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硝子体手術で用いられる麻酔の種類や特徴、安全性を解説!

硝子体手術で用いられる麻酔の種類や特徴、安全性を解説!

硝子体手術とは、変質した硝子体を取り除いて病気を治す手術方法のことをいいます。白目に小さな穴を開ける手術であり痛みが生じるため、手術を行う際には麻酔が必要です。硝子体手術の際に用いられるのは、一般的には局所麻酔ですが、場合によっては全身麻酔が用いられることもあります。硝子体手術で用いられる麻酔の種類や特徴とはどのようなものなのでしょうか。それぞれの麻酔のリスクや注意点なども合わせて解説します。

硝子体手術について

硝子体手術について 硝子体手術とはどのような手術なのでしょうか。硝子体手術の概要、適用される病気、手術費用の目安などを解説します。

硝子体手術について教えてください
硝子体とは、眼球容積の8割を占める無色透明なゼリー状の物質のことです。硝子体は99%が水で、残りはヒアルロン酸やコラーゲンなどで構成されており、眼球の形を保つ働きなどをしています。硝子体に濁りや出血が起きたり、硝子体が癒着して網膜を引っ張ったりすることで、視力低下や視野異常が起こります。

硝子体手術とは、硝子体のなかに起こった濁りや出血を硝子体と一緒に取り除くものです。手術では、白目に3ヵ所の小さな穴を開けて、そこから細い特殊な器具を眼内に挿入して、変質した硝子体を除去します。

どのような病気の場合に硝子体手術が行われますか?
硝子体手術が適応される病気としては、網膜剥離、黄斑円孔、黄斑前膜(黄斑上膜)、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜下出血、硝子体出血、眼内炎、硝子体混濁、水晶体核落下など、さまざまなものがあります。
硝子体手術の費用の目安を教えてください
硝子体手術は疾患によっては健康保険が適用されます。手術費用の目安としては、自己負担割合が3割の場合で、片眼10万円~18万円程度が相場です。手術費のほかにも、薬剤費、入院費、麻酔費などがかかる場合があります。また、症状の程度や疾患の内容によっても費用は異なります。硝子体手術を検討している場合には、事前に費用についても確認しておくとよいでしょう。

なお、硝子体手術を受けた場合、条件によっては高額医療費制度を利用できる場合もあります。高額医療費制度については、お住まいの区市町村役場の窓口で確認しましょう。

硝子体手術における麻酔の役割と特徴

硝子体手術における麻酔の役割と特徴 硝子体手術を行うときにはどのような麻酔が用いられるのでしょうか。麻酔の種類や特徴を解説します。

硝子体手術ではどのような麻酔が用いられますか?
硝子体手術では、一般的には手術する部分だけに麻酔効果が出る局所麻酔が用いられます。硝子体手術の局所麻酔としては、球後麻酔やテノン嚢下(のうか)麻酔があります。意識や痛みを感じない状態での手術を希望する場合は、全身麻酔が選択されることもあります。

用いられる麻酔の種類や方法は、各医院によって異なります。希望や体調に合った麻酔方法が選択されるように、医師とよく相談して決めましょう。

局所麻酔と全身麻酔の違いについて教えてください。
局所麻酔と全身麻酔の大きな違いとしては、手術中の意識の有無です。局所麻酔の場合は、触れられている感覚はありますが痛みはほとんど感じません。手術中に会話することも可能です。全身麻酔の場合は、意識がない状態で行われます。眠っている間に手術が終わるので、手術中の反射的な身体動作を抑制できるのが特徴です。
どのような場合に全身麻酔が検討されますか?
局所麻酔に不安がある場合に全身麻酔が検討されます。例えば、極度の閉所恐怖症の人や一定の静止姿勢を保てない人、意識がある状態での手術に恐怖を覚える人などは全身麻酔が望ましいでしょう。

硝子体手術では特殊な場合を除いては局所麻酔が行われます。どうしても局所麻酔では手術ができないような方に限って全身麻酔が行われます。全身麻酔は麻酔科の管理が必要であり、できる施設は総合病院などに限られておりますので、手術を受ける場合に全身麻酔が必要と思われる場合には早めに担当医と相談しましょう。

ただし、全身麻酔は体に負担がかかるため、合併症があるなど適応できないケースもあります。また、局所麻酔よりも体にかかる負担が大きいため、局所麻酔にはないリスクも生じます。用いる麻酔の種類については、事前に医師とよく相談しましょう。

麻酔を受けるときに注意すべきポイント

麻酔の効果によって、痛みを感じずに硝子体手術を受けることができます。ただし、麻酔にはそれぞれ注意点があることに留意する必要があります。麻酔を受けるときの気を付けるべきポイントについて知っておきましょう。

球後麻酔を受けるとき、注意すべきことはありますか
球後麻酔とは、眼球の後方に麻酔を注入する方法です。眼球下方の下まぶたのうえから、眼球の後ろ側に向かって深く針を刺して、麻酔薬を注入します。球後麻酔には強力な効果がありますが、麻酔注入時に痛みを伴います。また、まれにではありますが、麻酔注入時に目の奥にある血管が傷ついて出血を起こしたり(球後出血)、眼球自体に針が刺さってしまったり(眼球穿孔)するリスクがあります。
テノン嚢下麻酔の特徴と注意点を教えてください
テノン嚢下麻酔とは、白目の表面を覆う結膜とテノン嚢という薄皮の下に麻酔を注入する方法です。結膜を少しだけ切開し、そこから先の丸い針で麻酔薬を染み込ませていきます。球後麻酔と比較して麻酔の際の痛みはほとんどありません。結膜下に出血が起こることもありますが、2~3週間程度で自然に吸収されます。合併症や注入時のリスクが低いのもテノン嚢下麻酔の特徴です。

注意点としては、球後麻酔よりも効果が軽く、持続時間が短い点です。そのため、硝子体手術を行う場合は、手術を短時間で終わらせることが前提となります。

全身麻酔を受ける場合、何に注意すればよいですか?
全身麻酔は、局所麻酔よりも体にかかる負担が大きくなります。合併症がある場合や体力的な理由によって、全身麻酔が受けられないこともありますので注意しましょう。また、全身麻酔を受ける際には、以下のようなリスクが生じます。事前によく確認して、医師と相談したうえで検討することをおすすめします。

全身麻酔のリスクとして、歯が欠ける・抜けることが挙げられます。お口にチューブを入れる際に、歯が損傷したりぐらついていた歯が抜けたりするケースが見られます。抜けそうな歯がある場合には、手術前に医師に伝えておきましょう。

肺炎も全身麻酔のリスクのひとつです。麻酔中や麻酔直後に、胃の内容物が気管や肺に入って誤嚥(えん)性肺炎を起こすことがあります。手術前の絶食・絶飲の指示には必ずしたがってください。

吸入する麻酔薬やチューブの刺激、アレルギー反応による気管支痙攣(けいれん)(喘息発作)、咽頭痙攣が起こることがあります。アレルギーの場合は、じんましんや呼吸困難が起きるケースもあります。また、まれではありますが、遺伝的要因によって悪性高熱症を発症する場合があります。悪性高熱症は、麻酔薬によって筋肉が硬直したり高熱が出たりするものです。アレルギーがある人や過去に麻酔や薬による症状があった人など、思い当たる例がある場合は、必ず事前に医師に知らせてください。

手術後のリスクとしては、吐き気や嘔吐といった気分不良、喉の痛みや声がかれるといった症状が起きる場合があります。数日以内に治るケースがほとんどですが、程度がひどい場合や不安な点がある場合は早めに医師に相談しましょう。

編集部まとめ

硝子体手術は、網膜剥離や硝子体混濁といった硝子体のなかの濁りや出血などの異常を除去するための手術です。硝子体手術では、球後麻酔やテノン嚢下麻酔といった局所麻酔が用いられるのが一般的ですが、患者さんの希望や状態によっては全身麻酔によって手術が行われることもあります。適応できる麻酔については、患者さんの状態や症状によっても異なります。また麻酔にはそれぞれ特徴や注意点がありますので、自身の希望や体の状態について医師に伝え、よく検討したうえで麻酔を選択しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

東京大学医学部卒業(1995年 MD)/ 東京大学大学院修了(医学博士 2001年 PhD) / 東京大学医学部眼科学教室講師(2012-2015年) / デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016年-2020年)/ 旭川医科大学眼科学教室教授(2018年-2020年) / 横浜市立大学 視覚再生外科学 客員教授(2020年-現在) / 専門は黄斑疾患。シンガポールをはじめとした国際的な活動に加え、都内のお花茶 屋眼科での勤務やDeepEyeVision株式会社の取締役を務めるなど、マルチに活躍し ています。また、基礎医学の学術的バックグラウンドを持ち、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究などを行っています。

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