「白内障に効く目薬はあるの?」「悪化したら手術は必要?」こんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか? 本記事では白内障の目薬について以下の点を中心にご紹介します。
- 白内障の症状
- 白内障の原因
- 白内障に効果的とされる目薬と外科治療
白内障の目薬について知るためにぜひ最後までお読みください。
白内障に目薬は効く?
白内障の視力低下を回復させる薬は存在しませんが、進行を遅らせる効果が期待される目薬があります。ピレノキシンやグルタチオンがその代表で、その効果も年齢や白内障のタイプにより異なります。
白内障の症状
白内障の症状にはどんなものがあるのでしょうか? 白内障の代表的な症状を紹介します。
目がかすむ
白内障の典型的な症状として、目の中の水晶体が濁ってしまうことによる視界のかすみがあります。この濁りにより、光が適切に通過しづらくなり、物がぼやけて見えることが多くなります。それは、曇ったレンズで写真を撮るとどうしても写真がシャープさを欠き、ぼやけてしまうのと似ています。同様に、曇ったガラス越しに物を観察するような感覚です。
視力が低下
多くの白内障の場合、水晶体の外側から中央へと濁りが進んでいきます。この濁りが中心に達すると視力の低下を実感することが増えますが、初期段階ではそうした変化を感じることは少ないです。
後嚢下白内障の場合、早期から濁りが中心部に現れるため、視力が落ちることを早く感じます。一方、核性白内障の場合、水晶体は黄色くなるものの、その透明性は維持されることが多く、症状が進行しなければ視力の低下は少ないこともあります。
白内障の進行と視力の低下が直接的に関連するわけではなく、実際の症状は個人の生活様式や活動度によって異なります。
光がまぶしい
水晶体が濁ると、光は網膜に直接届くことが難しくなり、散乱が起こります。これが原因で、人々は光を眩しく感じることがあります。
特に夜の街灯や信号の光は、感じる眩しさが増します。皮質白内障や後嚢下白内障の進行によって水晶体が白く濁ると、光の散乱が増大し、特に夜間運転時に対向車のヘッドライトが非常にまぶしいと感じることが多くなります。
目が疲れやすい
私たちは物を視る際、水晶体の形状を調整して焦点を合わせます。 この形状調整のためには、水晶体を取り巻く筋肉の活動が不可欠です。白内障で水晶体が濁ると、焦点を合わせるのが難しくなります。それにも関わらず、目は焦点を合わせるために筋肉を使い続けます。この結果、白内障を持つ人は目が疲れることが増えます。
さらに、物がはっきり見えない、眩しさ、視界がぼやけるといった白内障のさまざまな症状は、目に大きな負担をもたらします。これらはすべて、目の疲労を引き起こす要因となります。
白内障になる原因とは?
白内障を引き起こす原因はさまざまです。 ここでは白内障になる原因を見ていきましょう。
加齢
水晶体の濁りは「加齢」と密接に関連しています。この加齢による水晶体の変化は「加齢性白内障」と呼ばれ、老化とともに目に老廃物が蓄積し、水晶体が酸化・糖化していくことが主な原因とされています。実際に、白内障の発症原因の約90%が加齢と指摘されています。特に40代からは早い方で白内障の自覚症状が出始め、80歳を超えると、ほとんどの方が何らかの形で白内障の症状を経験します。
しかしながら、高齢者の中には自覚症状を感じにくい方もおり、そのために適切な治療が遅れるケースもあります。
赤外線・紫外線
日常生活において、私たちの目は様々な種類の光に晒されています。その中で、特に白内障のリスクとして注目されるのが赤外線と紫外線です。ガラス職人や溶鉱炉作業者のように、長時間にわたり強い赤外線にさらされる環境にいる人々は、白内障になりやすいことも知られています。
一方、紫外線は熱帯や亜熱帯地域での白内障の有病率が高いことと関連があるとされています。紫外線は、水晶体のたんぱく質にダメージを与え、白内障の発症や進行のリスクを高める可能性があります。特に、屋外活動時間が多い人や、熱帯地域に住む人は、紫外線対策として、紫外線カット機能を備えたコンタクトレンズやサングラスの使用が推奨されています。
ステロイド薬
ステロイド薬の使用は、多岐にわたる疾患の治療に効果的とされますが、白内障のリスクも伴います。特に、ステロイドを長期間または大量に内服、吸入、または点眼すると白内障の発症リスクが高まることが知られています。このステロイドに関連する白内障は、「ステロイド白内障」と呼ばれ、水晶体後嚢下に皿状の混濁が生じる特徴があります。その進行は加齢による白内障よりも迅速で、数ヶ月から1年程度で視力低下が顕著になることも報告されています。
具体的な発症機序は完全には解明されていませんが、ステロイドが炎症を鎮めるとともに、免疫を抑制する作用により生体に負荷をかけることが影響しているとされます。ただし、すべてのステロイド使用者が白内障を発症するわけではなく、早期に発見された場合、治療によって視界を回復することも可能です。ステロイド薬の使用者は定期的な眼科検診を受けることが推奨されます。
遺伝
白内障が遺伝するかどうかははっきりとわかっていませんが、白内障になりやすい体質が遺伝する可能性は考えられます。
生まれながらにして白内障の症状を持つ「先天性白内障」は、1万人に約3人の割合で発症し、その要因としては、胎内での感染や親からの遺伝が考えられます。先天性白内障の遺伝的背景としては、常染色体優性遺伝や染色体の突然変異が関与します。常染色体優性遺伝の場合、白内障の遺伝子を持つ親から子へその遺伝子が受け継がれることがあります。染色体の突然変異の場合は、正常でない遺伝子が次の世代に伝わり、白内障を引き起こす可能性があります。
一方で、胎内感染が原因で発症する先天性白内障は、遺伝子の問題ではなく、子孫に遺伝する心配はないとされています。
喫煙
日常的にタバコを吸う習慣がある人、特に1日20本以上吸う人は、白内障のリスクが非喫煙者に比べて2〜3倍高まるとされています。その理由として、タバコの煙が目の水晶体を濁らせること、さらには毛細血管の血流を悪化させて視力低下や眼圧上昇のリスクを増大させる点が挙げられます。
また、喫煙により、視力維持に欠かせないビタミンCやビタミンB1、B2が不足することも発症の要因となります。更に注目すべきは、これらのリスクは喫煙者だけでなく、受動喫煙を受ける人々にも影響すると言われています。具体的には、主流煙よりも副流煙の方が影響が大きいとされています。
アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、若年性白内障の主な原因の一つとされています。特に、アトピー性皮膚炎の患者さんは、白内障や網膜剥離のリスクが高まるとされています。
主な原因としては、アトピー性皮膚炎や、それに伴う強いかゆみを和らげるための目の摩擦などが挙げられます。
しかし、アトピー性皮膚炎と白内障が関連しているのか解明されていません。そのため、アトピー性皮膚炎の患者さんは、視力の変化に注意し、早期発見・治療のために定期的な眼科検査が推奨されています。
外傷
白内障を引き起こす原因の一つとして、目への外傷も挙げられており、この外傷には、鈍的外傷と穿孔性外傷の二種類があります。鈍的外傷は、野球のボールやテニスボールが目に強く当たるなど、外からの直接的な衝撃によって引き起こされ、衝撃により虹彩の部分が水晶体に強く当たって、水晶体が混濁します。
一方、穿孔性外傷は、刃物や鉄片などの異物が角膜を突き破り水晶体に直接ダメージを与えることで起こります。また、前述したアトピー性皮膚炎などで目を頻繁に擦る行為も、慢性的な外傷として水晶体混濁のリスクを高めることが指摘されています。
このように、目への外傷は白内障の原因となり得るため、目に衝撃を受けた際は、症状が見られなくても眼科での検査が推奨されます。
白内障の目薬の種類
白内障の進行を遅らせる目薬にはどんなものがあるのでしょうか? 白内障の進行を遅らせる効果が期待される2つの目薬を紹介します。
ピレノキシン
白内障の発症を遅らせるための点眼薬として、ピレノキシン製剤があります。 ピレノキシンは、白内障の主な原因となるキノイド物質の成長を抑制し、水晶体の混濁化を防ぐ役割を果たします。特に早期の白内障での使用が推奨され、多くの患者さんに処方されています。
しかし、この点眼薬には副作用もあります。眼瞼炎や接触皮膚炎、結膜炎、刺激感、搔痒感などが報告されており、これらの症状が現れた場合は使用を中止し、医師の診察を受けることが必要です。
また、ソフトコンタクトレンズ装用者は注意が必要で、ピレノキシン含有の点眼薬使用時にはレンズを外してから点眼し、その後少なくとも5〜10分間はレンズの再装用を避けることが推奨されています。通常の点眼回数は、1回1〜2滴を1日3〜5回となっています。
グルタチオン
白内障が進行すると水晶体の中のグルタチオンという抗酸化物質が減少します。ここで注目されるのがグルタチオン製剤です。グルタチオン製剤は、白内障の進行と共に減少するグルタチオンを補給するためのもので、水晶体の透明性を保つ働きがあります。
主成分としてグルタチオンを含み、不溶性タンパク質の増加を抑制することで、水晶体の透明性を維持し、白内障の発症や進行を遅らせる効果が期待されます。さらに、角膜の傷の治癒も助ける作用があるとされます。
使用方法としては、溶解液5mLに対してグルタチオン100mgを溶解し、1回に1〜2滴を1日3〜5回点眼します。長期使用しても副作用はほとんど報告されていませんが、点眼後に充血やかゆみが増した場合は、医師の受診が必要です。
白内障の点眼治療について
白内障の点眼治療はあくまでも進行を遅らせる目的で行われます。 白内障が進行すると手術が必要な場合もでてきます。 最後に、点眼治療の効果と手術について解説します。
症状の悪化を防ぐ
これまで解説してきたように白内障の悪化を防ぐためには点眼薬が効果的とされています。特に、ピレノキシン点眼液は、初期の皮質白内障に有効とされています。
研究によれば、59歳以下で混濁面積が20%以下の場合、この点眼薬により白内障の進行が遅らせられることが示されています。しかしながら、60歳以上や混濁面積が20%以上の方、また核白内障や後嚢下白内障の患者さんには効果が認められないこともあります。
点眼治療の主な目的は、白内障の進行を遅らせること。しかし、全ての患者さんに効果が期待できるわけではなく、病状の進行によっては手術が必要となる場合もあります。
進行すると外科手術が必要になる
白内障は進行すると手術が必要になることがあります。 手術の方法としては、混濁した水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズを挿入するものが一般的です。この手術は、局所麻酔のもと行われ、混濁した水晶体の中身を超音波を使って吸引し、新しい眼内レンズを挿入します。
しかし、白内障の状態や患者さんの眼の状態によっては、他の手術方法を選択することもあります。手術後は視力の回復が期待されますが、合併症を発生する可能性もありますので、十分な相談と情報収集が必要です。特に進行した白内障では手術の難易度が上がり、合併症のリスクも増えるため、早期の診断と適切な治療が求められます。
まとめ
ここまで白内障に効果的とされる目薬について解説してきました。 内容をまとめると以下の通りです。
- 白内障になると水晶体が濁ることにより目がかすむ、視力の低下、光がまぶしいなどの症状が出る
- 白内障の原因は、加齢、赤外線・紫外線、喫煙、ステロイド薬などが挙げられる
- 白内障の進行抑制に効果的とされる目薬はピレノキシンとグルタチオン。症状が進行すると外科手術が必要
白内障の方は、眼科を受診して適切な目薬を使用し、白内障の進行を抑えましょう。本記事の情報が皆さんのお役に立てば幸いです。