白内障手術後に「手術が失敗したかもしれない」と感じることがあるかもしれません。手術後の回復過程で気になる症状が現れることもありますが、それが本当に手術の失敗になるのか、あるいは回復過程の一部なのかは、慎重に見極める必要があります。
本記事では白内障手術が失敗したと感じる場合の症状について以下の点を中心にご紹介します。
- 白内障手術とは
- 白内障手術が失敗したと感じる場合の症状
- 白内障手術のリスクをできる限り防ぐために必要なこと
白内障手術後の症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
白内障手術とは
白内障手術とは、目の水晶体が濁ることで視力が低下する白内障を治療するための手術です。
白内障は主に加齢が原因で発症し、成人によく見られますが、糖尿病やアトピー、外傷、ステロイド薬の使用なども原因となることがあります。
白内障が進行すると視力が著しく低下し、最終的に視界がぼやけて見えづらくなることがあります。
治療には手術が必要で、手術では濁った水晶体を取り除き、その代わりに”眼内レンズ”という人工の水晶体を挿入します。
手術は局所麻酔で行われ、目薬による麻酔のため、ほとんど痛みを感じることはないとされています。
手術は通常、片目につき5〜10分程で終了し、日帰りで受けられます。
白内障手術に失敗はある?
白内障手術は、基本的に失敗するリスクは少ないとされています。
手術自体は、目の水晶体を取り除き人工レンズを挿入するシンプルな方法です。
”手術の失敗”といわれるのは、実際には手術が適切に行われた場合でも、術後に挿入された眼内レンズが患者さんの期待に合わなかったり、見え方に違和感が残ったりする場合が多いようです。
これらの問題は、手術そのものの失敗というより、医師と患者さんとの間でのコミュニケーション不足やレンズ選定の不一致から生じることが多いため、手術を受ける際には自分に合った医療機関選びがとても重要です。
手術を受ける前に、医師がどれだけ患者さんの話を聞き、適切なレンズを提案してくれるか、また患者さんのニーズにしっかり寄り添ってくれるかを確認しましょう。
白内障手術は、近年進歩を続けており、技術の向上により失敗のリスクはますます低くなっています。
手術自体も通常5〜10分程度で終了し、短時間で行えることがほとんどです。したがって”白内障手術はほぼ失敗がない手術”といっても過言ではないでしょう。
とはいえ、手術は外科的な処置であるため、ゼロリスクというわけではありません。
安心して治療を受けるためには、手術に伴うリスクについて理解し、しっかり情報を知ることが大切です。
白内障手術が失敗したと感じる場合に考えられる症状
白内障手術が失敗したと感じる場合に考えられる症状は以下のとおりです。
眩しさを感じる
白内障手術後、目の水晶体が透明になることで、最初は強いまぶしさを感じることがあります。
手術直後は、これまで濁っていた水晶体がクリアな人工レンズに変わるため、明るさに対して敏感になり、いつもより強い光を感じることがあります。
しかし、このまぶしさは時間とともに徐々に落ち着いていきます。
もし、まぶしさが気になる場合は、サングラスを使用することで軽減できます。
それでもまだ強いまぶしさを感じる場合は、遮光眼鏡と呼ばれる特殊なメガネがおすすめです。
加齢によって濁った水晶体は、黄白色に変色していることがあるため、手術後はその代わりに明るくて透明なレンズが入ることで、視界が明るくなります。この変化により、最初は少し青白く色が変わったように感じることがありますが、時間が経つにつれて慣れていくとされています。
ゴロゴロする
手術後は、目の状態が安定するまで異物感を感じることがあります。時間の経過とともに徐々に改善が期待できますが、もともとドライアイがある方やアレルギー体質の方には、点眼薬が追加で処方されることがあります。
飛蚊症
白内障手術後に目の前に小さな黒い点や線がちらつく症状が見られることがあります。
これは”飛蚊症”と呼ばれ、目の中にある硝子体という部分にある微細な不透明物質が影となって見えることによって起こります。
手術後に視界が明るくなることで、浮遊物が目立つことがありますが、時間の経過とともに症状はよくなるといわれています。
ただし、飛蚊症が急に強くなる場合や症状に変化があった場合は、別の目の問題が原因である可能性もあるため、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。
網膜剥離などの病気の兆候として現れることもあるため、適切な検査を受けましょう。
見え方に違和感がある
白内障手術後に「見え方に違和感がある」と感じることがありますが、これは手術の失敗ではなく、手術による視覚の変化のことが多いとされています。手術で眼内レンズを挿入したことで視界に変化が現れたり、元々の視力に合わせた度数が変わることが影響している場合があります。
このような違和感は、時間が経過することで慣れていくことが多いようです。
片方の目のみ手術を受けた場合、乱視が残っていると左右で見え方に違いを感じることがありますが、メガネを使用することでその違和感は改善されることがほとんどのようです。
ただし、まれに眼内レンズの度数が目に合っていないことが原因となっている場合もあります。
白内障手術のリスクと合併症
白内障手術のリスクと合併症には以下のようなことがあります。
手術中のリスクと合併症
ここでは、手術中の主なリスクと合併症を解説します。
駆逐性出血(くちくせいしゅっけつ)
駆逐性出血は、白内障手術中に眼圧が急激に下がることによって、目の奥である脈絡膜から出血が生じる状態を指します。
以前は、超音波白内障手術が導入される前に、この出血が原因で失明するケースもあったようです。
しかし、現在では超音波技術の導入により、駆逐性出血が起こる頻度は低いとされ、失明に至る事例は少なくなっています。
万が一、駆逐性出血が発生した場合、手術は中断され、後日再開されることになります。
ただし、この症例は稀とされ、ほとんどの患者さんにとって心配する必要はないようです。
チン小帯断裂(ちんしょうたいだんれつ)
チン小帯は、水晶体を支える重要な役割を果たしている部分で、手術中に誤って切れてしまうことがあります。
白内障手術では、濁った水晶体を超音波で吸引して取り除きますが、その過程でチン小帯に損傷を与えることがあるため、断裂が発生する場合があります。
チン小帯が断裂すると、水晶体を支える力が弱くなり、眼内レンズを適切に固定できなくなることがあります。この場合、追加の処置が必要となり、手術が一時的に中断されることもあります。
虹彩緊張低下症候群(IFIS)
術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)は、白内障手術中に虹彩が不安定になり、正しく機能しなくなる状態を指します。
手術は目を収縮させる薬を使って行いますが、IFISではこの薬に対して虹彩が予期しない反応を示し、虹彩の収縮が不安定になることがあります。
IFISは、前立腺肥大の治療薬であるαブロッカーを服用している患者さんに見られることが多いとされています。
事前におくすり手帳を確認し、患者さんがこの薬を服用していることを把握することで、手術前に予測が可能となり、適切な対策を講じることができるとされています。
手術後のリスクと合併症
ここでは、白内障の手術後に考えられるリスクや合併症を解説します。
眼圧上昇
眼圧上昇は、目の内部で液体が過剰に溜まり、目の圧力が正常範囲を超えて上昇する状態を指します。
眼圧は目の健康に重要な役割を果たしており、通常は一定の範囲に保たれていますが、何らかの原因でこの圧力が上がることがあります。
白内障手術後にも眼圧が一時的に上昇することがありますが、これは手術に伴う自然な反応であることも多いようです。
例えば、手術中に薬剤や器具が目に影響を与えることや、手術後の回復過程で目の内圧が変動することが原因です。
しかし眼圧の上昇が続くと、視神経にダメージを与えるリスクがあり、緑内障を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
状態によって、緑内障治療の点眼薬などを併用して経過をみることも少なくありません。
術後眼内炎
術後眼内炎は、白内障手術などの眼科手術後に発生する可能性がある目の感染症です。
手術後に目の内部に細菌が侵入し、炎症を引き起こす状態で、早期に治療しないと視力に深刻な影響を与えることがあります。
眼内炎は、手術中に細菌が目の中に入ることによって発症するとされていますが、手術後のケアが不十分だった場合や、免疫力が低下している患者さんに特に多く見られます。
症状としては、目の痛み、視力の急激な低下、目の充血、目の腫れ、膿が出るなどが挙げられます。
眼内炎が発生した場合、早急に抗生物質などの治療が必要です。
眼内炎の状態によっては、緊急手術となることも少なくありません。そのため、症状が現れた場合は、速やかに眼科医師に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
また、手術後の感染予防には、手術後の衛生管理を徹底し、処方された点眼薬をきちんと使用することが大切です。
嚢胞様黄斑浮腫(のうほうようおうはんふしゅ)
嚢胞様黄斑浮腫は、黄斑部に液体がたまり、黄斑が膨らむことによって視力が低下する疾患です。
黄斑は網膜の中央部に位置しています。その黄斑部に水分が溜まることにより、視力に影響を及ぼし、視界がぼやけたり歪んだりすることがあります。
嚢胞様黄斑浮腫は、白内障手術後に発生することがあり、手術による炎症反応やその他の目の異常が原因で起こることがあります。
また、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症など、ほかの眼疾患が関連している場合もあります。
症状としては、視力の低下、視界の歪みやぼやけ、色が変わって見えるなどが挙げられます。
嚢胞様黄斑浮腫のリスクを考慮し、予防的な点眼薬が術後点眼の中に含まれていることも多いようです。
白内障手術のリスクをできる限り防ぐために
白内障手術のリスクをできる限り防ぐためには以下のことが大切です。
白内障手術を受ける病院選びのポイント
白内障手術を受ける際、病院やクリニック選びはとても大切です。
手術は医師の技術や使用する機器、術後のケアが大きく影響するため、信頼できる医療機関を選ぶことをおすすめします。
白内障手術を受ける病院を選ぶ際、まずは医師の経験を確認することが大切です。経験豊富な医師は、合併症への適切な対応が期待できます。
また、新しい医療機器が導入されているかどうかもチェックするポイントです。白内障手術では、高精度な機器を使うことでよりよい手術につながるとされています。
クリニックや病院の立地やアクセスも重要な要素ですが、手術を受ける場合は、少し足を延ばしてでも信頼できる施設を選ぶことをおすすめします。
普段の通院では近隣のクリニックでも問題ないかもしれませんが、手術を行う際は、技術力や設備が整った病院を選ぶことが大切です。
また、手術後に発生する可能性のある合併症やトラブルに対して、どれだけ柔軟に対応できるかも選ぶ際の重要な基準です。
術後に起こりえる問題やリスクについても事前に理解し、安心して治療を受けられる病院を選ぶようにしましょう。
術前・術後の指示を守る
白内障手術を受けた後には、いくつかの指示があります。これらは、術後の回復を順調に進めるため、また合併症を防ぐために大切です。
例えば、目薬を指すことや保護メガネを着用すること、シャワーやお風呂に入るタイミングなどが指示されます。
これらの指示は一見面倒に感じることもありますが、手術後の視力や健康を守るためにはとても重要です。
目薬は、術後の感染を防ぐために必要不可欠です。もし忘れてしまうと、細菌感染のリスクも上がり、失明を招くこともあるため、手間に感じても決して怠らずに使用しましょう。
また、保護メガネも目に触れるリスクを減らすための大事なアイテムです。見た目が気になるかもしれませんが、手を清潔に保ち、目を保護するためには必要です。
手術を受ける前後は、医師からの指示をしっかりと理解し実行することを徹底しましょう。
まとめ
ここまで白内障手術が失敗したと感じる場合についてお伝えしてきました。
要点をまとめると以下のとおりです。
- 白内障手術とは目の水晶体が濁ることで視力が低下する白内障を治療するための手術である。白内障は加齢が原因で発症し、成人によく見られるが、糖尿病やアトピー、外傷、ステロイド薬の使用なども原因となる場合がある
- 白内障手術が失敗したと感じる場合に考えられる症状には、白内障手術後に目の水晶体が透明になることで、強いまぶしさを感じる場合があったり、目の状態が安定するまで異物感を感じたりすることなどがある。そして目の前に小さな黒い点や線がちらつく症状が見られることなども挙げられる
- 白内障手術のリスクをできる限り防ぐためには、少し足を延ばしてでも自身が信頼できる施設を選ぶことや新しい医療機器が揃っているかなどを確認することが大切である
白内障手術後に感じる不安や異常な症状は、手術の失敗によるものではなく、回復過程の一部であることもあります。とはいえ、気になる症状が現れた場合は、早めに医師に相談することが重要です。
手術のリスクや合併症について正しい理解を深め、適切な対処を行うことで、視力回復の成功率を高めることができます。何か不安があれば、遠慮せず医師に相談し、安心して回復を目指しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。