突然眼に激痛があり、眼の充血、頭痛や嘔吐、吐き気に襲われたら……。その症状は、急性緑内障発作の可能性があります。急性緑内障発作とは、そのまま放置してしまうと急激に視力が低下し、短期間で失明してしまうこともある恐ろしい疾患なのです。脳の病気と間違い、眼科的な治療が遅れてしまうこともあるため、発作について事前に知っておくことが重要です。この記事では急性緑内障発作の症状や原因、治療法を、詳しくご説明します。
急性緑内障発作とは
- 急性緑内障発作とはどのような病気ですか?
- 一般的な緑内障とは、眼圧の上昇によって視神経が損傷していく疾患です。眼圧の上昇によって起こる視野の欠損、視力の低下は徐々に進行していくため、初期段階では自覚症状がほとんどありません。 そのなかで急性緑内障発作とは、急激に眼圧が上がってしまう疾患です。急性緑内障発作が起きた場合、眼圧は基準値10〜21mmHgに対し40〜80mmHgと数倍高くなります。その結果、眼の痛みや頭痛、吐き気といった症状が現れ、そのまま放置してしまうと短期間で失明する可能性もある、恐ろしい病気なのです。
- 急性緑内障発作の症状について教えてください。
- 突然急激に眼圧が上昇するため、下記のような症状が現れます。
- 頭痛
- 眼の痛み
- 充血
- 嘔吐、吐き気
- 視界がぼやける
突然の頭痛、吐き気の症状により内科を受診し、急性緑内障発作への処置が遅れてしまう場合があります。眼の充血があり、充血している眼がかすんで見えたら、急性緑内障発作の可能性があるのですぐに近くの眼科を受診しましょう。
急性緑内障発作の原因
急性緑内障発作が緊急を要する疾患だということがわかりましたが、発作が起きる原因とはどのようなことが考えられるのでしょうか。詳しくご説明します。
- 急性緑内障発作の原因について教えてください。
- 急性緑内障発作の原因としては、隅角が狭くなったことで、眼圧が上昇しやすくなってしまうことが挙げられます。具体的には、下記のような要因が考えられます。
- もともと隅角が狭い患者さんで、その影響が強くなった
- 白内障により水晶体が分厚くなり、房水がうまく排出できなくなった
- 服用した薬の成分(抗コリン作用)により、隅角が一時的に狭くなった
なお、狭隅角は解剖学的に、もともと遠視が強い方に見られやすいので、遠視が強い方の場合は医師からの指摘を受けていなくても狭隅角である可能性が高いといえます。
- 急性緑内障発作を引き起こす生活習慣とはどんなものですか?
- 急性緑内障発作は、薄暗い場所でうつ伏せする体勢の時にさらに隅角が狭くなるので発作を起こしやすいです。そのような体勢をとるのは避けるようにしましょう。また、緑内障のリスクを高めるような、喫煙や過度の飲酒、長時間のPC、スマホの使用などは控えた方が良いでしょう。適度な運動やバランスの良い食事、適切な睡眠など、健康的な生活習慣を意識しましょう。
急性緑内障発作の治療
急性緑内障発作が起きた場合、どのような治療がおこなわれるのでしょうか。気になる治療方法や、治療後の回復期間について詳しくご説明します
- 急性緑内障発作の治療方法にはどのようなものがありますか?
- 急性緑内障発作の治療には、薬物療法、レーザー治療、白内障手術が用いられます。
・薬物療法
急上昇した眼圧を下げる目的で、点眼薬の点眼や高浸透圧薬の点滴をし、激しい頭痛や眼の痛みがある場合には、鎮痛薬を投与されます。・レーザー治療
レーザー虹彩切開術や周辺虹彩切開術により、房水を排出するための通り道として小さな孔をつくります。眼球内が確認できるのであればレーザー虹彩切開術を、濁りなどがあり確認できないのであれば周辺虹彩切開術で実施します。 発作を起こした眼が片眼のみでも、残りの片眼の発作が起こる可能性が非常に高いため、両眼同時に予防的な治療をします。点眼麻酔をするので、痛みはほとんどありません。・白内障手術
眼圧を下げる目的でおこなわれる白内障手術は、水晶体を人工レンズに入れ替え、その厚みを薄く(約1/3)します。水晶体が薄くなることによって、虹彩前面と角膜裏面に距離ができ、房水の流れが良くなるため、急性緑内障発作の予防が可能です。
- 急性緑内障発作の治療にはどのくらいの期間が必要ですか?
- 急性緑内障発作の治療期間は、症状の程度や状況によって異なります。一刻も早い治療が必要になりますので、頭痛や眼の痛みなどの症状を感じたら、早急に眼科を受診するようにしましょう。
急性緑内障発作の治療の際に白内障手術を行うケース
急性緑内障発作の治療での白内障手術とは、どのようなケースでおこなわれるのでしょうか。また、白内障手術のリスクや回復期間がどのくらいなのかもあわせて詳しくご説明します。 急性緑内障発作が起きた場合、どのような治療がおこなわれるのでしょうか。気になる治療方法や、治療後の回復期間について詳しくご説明します。
- 急性緑内障発作の治療の際に白内障手術を行うケースについて教えてください。
- 急性緑内障発作の予防を目的として、白内障手術をする場合があります。眼圧を下げるために、濁った水晶体を取り去って人工の眼内レンズを入れ、隅角の圧迫を減らし、房水の通りを良くするのです。
- 白内障手術を受けるリスクはありますか?
- どんな手術でもリスクが全くないわけではありませんが、白内障手術は日本国内において年間約140万件おこなわれています。適切におこなえば、合併症が起こりにくい低リスクの手術です。
- 白内障手術後の回復期間はどのくらいですか?
- 白内障手術後、数時間程度で明確な視覚を得る方が多いようです。しかし、回復期間には個人差があり、明確な視覚を得るまでに1~2週間かかる場合もあります。 感染症を防ぐため、手術後1~3か月ほどは点眼薬や通院が必要になる場合がありますが、多くの場合、手術後数日~数週間で日常生活に戻ることが可能です。 仕事復帰については、仕事内容にもよりますので、医師の判断に従いましょう。
急性緑内障発作の予防策とは
急性緑内障発作が恐ろしいものだということがわかっていただけたと思います。では、急性緑内障発作の予防法はあるのでしょうか。
- 急性緑内障発作を予防するためにできることは何ですか?
- 急性緑内障発作は、突然発症することがほとんどです。もともと眼が良く、眼科にかかったことのない方が発症するケースも少なくありません。 早期発見することがもっとも大切です。自覚症状がなくても、40歳以上になったら一度眼科で検査を受けるようにしましょう。
- 急性緑内障発作を予防するための食生活について教えてください。
- 急性緑内障発作の予防は、緑内障の予防にもつながります。眼に良いとされる食品をメニューに加えることや、血流を促す働きのある栄養素を積極的に摂取し、眼の健康を大切にしましょう。 眼に良いとされる食品は
- ビタミンB群(豚肉、しじみなど)
- ビタミンC(いちご、さつまいもなど)
- ビタミンE(玄米、ブロッコリーなど)
- アントシアニン(ブルーベリー、カシスなど)
- ルテイン(ほうれんそう、ケールなど)
です。 そのほかアルコール、カフェイン類を摂取しすぎない、糖分や脂肪分を控えるなど、バランスの良い健康的な食生活を心がけましょう。
編集部まとめ
いかがでしたか。急性緑内障発作の危険性や症状、治療法や予防法について、詳しくご説明しました。急性緑内障発作は、自覚症状がないまま唐突に起こり得る疾患で、できるだけ迅速な治療が求められます。眼の痛みや頭痛をそのまま放置して後悔しないためにも、症状が現れたら一刻も早く眼科を受診し、治療を受けましょう。また、予防のために、生活習慣や食生活を見直し、定期的に眼科で検査を受けることが大切です。
参考文献