方が良いですか?
白内障の根本治療は手術しかありませんが、手術が適用になる条件・時期は特に定められていません。手術をするのは、患者さん自身が生活に支障をきたしていると感じたときです。
医師が手術をすすめる場合もありますが、それは症状が進行して手術が難しくなったり合併症をおこす可能性がある場合に限られます。手術するタイミングは患者さんによってまちまちです。
例えばパソコンが見にくいとか、対向車のライトがまぶしいと感じたときが手術すべきタイミングになります。
主に室内で過ごす方なら、特に支障がなければ手術を見送ってもかまいません。病院での視力検査結果などは参考でよく、自身が不便を感じているかどうかで判断してください。
白内障手術のレンズの種類について教えてください
白内障の手術で濁った水晶体と入れ替える眼内レンズには2種類あります。ピントが合う焦点が一つの単焦点レンズと二つ以上の多焦点レンズで、多焦点レンズは近年利用者が増えてきました。
単焦点レンズではピントが合う焦点が一つだけなので、患者さんの希望によって見たい距離に合わせたレンズを使います。デスクワークの方なら近距離用のレンズを入れ、車の運転をするときにはメガネで補完するといった使い方です。
多焦点レンズは焦点が二つのものと三つのものがあり、こちらも患者さんの生活に合った焦点を選択します。多焦点レンズを使うとメガネが不要になる場合が多く、眼科医会によると8~9割の方が通常の生活ではメガネなしといわれます。
また、焦点が合う範囲を広げた拡張型レンズも開発されていて、多焦点レンズの焦点間の継ぎ目がなく、自然な使用感が特長です。
レンズのバリエーションも多彩になりました。レンズの性質上避けられなかったボケを改善した非球面レンズ・まぶしさを軽減する着色レンズ・乱視矯正用レンズなどが広く使われています。
白内障手術は保険適用されますか?
白内障の手術は基本的に健康保険が適用されます。局部麻酔を使い超音波で水晶体を破砕する方式で、使うレンズは単焦点レンズという標準的な手術に適用されます。
一方で、多焦点レンズを使うと健康保険は適用されません
ただし、白内障の手術については「選定療養」の対象になっており、この制度を利用することで負担が軽減されます。具体的には、標準的な手術費用と単焦点レンズ代相当額には健康保険が適用され、その金額と多焦点レンズを使う手術代との差額は患者さんの負担です。
また、未承認の多焦点レンズやレーザー手術だと、保険適用外の自由診療になります。費用の負担は手術代・レンズ代の全額が患者さんになり、かなり重い負担です。
白内障手術は合併症などのリスクはありますか?
白内障手術は短時間でできる安全な手術ですが、術後の合併症がおこる可能性はあります。
手術の直後におきる早期合併症には角膜浮腫(むくみ)・虹彩炎・眼圧上昇などがあり、対応によって短期間で改善する症状です。
また、細菌感染による術後眼内炎は危険で、場合によっては失明の可能性もあります。
視力に影響する症状では黄斑浮腫もありますが、ステロイドなどで対処が可能です。
術後数年たってからでは、水晶体嚢(水晶体を包む膜)が濁る後期白内障があります。視力が落ちることもある症状ですが、レーザーで濁りを除去すれば改善する症状です。

白内障の急進を止める予防法

白内障の急進を止める予防法

急な進行をする可能性がある白内障を予防する方法はありますか?
白内障の原因で、症状の進行が急なものではステロイドや糖尿病があります。ステロイドを使っている場合、処方する医師もその影響を承知しています。使用期間が長いなど心配な方は医師に相談してください。
また、糖尿病では自己管理が大切です。血糖値が上がらないように食事に気をつけるのはもちろん、運動するなど自分でできることを日々続けてください。糖尿病の悪化を防ぐことが、そのまま白内障の進行抑制につながります
白内障は初期であれば、薬剤で進行を遅らせることが可能です。内服薬は現在ではほぼ使われませんが、眼科では点眼薬が処方されます。ピレノキシンやグルタチオンがそれで、水晶体の濁りをつくるタンパク質の蓄積を抑制する薬です。
定期的な白内障検査で早期発見はできますか?
白内障は検査で早期に発見でき、みつかれば薬で進行の抑制が可能です。生活に支障が出ない段階で抑制を始めれば、手術をせずに済む可能性もあります。
白内障では、意識しないままに仕事や読書など生活の質(QOL)が低下するものです。正常な人に比べ交通事故のリスクは2.5倍・転倒リスクは1.8倍ともいわれ、早期発見・予防が大切な意味を持ちます。
白内障は短時間でできる視力検査と細隙灯顕微鏡検査で早期発見が可能です。白内障の多くは加齢によるもののため、50歳くらいから定期的に眼科を受診して、早期発見に努めてください。

編集部まとめ

白内障手術 保護メガネと視力検査イメージ

白内障は80歳では100%の方が罹患するといわれ、珍しくはない病気です。ただし、生活には大きな影響を与えるため、決して軽視はできません。
この記事では、白内障でも急に症状が進行する原因・症状を解説し、手術や使用するレンズについても詳しくみてきました。
急に症状が進むと心配しますが、それぞれ適切な対処法があり、最終的には手術ができるので深刻なことにはなりません。
手術は健康保険が適用され、安全で短時間でできるようになりました。また、早期発見できれば薬で進行を抑える方法もあります。どちらを選ぶかの検討には、この記事を参考にしてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

東京大学医学部卒業(1995年 MD)/ 東京大学大学院修了(医学博士 2001年 PhD) / 東京大学医学部眼科学教室講師(2012-2015年) / デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016年-2020年)/ 旭川医科大学眼科学教室教授(2018年-2020年) / 横浜市立大学 視覚再生外科学 客員教授(2020年-現在) / 専門は黄斑疾患。シンガポールをはじめとした国際的な活動に加え、都内のお花茶 屋眼科での勤務やDeepEyeVision株式会社の取締役を務めるなど、マルチに活躍し ています。また、基礎医学の学術的バックグラウンドを持ち、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究などを行っています。

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