「緑内障」というと目が見えなくなって失明する病気というイメージがあるかもしれませんが、薬や手術のおかげで失明するリスクは以前に比べると減ってきています。しかし一般的な緑内障とは違い、治療開始が遅くなったり放置したりすると失明に至る危険もある「急性緑内障発作」という疾患があります。ここでは急性緑内障発作と一般的な緑内障との違いは何か? それぞれどんな症状なのか、またどんな治療方法があるのかなどについてまとめました。
緑内障と眼の充血の関係について
一般的な緑内障の症状はどういったものか、原因としてどんなことが考えられるか、さらに緑内障患者の眼に充血の症状が現れたらどんな病気の可能性があるのかなどについて紹介します。
- 一般的な緑内障の症状について教えてください。
- 一般的な緑内障は視神経が傷つくことによって視野(見える範囲)が徐々に狭まる病気です。非常にゆっくりと病気が進行するので初期の段階では自覚症状がなく、症状に気付いたときには視界が半分も狭くなっているということもあります。 モヤモヤして見える、かすんで見えるといった違和感があっても、見えにくさをもう片方の目で補って見ようとするため、発見が遅れがちです。
- 緑内障の原因について教えてください。
- 緑内障は眼球内の圧力(眼圧)が上昇し、視神経乳頭が圧迫され視神経が傷つくことが原因で起こります。眼圧が上がる原因はほとんどの場合不明ですが、他の病気や薬の副作用による発育異常、生まれつきなどの原因によるものもあります。原因によって、緑内障はいくつかの種類に分けられます。
・原発緑内障
ほとんどの場合原因がわかっておらず、このうち眼圧が正常範囲内のものを「正常眼圧緑内障」といいます。
・続発緑内障
他の病気や外傷によるもの、薬の副作用が原因
・発達緑内障(小児緑内障)
発育異常や生まれつきの病気などが原因
※眼圧は眼球を丸く保つようにかかっている圧力です。大気圧と眼球内の圧力の差で計測され、正常眼圧は10~21mmHgとされています。
- 緑内障患者の眼に充血する症状が見られたら、どんな病気の可能性が考えられますか?
- 緑内障用の点眼薬で充血の副作用が出るものもありますが、充血の他に強い眼の痛み、目のかすみなどの症状もある場合「急性緑内障発作」の可能性が考えられます。速やかに病院を受診しましょう。
- 緑内障患者の眼が充血する理由を教えてください。
- 緑内障は徐々に眼圧が上がっていきますが、急激な眼圧上昇があった場合に眼が充血します。この場合「急性緑内障発作」の可能性が考えられます。
急性緑内障発作について
急性緑内障発作は治療開始が遅れると数日で失明に至ります。事前に症状が出る前兆はあるのか、一般的な緑内障との違いは何か、また原因はどういったことが考えられるのかについて説明します。
- 急性緑内障発作とはどのような病気ですか?
- 急性緑内障発作とは急激に眼圧が上がってしまう症状です。虹彩と角膜の間の隅角が狭く(閉塞隅角)、房水(眼内の水)の排出ができなくなり眼圧が上昇することによって、急性緑内障発作を起こします。
正常眼圧は10〜21mmHgとされていますが、急性緑内障発作が起きた場合には眼圧は40~80mmHgと、正常眼圧の数倍も高くなります。急激な眼圧上昇によって、症状が現れてから数日で失明してしまう恐れがあるため、早急に治療を開始する必要があります。
- 急性緑内障発作になる前兆はありますか?
- 多くの場合が急性緑内障発作は隅角の狭い患者に起こりますが、普段は基本的に異常はなく、医師からの説明もされていないこともあります。前兆としては眼の痛みや頭痛、吐き気や嘔吐、目のかすみなどの症状が現れます。頭痛や吐き気などの初期症状は、脳疾患など他の病気と間違えられることもあるので、治療開始が遅れることがあり注意が必要です。これらの症状が現れた場合は眼が充血していないか鏡で確認して、眼の充血が見られる場合は眼科を受診しましょう。
- 急性緑内障発作の症状について教えてください。
- 急性緑内障発作の症状には以下のようなものがあります。
- 急激な眼の痛み
- 電灯の周りに虹のような光が見える
- 瞳孔(黒目の中心部分)が大きくなる
- 眼の充血、かすみ
- 頭痛、吐き気、嘔吐
これらの症状が現れた際には急性緑内障発作の可能性があります。
- 急性緑内障発作と一般的な緑内障との違いは何ですか?
- 一般的な緑内障の場合、眼圧は徐々に高くなっていき病気の進行もゆっくりと進むのに対し、急性緑内障発作は急激に眼圧が上がってしまいます。眼圧の上昇によって傷ついた視神経は元に戻すことができません。特に閉塞隅角によって起こる急性緑内障発作は、症状が現れてから数日で失明してしまう恐れがあるため、早急に治療を開始する必要があります。
- 急性緑内障発作の原因は何ですか?
- 隅角(虹彩と角膜の間の房水の出口)が狭く、眼圧が上昇することで急性緑内障発作を起こしやすくなることがわかっています。その原因としては以下のことが考えられます。
・隅角が先天的に狭い
このような方は、先天的に小眼球(遠視が強い)の方が多いです。・白内障により水晶体が分厚くなり、瞳孔ブロック(瞳孔を通る房水の水路が遮断され眼圧が上がる)が起こる
・「抗コリン作用」を持つ薬の服用
※一般に市販されている風邪薬(抗ヒスタミン薬・睡眠薬など)、さらには手術や胃カメラ検査時の麻酔薬などの服用が該当・疾患・薬物使用による散瞳(瞳孔が過度に開く)
これらが原因となって急性緑内障発作を起こすと考えられます。
急性緑内障発作の治療法について
急性緑内障発作は一般的な緑内障とは違い、急激に症状が進行する病気です。そのため早期治療が回復の鍵となります。急性緑内障発作の症状が現れた際の応急処置や治療方法について説明します。
- 急性緑内障発作の症状が現れた際の応急処置について教えてください。
- 応急処置としては急激に上がった眼圧を早急に下げることが必要です。
- ピロカルピン点眼の頻回点眼
- マンニトールなどの高浸透圧薬の点滴
これらの薬の投与で、眼圧を下げて痛みを緩和させます。
- 急性緑内障発作の治療方法を教えてください。
- 急性緑内障発作の治療方法としては上記の点眼・点滴治療の他にレーザー治療や白内障手術があります。
・レーザー治療
虹彩にレーザーで小さな穴を開け、眼圧上昇の原因である房水の流れを改善させます。・白内障手術
水晶体を1/3の厚みの人工レンズに入れ替える白内障手術によって、閉塞隅角と呼ばれる状態を改善することができます。房水の流れが悪くなっている状態が改善され、眼圧を下げることができます。
編集部まとめ
緑内障は眼圧の上昇により視野が徐々に狭くなっていく病気で、原因がわかっていないことがほとんどです。一般的な緑内障は症状の進行がゆっくりで病気の発見が遅れがちになります。また、急激な眼圧上昇を起こす急性緑内障発作という症状になると、失明に至るケースも少なくない病気だということがわかりました。それぞれの症状や考えられる原因、特に急性緑内障発作の前兆や応急処置などについてもまとめましたので、もし前兆症状が現れたときには目の充血を確認して早急に眼科を受診しましょう。
参考文献