目の病気にはさまざまなものがありますが、そのなかでも白内障は圧倒的な患者数となっています。
しかし、だからといって罹患してしまうのは仕方がないと思う人は少ないでしょう。可能なら健康な目を維持したいと思うのは当然といえます。
それでは白内障にならないようにするには、どうすれば良いのでしょう。 本記事では白内障について解説します。症状・原因はもちろん、治療法・予防法などについても紹介するので、参考にしてみてください。
白内障の初期症状は?
白内障は多くの人が罹患する病気ですが、初期症状はほとんどありません。
人によってはわずかな目のかすみを感じるかもしれませんが、その場合は「少し見えにくいかも」程度でしょう。
むしろ自覚症状がある場合は、白内障が進行したサインと考えたほうが良いといえます。
それほど初期症状がみられない病気なので、定期的な眼科での検診を受けてください。
白内障の症状
白内障の主な症状は以下の6つです。
- 目がかすむ
- 視力が低下する
- 光をまぶしく感じる
- 眼鏡の度が合わなくなる
- ものが二重に見える
- 目が疲れやすい
上記であげたほとんどの症状は、日常生活のなかで感じるものでしょう。そのため、白内障に罹患していると自覚する人は少ないかもしれません。
しかしこれらの症状がみられた場合は進行しているサインでもあるため、注意が必要です。
それぞれの症状について解説するので、参考にしてください。
目がかすむ
目のかすみを医学的な専門用語で「霧視(むし)」といいます。言葉のなかに「霧(きり)」が入っていることから想像した人もいるかもしれません。
文字から判断できる人もいるかもしれませんが、全体的に霧がかかったように見える症状のことを指します。
外で霧が発生すると目の前が真っ白になり、視界が開けません。目のかすみはこのような状態になるため、晴れているときでも見えにくいと感じます。
視力が低下する
視力が低下するといった症状は、本当に低下しているとは限りません。
前述した目のかすみや後述のまぶしく感じるケースでも視界が悪くなるため、視力が低下したと感じることがあるからです。
ただし「目は良かったのに、急に視力が悪くなったように感じる」と思った場合は、白内障の可能性も否定できません。速やかに病院で診察を受けましょう。
光をまぶしく感じる
光がまぶしく感じることを医学用語では「羞明(しゅうめい)」といいます。
「前よりもまぶしく感じる」または「まぶしすぎて目を開けていられない」などの自覚症状がある場合は、白内障かもしれません。
それ以外の可能性として角膜炎・結膜炎などもあげられますが、いずれにせよ病院での治療が必要です。
一時的なものではなく、継続して光をまぶしく感じるようになった場合は病院で診察を受けてください。
眼鏡の度が合わなくなる
眼鏡の度が合わなくなる場合も、白内障に罹患している可能性があります。
度が合わなくなる症状は、何も遠くが見えにくくなったケースばかりとは限りません。老眼だったのに急に近くが見えやすくなることもあります。
白内障の疑いがある場合の眼鏡の度が合わなくなる症状は、視力の低下だけとは限らないのです。
眼鏡を作りかえてもよく見えないなどの症状がある場合は、病院で診察を受けたほうが良いでしょう。
ものが二重に見える
ものが二重に見える症状のことを医学用語で「複視(ふくし)」といい、以下の2通りがあります。
- 両目で2つ以上に見える場合(両眼性複視)
- 片目だけでも2つ以上に見える場合(単眼性複視)
白内障が疑われるのは、後者の単眼性複視でしょう。突然ものが2つ以上に見えるようになったら、片目でも確かめてみてください。
ただし、両眼性複視・単眼性複視のいずれも白内障・乱視などの目の病気だけではなく、脳梗塞などの重い病気に罹患している可能性もあります。
いずれにせよ、ものが二重に見えた場合は病院で診察を受けてください。
目が疲れやすい
目が疲れやすい症状のことを「眼精疲労」といいます。具体的にはこのような症状があげられるでしょう。
- 目が痛い
- 充血する
- 目が重い
- しょぼしょぼする
これらは長時間の細かい作業のような、環境によって引き起こされる場合もあります。また、精神的ストレスが原因のケースもあるでしょう。
しかし特に目を酷使したわけでもないのに眼精疲労の自覚症状がある場合は、白内障の可能性があります。
それ以外にもドライアイ・緑内障などに罹患していることも考えられるため、病院で診察を受けたほうが良いでしょう。
白内障の原因は?
白内障の主な原因は加齢です。年齢別の発症率を見てみましょう。
- 80歳代:100%
- 70歳代:90%
- 60歳代:70%
- 50歳代:50%
年齢が上がるごとに発症率が高くなっており、80歳代に至っては発症率100%です。それではなぜ加齢とともに白内障の発症率は高くなるのでしょう。
人間の目の前方は角膜で覆われており、その内側にあるのが水晶体です。水晶体はものを正確にとらえるレンズの役目を担っています。
水晶体そのものは薄い被膜で包まれているのですが、その水晶体の内側に古い組織が溜まってしまうのです。
古い組織の量が増えれば増えるほど水晶体は透明度を失い、白く濁っていきます。これが白内障です。
水晶体は65%が水分でできていますが、それ以外に可溶性・不溶性のタンパク質などで構成されています。
可溶性タンパク質は一定の時間が経つと不溶性に変性してしまうのですが、水晶体にはこのタンパク質を代謝する機能がありません。
不溶性タンパク質はそのままの状態で溜まり続け、白内障を引き起こしてしまうのです。
なお、白内障には先天性・後天性の2パターンがあります。先天性の代表的なものとしてダウン症・先天風疹症候群があげられるでしょう。
先天風疹症候群とは、妊娠初期に母体が風疹に感染してしまうことで引き起こされる病気です。
女性が妊娠初期に風疹の罹患に気をつけなければならないのは、このあたりも関係しています。
一方の後天性の代表的なものとしてあげられるのが、加齢です。それ以外にも外傷性・放射線性・糖尿病・ステロイドなどの薬物性があります。
白内障の治療方法
白内障が疑わしい場合は、視力検査・顕微鏡による診察が重要です。そのうえで白内障と診断されれば本格的な治療が開始されます。
その治療方法は、主に以下の2つです。
- 手術治療:水晶体再建術(レーザーを用いる場合や、眼内レンズに多焦点眼内レンズを用いる場合があります)
- 目薬による治療
それぞれの治療方法について解説するので、参考にしてください。
手術治療:水晶体再建術
水晶体再建術ではレーザーを用いる場合や、眼内レンズに多焦点眼内レンズを用いる場合があります。
レーザー治療には大きくわけて以下の2種類があります。
- フェムトセカンドレーザー白内障手術
- YAG(ヤグ)レーザー治療
フェムトセカンドレーザー白内障手術は白内障の原因となっている濁った水晶体をレーザーで粉砕し、超音波乳化吸引術で粉砕した水晶体を取り除く方法です。
先に濁った部分の水晶体をレーザーで粉砕してから取り除くため、超音波量を必要最小限に抑えられます。
この方法なら、眼内の組織に対するダメージも軽減されるでしょう。
一方のYAG(ヤグ)レーザー治療は、後発白内障に適用される治療方法です。
白内障手術を受けたあと、早くて数か月遅くて数年後に再び白内障の症状がみられることがあります。これが後発性白内障です。
この場合、再手術をするのではなくYAG(ヤグ)レーザーを当てて混濁している部分を治療します。
あくまで一度白内障手術を受けたあとにみられる水晶体白濁のための治療であり、初めての白内障治療では用いられません。
多焦点眼内レンズとは、遠く・近くの両方が見える眼内レンズのことです。レンズには6つの種類があります。
- 屈折型多焦点眼内レンズ
- 回折型多焦点眼内レンズ
- 2焦点眼内レンズ
- 3焦点眼内レンズ・連続焦点眼内レンズ
- 焦点深度拡張型眼内レンズ
- 分節型眼内レンズ
これらは日本で認可されている眼内レンズで、80〜90%ほどの割合で眼鏡なしでの生活が可能になります。
6種類もあるのは、白内障といってもその症状は人によって異なるからです。
眼鏡の度が合わなくなる症状がみられる場合には、視力低下などの進行度によって2焦点・3焦点・焦点深度拡張型などの選択肢があります。
また、屈折型の場合は瞳孔が小さな人にはあまり向かないでしょう。
多焦点眼内レンズは「ものを見えやすくする」という観点から、視力矯正を目的とした治療と考える人もいるかもしれません。
しかし白内障を発症していない人がこの治療を受けた場合、思うような結果が得られないケースがあります。
多焦点眼内レンズは、あくまで白内障の治療の一環です。視力矯正のための治療ではないので注意してください。
なお、白内障に罹患している患者さんでも以下に当てはまる場合は向いていないとされています。
- 精密な視力が必要な職業に従事している人
- 神経質な方
- 白内障以外の視力機能障害がある人
- 高齢による網膜・視神経の機能低下
- 職業ドライバー
多焦点眼内レンズの治療を受けても、白内障に罹患する前の視力が戻るとは限りません。多くの場合、罹患前のような鮮明には見えないでしょう。
なお、治療後に夜間時のみ光が広がって見えるグレア・ハローが出る可能性があります。このことから職業ドライバーも注意が必要です。
目薬による治療
白内障の治療として目薬もありますが、これは完治が目的ではありません。一度濁ってしまった水晶体を元の透明度の高い状態に戻せないからです。
それでは目薬による治療はなぜ行われるのか、と思う人もいるかもしれません。それは術後ケアのためです。
白内障の手術を行った際のケアとして目薬による治療が行われます。なお、処方される目薬は主に以下の2通りです。
- ピレノキシン(タンパク質の蓄積を軽減)
- グルタチオン(不溶性たんぱく質増加の抑制・水晶体の透明性保持)
医師の指示に従って、正しく点眼しましょう。
白内障の手術方法について
白内障の手術方法は、主に以下の3つです。
- 嚢内(のうない)摘出
- 嚢外(のうがい)摘出
- 超音波乳化吸引術
嚢内摘出は、水晶体全体を摘出する方法です。水晶体の支えが弱くなっている特殊な場合を除いて行われることはありません。
一方の嚢外摘出は白内障の原因部分だけを取り除く方法ですが、傷口が大きく時間がかかります。白内障が非常に進んでいるときに稀に行われます。
超音波乳化吸引術は白内障で濁った部分を超音波で吸引する方法で、現在の主流となっています。
上記の手術で終わりではありません。水晶体を取り除いたあとは、その部分に人工レンズを挿入する手術が必要です。
眼内レンズといっても眼鏡に使用されるようなものではなく、コンタクトレンズのような小さなものを使用します。
眼内レンズはさまざまなものが開発されており、患者さんの症状・年齢・状態・希望などに応じて使用されるのが一般的です。
なお、手術を行う前には球後麻酔・点眼麻酔などが行われます。どちらも痛みはなく麻酔は眼球のみに効果があるため、意識もある状態です。
白内障の予防法は?
白内障の主な原因は加齢によるもののため、完全な予防は難しいでしょう。しかし、罹患するタイミングを遅らせることは可能です。
主な予防法として以下の4つがあげられます。
- 紫外線から目元を守る
- 禁煙する
- 糖尿病の罹患に注意する
- 適度な運動を心掛ける
それぞれの予防法について解説するので、参考にしてください。
紫外線から目元を守る
日差しの強い真夏には紫外線予防として、日焼け止めクリームを塗ったり、日傘・帽子を使用したりします。
これは強い紫外線を浴びすぎると、人間の皮膚に悪影響を及ぼすからです。
そのような紫外線が影響を及ぼすのは皮膚だけではありません。実は目にも悪い影響をもたらします。
白内障の場合は、発症・進行が早まってしまうので注意が必要です。またほかの目の病気の原因にもなり、危険な存在といえます。
屋外での活動時間が長い場合は、紫外線を除去するサングラスなどを身につけるようにしましょう。
禁煙する
「百害あって一利なし」などといわれることの多いタバコですが、実は目の病気にも悪影響を及ぼします。
WHOは、喫煙者は非喫煙者に比べて加齢性黄斑変性症を発症するタイミングが最大5.5年早まると発表しました。
加齢性黄斑変性症とは、網膜が出血・むくみを発症して視力が低下する病気です。この病気に罹患すると、白内障の手術が受けられません。
複数の目の疾患に罹患している場合は、手術によって失明するリスクが高まるからです。
加齢性黄斑変性症は、それだけで失明する危険性を秘めた病気です。白内障の手術をすればそのリスクはより高まるため、手術を拒否されることがあります。
白内障は将来、誰もがかかる目の病気です。罹患した際に手術が受けられなければ、日常生活に支障をきたすかもしれません。
今後のことを考えて禁煙したほうが良いでしょう。
糖尿病の罹患に注意する
糖尿病に罹患すると、加齢の場合よりも早く白内障の症状があらわれます。
加齢による白内障の発症率は60歳代から多くなり、80歳代でほぼ100%です。しかし糖尿病に罹患すると、早ければ30歳で手術を余儀なくされる人もいます。
糖尿病は、目の病気の合併症も多い病気です。白内障に限らず、さまざまな病気を引き起こす原因にもなるので注意しましょう。
適度な運動を心がける
意外に思う人もいるかもしれませんが、適度な運動も白内障の予防に役立ちます。その理由は、糖尿病と関係しているからです。
糖尿病に罹患すると、白内障の発症時期が早まることは前述しました。その原因となる糖尿病の治療の一環として運動療法があります。
日常生活のなかで運動する機会を習慣づけることで血糖コントロールが改善され、糖尿病の治療に効果があるのです。
糖尿病の治療が進めば、合併症である白内障に罹患するリスクも軽減されます。本気で予防したいのなら、適度な運動を習慣づけましょう。
まとめ
白内障について解説しました。
白内障は初期症状がほとんどありません。自覚したときにはある程度進んでいると思ったほうが良いでしょう。
また、原因の多くが加齢であり80歳代では発症率100%となっているため、避けては通れない病気でもあります。
しかし、発症・進行を遅らせることは可能です。日常生活を見直し、健康な目の状態を保ってください。
参考文献