緑内障の点眼薬は、種類が多く効能も様々です。それゆえに、よく分からないまま使用しているという方もいるのではないでしょうか。 緑内障は長期間の治療が必要であるため、緑内障について知っておくことは、今後の治療を選択するうえで重要です。 そこで今回は、緑内障の点眼薬の種類や効能、成分や副作用について詳しくまとめました。 さらに、点眼薬の正しい差し方、市販薬を使用する際の注意点、点眼薬以外の治療法についても解説します。ぜひ最後までご覧ください。
緑内障の点眼薬について
緑内障とは視神経に異常が発生し、視界がぼやける、視野が狭くなるなどの症状が現れる進行性の病気です。 緑内障の治療として、点眼薬を使用する場合がありますが、点眼薬には多くの種類があるのをご存じでしょうか。症状に合わせて最適な点眼薬を使用することが、効果的な治療のために必要です。ここからは、種類や効果、注意点などについて詳しく解説します。
緑内障で点眼薬を使うケースとは
眼圧を下げるためには、眼の中の「房水」と呼ばれる液体を減らす作用がある点眼薬を使用します。房水は、角膜と水晶体の間を満たす透明な液体で、これが増えることで眼圧が高くなってしまうのです。 緑内障は進行性の病気で、失った視野は回復することがありません。また、初期段階では、目立った症状がなく、無自覚で症状が進行する場合があり、最悪の場合失明に至る恐れがあるため、早期から眼圧が高くなりすぎないように対策をすることが大切です。早期治療を開始すれば、生涯にわたって視野を維持できる可能性が高まります。
点眼薬のトライアルとは
緑内障の治療が開始すると、まず、今後継続して使用する点眼薬を決定するためにトライアルを行います。 まず片目にのみ点眼し、点眼した目と反対の目の眼圧とを比較して、効果を判定。 片目でのトライアルで、十分な効果が得られない、副作用が出たという場合には、点眼薬を変更して患者様に合うものを探します。経過を観察し、効果や副作用について問題が無いことを確認してから、両目の治療を開始します。 緑内障に使用できる点眼薬は種類が多く、成分の違いによって効果や副作用に個人差があるため、トライアルを行うことで患者さんに合った点眼薬で治療を開始することができるのです。
点眼薬の種類と効能
緑内障の点眼薬は、複数の種類があり、含まれる成分が異なります。 例えば、房水の生産を抑制する点眼薬と、房水の排出を促進する点眼薬では、房水の量を減らして眼圧を下げるという目的は同じですが、それぞれ異なるメカニズムで作用するのです。そのほかにも、血流を改善し視神経の働きを助ける作用のある点眼薬を組み合わせて使用することもあります。
房水の生成を抑える薬
チモロールやカルテオロール(β遮断薬)や、ドルゾラミド、ブリンゾラミド(炭酸脱水酵素阻害薬)は、房水の生成を抑制することで眼内の房水の量を減らし、眼圧を下げる点眼薬です。 種類によって点眼回数は変わりますが、1日1~2回点眼することで効果を発揮。副作用として、まれに目の充血などのアレルギー反応が出ることがあり、どの点眼薬を使用するかは、眼科受診で眼圧の検査や副作用の確認を行いながら眼科医が処方を行います。
房水の流出を促す薬
房水の流出を促進する薬剤には、ラタノプロストやオミデネパグ、リパスジルなど多くの種類があります。 房水の流出経路には「ぶどう膜強膜流出路」と「線維柱帯流出路」の2つがあり、点眼薬の種類によってどちらの経路から流出を促すかが異なるのです。特に、ぶどう膜強膜路への房水排出を促進するキサラタンやエイベリス(プロスタグランジン製剤)は、1日1回の点眼で効果が期待できるため、緑内障の治療方法として初めに使用されることが多い代表的な点眼薬です。副作用としては、長期的な使用により瞼が下がる眼瞼下垂や、目の周りがくぼむ上眼瞼溝深化、まつ毛が太く長くなるなどの症状がみられる場合があります。 グラナテックやリパスジル(ROCK阻害薬)は、線維柱帯から房水の排出を促進する点眼薬です。血管を拡張する作用があり、一過性の目の充血やアレルギー反応の副作用を発生する場合があります。 点眼薬の種類によって、得られる効果と副作用の頻度が変わってくるため、経過を観察し自分に合った点眼薬を決定することが大切です。
その他の点眼薬
眼圧を下げる作用をもつ点眼薬のほかに、角膜や結膜の保護や、視神経の修復、眼精疲労の緩和に効果があるビタミン剤の使用や、目の周りの血流を改善するサプリメントが使用される場合もあります。 中でも、ビタミンB12は、視神経の保護や神経を正常に保つ作用が期待でき、緑内障の点眼薬にも配合されることが多いビタミンです。 また、ひとつの点眼薬に複数の有効成分が配合された配合薬は、点眼薬の本数や点眼回数を減らせるメリットがあります。しかし、副作用が出たときにどの成分によるものかを特定するのが難しいというのがデメリットです。 このように、緑内障の点眼薬には多くの選択肢があるため、担当の眼科医と相談しつつ最適な点眼薬を選びましょう。
緑内障に使える市販の点眼薬について
ドラッグストアで手軽に購入ができる市販の点眼薬ですが、緑内障の方が使用する場合、点眼薬の成分には注意が必要です。 なぜなら、何も知らずに市販の点眼薬を使用すると、緑内障の悪化や、病気の進行に気が付きにくくなってしまう恐れがあります。市販の点眼薬を使用する場合は、含まれている成分に十分注意して選ぶようにしましょう。
緑内障の患者が避けた方が良い成分
充血を除去する目的で配合されることがある「塩酸テトラヒドロゾリン」は、眼圧上昇の恐れがあるため、緑内障の方は使用しないようにしましょう。 また、ドライアイや眼精疲労に有効な「ネオスチグミン」という目のピント調節機能改善成分も眼圧上昇の危険性があります。 いずれも多くの市販の点眼薬に配合されている成分であるため、しっかりと成分表を確認し、眼科医または薬剤師に相談をした上で使用することが望ましいでしょう。
緑内障に効く目薬を選ぶ際のポイント
緑内障の方が市販薬を使用する場合、症状を悪化させる成分を含んでいないことが最も大切です。緑内障に使用してよい点眼薬かどうかを自分で判断することが難しい場合、かかりつけ医や薬剤師に相談してから購入することをおすすめします。緑内障でも使用できるか確認した上で、ご自身の目の症状に合わせた点眼薬を選択するようにしましょう。 たとえば、花粉やハウスダストなどが原因で目のかゆみや異物感がある場合は、抗アレルギー成分が含まれるもの、ものもらいや結膜炎による痛みやかゆみに対しては、抗菌作用のある点眼薬が効果的です。
市販の目薬を使うときの注意点
市販の点眼薬を使用する場合、症状の進行に気が付かずに緑内障が重症化してしまうケースに注意が必要です。たとえば、目が見えにくいと感じたときに、目のかすみなどの症状を改善する点眼薬を使用すると、受診するのが遅れ、緑内障の症状が進行してしまう恐れがあります。 また、急激に眼圧が上昇し、目の痛みや、視力低下、目の充血などを引き起こす急性緑内障発作は、数時間単位での緊急の対応が必要な病気です。急性緑内障発作に気が付かず、目の痛みや充血に対する点眼薬を使用して治療が遅れた場合、失明につながる可能性もあります。 緑内障による症状は、視野の欠けやぼやけて見えにくいなど人によって様々です。視野の欠けや明らかな異常がある場合は眼科に行くことができますが、ぼやけて見えにくいと感じた場合、市販の点眼薬を使用して様子を見ようと思うことがあるかもしれません。しかし、目に異変を感じた際には、自己判断で市販の点眼薬を使用して様子を見るのではなく、早急に眼科医の診察を受けることをおすすめします。
緑内障の点眼薬の費用について
緑内障の点眼薬は研究費が高く、費用も高額なものが多くあります。また、緑内障の治療は長期間にわたって継続していく必要があり、症状によっては複数の点眼薬を併用するため、その分費用がかかってしまうのです。ここからは、気になる緑内障の点眼薬の費用について解説します。
緑内障の点眼薬は保険適用
緑内障の治療は基本的に健康保険の適用になります。1回の支払額はそこまで高額ではないかもしれませんが、緑内障は生涯治療を続ける場合も多く、数十年もの治療期間になることがあるため、保険適用で治療が受けられるのは大きなメリットです。
緑内障の点眼薬の費用相場
緑内障の点眼薬は、種類や保険の負担額にもよりますが、1本数百円から数千円の支払いになることが多いようです。さらに、治療には定期的な通院が必要となるため、年間数万円の出費が続くことになります。緑内障の治療には費用がかかってしまいますが、眼圧を下げるために点眼薬の継続は必要不可欠です。
緑内障の点眼薬の正しい差し方
点眼薬の効果を最大限発揮するためには正しい方法で点眼する必要があります。 まず、目の感染症を防ぐために石鹸で手を洗い、清潔な手で点眼を行いましょう。次に、容器の先がまつ毛や目に触れないように注意しながら決められた容量を点眼します。 点眼後は、点眼薬の成分が鼻の方へ流れてくるのを防ぐため、静かに目を閉じ、目頭の部分をしばらく圧迫。目の周囲に薬の成分が付着すると副作用の可能性が高まるため、目からあふれてきた場合は清潔なティッシュやハンカチですぐに拭き取るようにしましょう。 複数の点眼薬を併用する場合は、5分以上の間隔を空けて点眼するようにしてください。 はじめの点眼薬が目に残っている状態で次の点眼薬を使用すると、吸収しきれなかった有効成分が目から流れ出て、効果が半減してしまうため注意が必要です。
緑内障の点眼薬以外の治療方法について
緑内障の治療には、点眼薬以外に手術での治療が可能です。 手術というと怖いイメージがある方も多いと思いますが、数分の処置で終了し、手術後の日常生活の制限がほとんどない手術もあります。 緑内障の手術は複数の術式があるため、どの治療が最適か眼科医と相談し、病状に合わせて慎重に治療方法を選択するようにしましょう。
レーザー治療
点眼薬での効果が無い場合、線維柱帯という目の中の組織に特殊なレーザーを当てて、房水の流れを改善する手術を行います。 線維柱帯の役割は、房水が流れる経路にある網目状の組織で、房水が目の外に流れる際のフィルターです。何らかの原因で線維柱帯の通りが悪くなると、房水がうまく目の外に排出されず、眼圧が上がる原因になります。そこで、線維柱帯にレーザーを照射し、細胞を活性化させることで、房水のスムーズな排出を促すのです。 眼圧が高すぎる場合には十分な効果を得られないことがあり、眼科医の診察により手術の必要性を判断します。手術は、5分から10分程度の短時間で終了し、日帰りで施術が可能です。 また、急性緑内障発作を発症した際には、レーザーで虹彩の根元に穴を開け、房水が流れる道を作るレーザー虹彩切開術を行います。レーザーでの手術は、外科手術と比較して身体への負担が少なく合併症のリスクも低いのがメリットです。
外科手術
外科手術は、点眼薬やレーザー手術での治療効果が十分に得られない場合に選択されます。 線維柱帯を切開し眼圧を下げる手術(線維柱帯切開術)や、線維柱帯の一部を切り取り房水の排出路を作る手術(線維柱帯切除術)、白内障手術などがあります。緑内障なのに、白内障手術?と思われるかもしれません。白内障手術が適用となるのは、水晶体が房水の通り道を塞ぐことで房水の排出が妨げられる「閉塞隅角緑内障」の場合です。白内障手術は、目の中の水晶体を取り除き、人工のレンズを挿入する手術で、人工のレンズは水晶体よりも薄いため、房水の通り道が広がり、流れが改善されます。 また、緑内障が進行した場合には、目の中にチューブを留置して房水を眼球の周囲に流す手術が適用となる場合もあります。外科手術は、多くの場合入院が必要であり、術後のケアやメンテナンス、感染症にも注意しなければなりません。しかし、レーザー治療と比較して高い効果が期待できます。 点眼薬やレーザーでの治療と比較して、身体への負担は大きくなるため、眼科医と十分相談して手術内容を検討することが必要です。
まとめ
緑内障は、悪化すると失明につながる可能性がある病気です。緑内障の点眼薬には多くの種類があるため、眼科医の診察のもと症状に合ったものを選択しましょう。 また、市販の点眼薬を使用したい場合には、成分に注意が必要です。専門家に相談し、慎重に使用することをおすすめします。 緑内障は長期間の治療が必要ですが、保険適用で治療が受けられるのは大きなメリットです。点眼薬だけでなく手術の選択肢もあるため、眼科医と相談しながら治療方法を決定していきましょう。
参考文献