硝子体剥離と呼ばれる病気をご存知ですか?主に加齢などにより眼球内の硝子体が網膜から剥がれる現象をいい、基本的には経過観察が推奨されますが、症状の急激な変化や新たな視覚異常には注意が必要です。
本記事では硝子体剥離について以下の点を中心にご紹介します。
- 硝子体剥離の症状・原因
- 硝子体剥離は治療する必要があるのか
- 硝子体剥離と似ている症状の病気
硝子体剥離について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
硝子体剥離とは
- 硝子体剥離とはどのような病気ですか?
- 硝子体剥離は、加齢などにより眼球内のゼリー状の組織である硝子体が網膜から剥がれる現象を指します。硝子体は眼球内で網膜と接触しており、眼内の安定性を保つ役割を果たしていますが、年齢とともに硝子体が収縮し、網膜から引き離されることがあるのが硝子体剥離です。この現象自体は自然な老化の一部とされており、視力に大きな障害をもたらすことは少ないです。
- 硝子体剥離の症状について教えてください
- 硝子体剥離の主な症状には、飛蚊症と光視症があります。飛蚊症は、視界に小さな黒い点や糸のような形をした影が浮かんで見える現象です。明るい場所や白い背景の前でこの症状を強く感じることが多いとされ、硝子体が収縮し、網膜から引き離される際の影響で起こります。
また光視症は、暗い場所や目を閉じた状態で閃光や稲妻のような光が見える症状で、硝子体が網膜を引っ張る際に、網膜に刺激が加わり、光が見えることにより起こります。
- 硝子体剥離になる原因は何ですか?
- 硝子体剥離の主な原因は加齢です。年齢とともに眼球内部のゼリー状の硝子体が水分を失い、収縮が起こるため、網膜から離れやすくなります。そのため、50歳以上の方に自然な老化現象としてみられることが多いとされています。また近視の強い方は眼球の形状が変化しやすく、硝子体剥離のリスクが高くなります。
外傷や目の手術、糖尿病網膜症などの眼疾患も網膜に異常をもたらし、硝子体との接触を弱めることで硝子体剥離を引き起こしやすくします。
- 硝子体剥離は20代など若い年齢でもなりますか?
- 硝子体剥離は主に加齢によってみられる現象ですが、20代やそれ以下の若い年齢でも発症する可能性があります。50歳以上にみられることが多いとされていますが、強度の近視の方は若年層でもリスクが高まります。近視が強いと眼球が伸びるため、硝子体が網膜から離れやすくなり、早期に硝子体剥離が起こることがあります。さらに、外傷や目の手術後の影響、遺伝的要因も若年層での硝子体剥離の原因となり得ます。例えば、目に強い衝撃を受けると、硝子体が急激に収縮し、網膜から剥がれる可能性があります。また、糖尿病網膜症などの疾患がある場合、若い年齢でも硝子体剥離が発生するリスクが高まります。
硝子体剥離の治療法
- 硝子体剥離の検査方法を教えてください
- 硝子体剥離の検査には、主に眼底検査と眼球超音波検査が用いられます。眼底検査では、瞳孔を広げる目薬(散瞳薬)を使い、専用のレンズで網膜と硝子体の状態を観察し、網膜剥離や裂孔などの異常がないか確認します。また、眼底カメラで網膜の詳細な画像を撮影する場合もあります。
眼球超音波検査は、硝子体の剥離状況を詳しく把握するために行われることがあり、眼底検査が難しい場合や硝子体出血などで視界が遮られている場合に有効とされています。
超音波検査では、硝子体の動きや網膜との関係性を確認でき、網膜剥離のリスク評価にも役立ちます。
- 硝子体剥離は治療する必要がありますか?
- 硝子体剥離は加齢による自然な現象であり、基本的には治療の必要がないとされています。軽度の飛蚊症や光視症を経験する方は多いようですが、これらの症状は視力に重大な影響を与えることはなく、日常生活に支障をきたすことはあまりありません。そのため、硝子体剥離自体に対しては特別な治療を行わず、定期的な経過観察が推奨されます。
ただし、症状が急に悪化したり、新たな視覚異常が出現した場合には注意が必要で、網膜剥離や裂孔が疑われる場合は、緊急の処置が必要です。網膜剥離が進行すると、視力の急激な低下や失明に至る可能性があり、このような重篤な状態に発展した場合、手術などの治療が行われることがあります。
- 硝子体剥離の症状が現れた場合、注意点はありますか?
- 硝子体剥離による飛蚊症や光視症が現れた場合は、まず症状の急激な変化に注意が必要です。視界に突然大きな浮遊物が増えたり、視界が部分的に遮られるような黒い影やカーテンがかかったように見える場合は、網膜剥離の可能性があります。網膜剥離は早期の対処が必要で、放置すると失明のリスクが高まります。早急に眼科で診察を受けることが大切です。
軽度の飛蚊症や光視症の場合、定期的な経過観察が推奨されますが、症状が悪化したり、新たな異常が現れた際は、速やかに医師に相談しましょう。
硝子体剥離と関連する疾患
- 硝子体剥離と網膜剥離との関係性を教えてください
- 硝子体剥離と網膜剥離は密接な関係があります。 上記でご紹介したとおり、硝子体剥離は加齢やその他の要因によって硝子体が収縮し、網膜から離れる現象です。自然な老化現象として起こるもので、治療を必要としないことが多いとされています。しかし、硝子体が剥離する際に網膜に強い牽引力が加わると、網膜に裂孔(小さな穴)が生じることがあり、この裂孔が進行すると、網膜剥離につながる可能性があります。
網膜剥離は、網膜が硝子体液の影響で眼底から剥がれる状態であり、放置すると視力低下や失明に至ることがあります。硝子体剥離による網膜裂孔が原因で網膜剥離が発生する場合、早期に手術などの適切な治療を行うことが必要です。
- 硝子体剥離と似ている症状の病気を教えてください
- 硝子体剥離と似た症状を引き起こす病気には、いくつかの重要な眼疾患があります。
- 網膜裂孔・網膜剥離
網膜裂孔・網膜剥離は、硝子体剥離と共通して飛蚊症や光視症などの症状が現れることがあります。網膜裂孔は網膜に裂け目ができる状態で、放置すると網膜剥離に進行するリスクがあります。
網膜剥離は、網膜が眼底から剥がれる深刻な病気で、放置すると視力低下や失明につながる可能性があるため、早期治療が不可欠です。硝子体剥離と似た症状が現れた際は、これらの重篤な病気の可能性も考慮し、速やかな眼科受診が重要です。 - 硝子体出血
硝子体出血も、飛蚊症のように視界に浮遊物が見える症状が現れます。 網膜や血管の損傷によって硝子体内に出血が起こる状態で、視界が突然暗くなったり、黒い影が広がるように感じることがあります。糖尿病網膜症や外傷が原因で発生するケースが多く、早期の診断と適切な治療が重要です。 - ぶどう膜炎
ぶどう膜炎も、飛蚊症や視界のぼやけなどの症状が現れます。 眼内のぶどう膜と呼ばれる部分に炎症が生じる病気で、視界に浮遊物が見えるだけでなく、痛みや充血を伴うこともあります。原因は、感染症や自己免疫疾患などが考えられ、放置すると視力低下を招く可能性があるため、早期に治療が必要です。
- 網膜裂孔・網膜剥離
編集部まとめ
ここまで硝子体剥離についてお伝えしてきました。
硝子体剥離について、要点をまとめると以下のとおりです。
- 硝子体剥離の症状には、視界に黒い点や影が浮かぶ飛蚊症と、暗闇で閃光が見える光視症がある。硝子体剥離の主な原因は加齢で、なかでも、50歳以上にみられることが多いとされている
- 硝子体剥離は加齢による自然な現象で、基本的には治療が不要とされているが、急激な症状の悪化や新たな視覚異常が出た場合は、網膜剥離のリスクがあるため緊急処置が必要である
- 硝子体剥離と似ている症状の病気には、網膜裂孔・網膜剥離、硝子体出血、ぶどう膜炎などが挙げられる
飛蚊症や光視症の症状がみられる場合は、症状の急激な変化や新たな視覚異常に注意しながら生活し、自身の目の健康を守りましょう。 本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。