視野が徐々に欠けてしまう緑内障は、早期発見・早期治療が非常に重要になります。ただ、どのような検査を受ければ緑内障を見つけることができるのかを理解している方はそれほど多くはないでしょう。そこで本記事では、緑内障の特徴や種類、代表的な症状などを詳しく解説したうえで、緑内障の早期発見に有用な検査方法をご紹介します。本記事を参考に「予防のためにも検査を受けてみよう」「緑内障の危険性が理解できた」と、1人でも多くの方に思っていただけると幸いです。
緑内障とは
そもそも緑内障とはどのような病気か、ご存じでしょうか。何が原因でどのような症状が現れるのか、発症する人にはどのような傾向があるのかを解説していきます。緑内障について、まずは基本的な知識を押さえましょう。
- 緑内障とはどのような病気ですか?
- 緑内障とは、視神経に障害が起きることで視野が欠けたり狭くなったりする病気です。なぜ「緑内障」という病名がついたのかというと、眼の中を循環しながら眼球の前方を満たしている房水という液体がなんらかの原因で詰まったことで眼圧が上昇し、角膜が腫れた結果として瞳が青や緑っぽく見えるからとされています。目自体が緑や青に変色してしまうわけではありません。近年では40歳以上の20人に1人は緑内障に罹患しているといわれており、決して珍しい病気ではないということを覚えておきましょう。
- 緑内障になる原因は何ですか?
- 先ほど少し触れたように、視神経に障害が起きることで発症するのが緑内障です。ではなぜ視神経に傷がつくのかというと、主な原因は眼圧が高すぎる「高眼圧」という状態にあります。視神経は眼球の奥にある網膜という組織一面に張り巡らされていますが、眼球の形をキープしたり目の機能を維持したりするための内側からの圧力が強すぎると、陥凹(かんおう)が起き、視野の欠損につながります。眼圧の正常値は10~21mmHgで、21mmHgを超えてしまっている場合は早めに治療を開始して眼圧を下げる必要があります。
- 緑内障になりやすい人はどんな人ですか?
- 兄弟や両親・祖父母など、血縁者に緑内障患者さんがいる場合は緑内障になりやすいといわれています。また、糖尿病や強度近視の方、ステロイドホルモン剤の内服・吸入の経験がある方、目に外傷を受けたことがある方、60歳以上の方、高血圧や貧血など内科的疾患を持っている方、痩せ型の男性などは注意が必要です。さらに、スマホやパソコンの操作などを長時間行って目を酷使する、うつぶせで寝る、枕が高すぎる、たばこを吸うといった生活習慣も、眼圧を高くしてしまう要因となります。
緑内障の種類
一言で緑内障といっても、その中にはさまざまな種類があります。ここからは、主に3つの緑内障について、その特徴や代表的な症状などを詳しくご紹介します。
- 緑内障の種類にはどのようなものがありますか?
- 緑内障は大きく3つの種類に分類されます。まず1つ目が開放隅角緑内障です。これは、房水の出口である「隅角」の幅が十分広いにもかかわらず、線維柱帯という排水部分が目詰まりを起こしている状態を指します。これによって房水の流れが悪くなり眼圧が上がってしまうのです。開放隅角緑内障は40歳以上の方や近視の方に多く見られます。自覚症状はほとんどなく、重症化して視野が大きく欠けてから気づいたり、眼科の検診でたまたま見つかったりすることが多いです。 開放隅角緑内障は眼圧が高くなることによって視神経に障害が起きるとお伝えしましたが、眼圧が正常値の範囲内でも視神経の陥凹が進んでしまうことがあります。その場合は、正常眼圧緑内障と呼ばれます。これは、脳に向かって伸びている視神経乳頭という組織の弱さが原因とされています。 一方で、もともと隅角が狭くて眼圧が上昇してしまう閉塞隅角緑内障という病気もあります。60歳以上の女性や遠視の方に多く見られます。急激に眼圧が上がって緑内障発作が起きてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
- 開放隅角緑内障の症状について教えてください。
- 初期の段階での症状はほとんどなく、少し進行した中期には眼精疲労やだるさ、肩が凝るといった症状が現れるようになります。そして、さらに進行すると視野の中で見えない部分が生じるようになります。しかし、片方の目に視野欠損が起きてももう片方の目で補うことができてしまうため、周辺視野が失われるまで病気自体に気づきにくいという傾向にあります。
- 正常眼圧緑内障の症状について教えてください。
- 正常眼圧緑内障は、開放隅角緑内障と同じように徐々に進行が進んでいく病気のため、自覚症状はほとんどありません。視野が狭くなったり欠けたりしても、目の前が真っ暗になったりすることはないため放置してしまう方が多いのが現状です。ただ、距離を見誤って階段を踏み外す、文章をまっすぐ書けないといったことから症状に気づくケースもあります。
- 閉塞隅角緑内障の症状について教えてください。
- 閉塞隅角緑内障の方は、隅角と虹彩の癒着が激しくなり房水の流れが完全に止まってしまった場合、緑内障発作が起きることがあります。一般的な緑内障とは異なり、頭痛や目の痛み、視力低下、吐き気といった多くの自覚症状が現れます。一晩で失明してしまうリスクもあるため、違和感があったらすぐに医療機関を受診するようにしましょう。
眼底検査とは
緑内障を発見するために必要な検査がいくつかあります。これからご紹介する検査は、緑内障を早期に発見するだけでなく、緑内障の種類や進行具合、治療効果を判断するにあたって有用です。医療機関を選ぶ際は、これらの検査によって目の状態を詳細に調べられるかどうか、事前に確認しておくことをおすすめします。
- 眼底検査とはどのような検査ですか?
- 眼底検査は、複数の検査の中でも特に重要な検査です。その名の通り目の底、眼球の奥にある網膜や血管、視神経を調べます。また、視神経乳頭に陥凹やそれ以外の異常がないかを確認します。そのほか、眼底出血や血管閉塞といった緑内障以外の病気の有無を調べることも可能です。
- 眼底検査の流れについて教えてください。
- まず、検査をしやすくするために、瞳を大きく開く「散瞳薬」という目薬をさします。そのうえで目に光を当てて、内側を観察するというのが一般的な流れです。医療機関によっては記録のために写真を撮影するところもあります。なお、散瞳薬を使用した場合は物がぼやけて見えたり光がいつも以上にまぶしく感じたりするため、検査後には車や自転車の運転などができません。眼底検査を受ける際は、徒歩もしくは公共交通機関で通院するようにしましょう。
- 眼底検査のほかに、緑内障の診断に必要な検査を教えてください。
- 第一に必要なのが、眼球の硬さを計測して眼圧の高さを判断する「眼圧検査」です。これには、目に機械を直接当てて測定する接触型や空気を送って測定する非接触型などがあります。 また、検査用のコンタクトレンズを挿入して隅角の状態を確認する「隅角検査」や、視神経乳頭・視神経線維層の厚みを計測する「OCT検査」、視野の範囲を確認して緑内障の進行具合を判断する「視野検査」などがあります。なお、視野検査には初期から中期の緑内障に対して行う静的視野検査と、静的視野検査では測定が難しい場合に行う動的視野検査があります。
緑内障の治療方法
最後に、緑内障の方に対して行う治療についてご紹介します。視神経は一度損傷すると元に戻すことはできません。そのため、治療は治すことではなく、進行を抑えることを目的として行われます。
- 緑内障の薬物療法について教えてください。
- 薬物療法では眼圧を下げることを目的として、点眼薬を使用します。眼圧のコントロールがうまくできれば1種類の点眼薬で経過を観察していきます。一方で、緑内障点眼にはたくさんの種類があり、アレルギーを起こしやすい点眼薬もあれば、長期間使っていると耐性が出てしまい効果が落ちることもあるため、点眼薬の種類を変えながら治療を行うこともあります。決められた点眼薬を決められた時間にしっかりとつけることが何より大切です。
- 緑内障のレーザー治療について教えてください。
- 点眼薬では眼圧を下げることができなかった場合に提案されるのがレーザー治療です。レーザー治療には、虹彩に穴を開けて房水が流れる道を作る「レーザー虹彩切開術」と、目詰まりを起こしている線維柱帯にレーザーを照射して詰まりの解消を促す「選択的レーザー線維柱帯形成術」があります。どちらも点眼麻酔を施したうえで実施するため痛みは少なく、治療にかかる時間も短く済みます。 なお一般に、「レーザー虹彩切開術」は閉塞隅角緑内障に対して行い、「選択的レーザー線維柱帯形成術」は開放隅角緑内障に対して行われます。レーザー虹彩切開術は手術ではないため、手軽に行われるメリットもありますが、発作時には角膜浮腫を起こしていることが多く、その場合はレーザーを当てられないことも多いです。最近では白内障手術がかなり短時間で出来るようになっていることもあり、閉塞隅角緑内障の患者さんに対しては、白内障手術を行うことで対応することが増えているといえます。
- 緑内障の外科手術について教えてください。
- 治療の最終手段となるのが外科的手術です。線維柱帯の一部を取り除いて房水を排出しやすくする「線維柱帯切除術」や、線維柱帯を切り開いて流れを良くする「線維柱帯切開術」があります。さらに近年では、房水が流れる道をインプラントで作成する手術も保険適用で行われています。
編集部まとめ
本記事では、緑内障の基礎知識から発見するための眼底検査までを解説しました。眼科検査で痛みを伴うものはほとんどなく、治療を行う場合も麻酔を使用するため患者さんの負担は少なく抑えられています。これまで検査を受けたことがない方の中には不安に感じる方もいるかと思いますが、目の状態を長く健康に保つためにも定期的に検査を受けるようにしましょう。
参考文献