目に濁りが生じて視界がぼやけると、病気や失明の可能性などが心配になるのではないでしょうか。実際に、症状の内容によっては放置しておくと視力の著しい低下につながる可能性もあり、なるべく早めに眼科医院で検査や治療を受けることが大切です。
この記事においては、目に濁りが生じる原因や対処法などについて解説します。
目に濁りが出る病気
- 目の濁りは眼球内のどこに異常があると発生しますか?
- 目の濁りは、眼球内の角膜や水晶体、硝子体(しょうしたい)と呼ばれる部分に生じます。 角膜はいわゆる黒目部分のことで、眼球の表面にあり、目に入ってくる光を屈折させてピント調整をしやすくするための役割を持つ部位です。
角膜に異常があるとピントが合いにくくなり、乱視などのトラブルが生じます。視力を改善するために行われるレーシック手術は、角膜の形を整えてピント調節しやすくする治療です。 水晶体は、角膜の内側にある組織です。毛様体筋という筋肉によって伸縮し、それによって光の屈折を変えることでピントを調整します。 硝子体は、眼球内の大半を占める組織で、透明なゼリー状の液体が詰まっている部分です。眼球を外部からの衝撃などから守り、眼球の形を保つための役割を担っています。 角膜や水晶体、硝子体はすべて無色透明な組織で、黒目に見えるのは目の奥にある組織が透けて見えるためです。しかし、何かしらの異常によってこれらの組織に濁りが生じると、目の色が白く見えたり、視界がぼやけたりするようになります。
- 黒目が濁る病気を教えてください
- 上述のとおり、黒目というのは目の奥にある組織の色が見えることによって黒く見えているため、黒目に生じる濁りというのは、角膜、水晶体、硝子体のいずれかに濁りがある状態です。
具体的には、角膜に濁りが生じる角膜混濁や、水晶体が白く濁る白内障、硝子体に濁りが起こる硝子体混濁などが、黒目の濁りの原因となります。 この内、特に黒目の濁りとして認識されやすいのは、眼球の表面にある角膜に濁りがおこる角膜混濁といえるでしょう。角膜混濁は、細菌感染やアレルギーによる炎症のほか、角膜についた傷が治った後などに混濁が生じます。
また、水泡性角膜症という角膜を濁らせる病気があり、これは角膜のなかにある細胞が何らかの要因で損傷し、角膜内に水分が入り込んで排出されない状態になることで、角膜が浮腫んで厚くなったり、白く濁ったりするものです。 そのほかにも、角膜ジストロフィーなどの遺伝性の病気によって生じる沈着物や、角膜表面の細胞の異常増殖によって引き起こされる腫瘍、白眼を覆う結膜が増殖して黒目に入り込む翼状片なども、角膜混濁の要因です。
- 白内障とはどのような病気ですか?
- 白内障とは、眼球内でピント調節を行う役割を持つ水晶体が白く濁ってしまう症状です。黒目が白く濁ったような状態になり、視界も白くぼやけます。
外傷や先天的な要因によるもの、アレルギーや炎症によって生じるものなどがありますが、白内障の原因の多くは加齢による変化で、80代の方ではほぼすべての方が白内障を発症しているとされています。
視界が白くぼやけるほか、物が二重に見えるようになったり、眩しく感じたりするようになり、症状が進行していくと視力が低下してほとんど何も見えない状態になることもあります。
白内障は目の手術によって治療が可能で、白く濁った水晶体を除去して、人工のレンズを差し込む方法で視力を取り戻すことができます。
- 硝子体混濁とはどのような病気ですか?
- 眼球内の大半を構成する硝子体に濁りが生じて、光がとおらなくなってしまった状態を硝子体混濁と呼びます。硝子体混濁自体は病名ではなく、眼球内に濁りが生じているという状態を示すものです。
硝子体混濁の原因はさまざまで、ぶどう膜炎などの炎症性疾患や硝子体出血などによって症状が引き起こされます。こうした病気がある場合、放置しておくと視力低下や失明につながる可能性もあります。 硝子体混濁のなかで、よく見られる症状が飛蚊症です。飛蚊症は視界に黒い点などが浮かんでいるように見えるもので、硝子体に濁りが生じることで引き起こされます。
飛蚊症はすぐに何かしらの治療をするという必要がないことが多いですが、上述のように硝子体混濁の原因によっては早期治療が必要なケースもあるため、視界に黒い点が急速に増えているような場合はすぐに眼科を受診しましょう。
- 病気以外で目が濁ることはありますか?
- 直接目に濁りが生じるものではありませんが、ドライアイや眼精疲労によって視界がぼやけたり、かすんだりする状態も、目に濁りがあるのではないかと感じる可能性があります。
同様に、強い近視や乱視も、視界がぼやけるため、目の濁りを意識するかもしれません。
ただし、こういったケースは実際に眼球に濁りが生じているものではありませんので、適切なケアや、眼鏡などによる視力の矯正を行えば改善可能です。
目の濁りを治す方法
- 白内障はどのように治療ができますか?
- 白内障は、手術によって治療することが可能です。
白内障手術は、白く濁ってしまった水晶体を砕いて取り出し、代わりに人工のレンズを水晶体の位置に取り付ける方法で行います。日帰りでの手術に対応している眼科医院も多く、白内障の原因である水晶体の濁りを直接除去するため、すぐに視力を取り戻すことができます。
ただし、白内障手術で挿入されるレンズは水晶体のようにピント調整を行う機能がないため、手術の際にはどの距離にピントが合うようにするかといったレンズ選びが大切です。
保険適用外になりますが、遠近両用の多焦点レンズというものもあるため、白内障手術を受ける際は眼科医とよく相談して、適切なレンズを選ぶようにしましょう。
- 硝子体混濁は治療可能ですか?
- 硝子体混濁は、その原因に応じて治療を行うことが可能です。
単純に硝子体内に濁りや浮遊物が生じて引き起こされている飛蚊症であれば、レーザーによって濁りを破壊することで、症状の軽減を目指すことができます。
また、ぶどう膜炎などの炎症性疾患については、点眼薬などによって治療を行うことが可能です。 ただし、硝子体出血などが原因の場合は、硝子体手術という、眼球内の手術が必要となることもあります。
硝子体手術は局所麻酔をしたうえで眼球に小さな穴を開け、そこから細い手術器具を挿入して、硝子体の濁りを除去したり、網膜のトラブルを治す治療法です。
硝子体手術はとても繊細な技術や高度な設備が必要になるため、場合によっては大学病院などの高度医療機関で治療を受ける必要があります。
- ドライアイを改善する方法はありますか?
- ドライアイは、セルフケアや眼科医院での治療によって改善が可能です。
生活習慣としては、目をなるべく休ませるように意識することや、目の粘膜を保護する働きを持つビタミン類やオメガ3脂肪酸を積極的に摂取することなどを心がけるとよいでしょう。
眼科医院での治療としては、点眼薬などによる薬物療法のほか、ドライアイの原因の一つであるマイボーム腺の詰まりや炎症を、光治療で改善する方法などがあります。
- 目の濁りを予防する方法を教えてください
- 目の濁りを予防するためには、目の紫外線対策や、ビタミンCやベータカロチン、ルテインといった抗酸化作用がある栄養素を積極的に摂取することなどが有効です。食事はバランスのよい内容を心がけることが大切で、特に糖尿病は白内障のリスク要因にもなるため、糖質や脂質の取り過ぎなどには注意しましょう。
また、喫煙は白内障のリスクを上昇させるため、喫煙習慣がある方は禁煙を心がけるようにしましょう。 そして、定期的な眼科の受診も、目の濁りを予防するためのポイントです。白内障は手術をしなければ治療することができませんが、進行を抑制する薬などはありますので、定期的に眼科を受診しておくことで、手術が必要にならない状態を維持できる可能性があります。
定期的に眼科を受診しておけば、何かトラブルが生じていても早期発見ができるため、重症化するまでに治療しやすいといえます。
編集部まとめ
目の濁りは、角膜や水晶体、硝子体が何らかの原因で濁ることで生じます。
原因となる病気にはさまざまな種類があり、場合によっては早期の治療が視力を維持するために重要となりますので、気になる症状がある方は、早めに眼科医院を受診してみてはいかがでしょう。
参考文献