目の病気の1つとして「緑内障」というワードを聞いたことがある方は多いでしょう。しかし「何が原因となって緑内障になるのか」「どのような検査や治療があるのか」「予防はできるのか」といった具体的な内容まで理解している方は少ないかと思います。
そこで今回は、緑内障の原因やタイプ、症状を始め、検査を受ける重要性や治療方法、予防方法などについて詳しく解説していきます。正しい知識を習得し、病気の早期発見、早期治療につなげていただければ幸いです。
緑内障について
「緑内障」という病気だからと言って、目が緑になるわけではありません。まずはどのような病気なのか、進行すると体や日常生活にどのような影響が出てしまうのか、詳しく解説します。
- 緑内障とはどのような病気ですか?
- 緑内障とは、眼圧によって視神経が傷つき、ゆっくりと視野が欠けていく疾患です。急に眼圧が上がって痛みを伴う場合もあれば、他の目の病気がきっかけとなって緑内障になる場合もありますが、ほとんどの場合が痛みを伴わずにじわじわと視野が狭くなっていきます。
家族や親戚に緑内障の人がいたり、偏食、冷え症が原因で緑内障を発症することもあります。視野の中心は、光に対する反応も長く保たれていますし、緑内障末期になるまで消えてしまうことはほぼありません。また、ぼやけたり霧がかかっているように感じる視野欠損の部分は両目で補い合っているため、突然ものが見えなくなるということはなく、緑内障になっていることに気づきにくいのが特徴です。
- 緑内障のタイプについて教えてください。
- 緑内障には大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は開放隅角緑内障です。目の中には房水という液体が循環しており、それによって正常な眼圧が保たれています。しかし、房水を排水する「隅角」という部分が詰まって流れが悪くなり、眼圧が上がって緑内障へとつながります。開放隅角緑内障は、点眼薬を用いて眼圧を下げることが第一の治療方法です。それでも眼圧が下がらない場合は、手術を行う方法もあります。
2つ目は閉塞隅角緑内障で、隅角がもともと狭い方に多い傾向にあります。急に眼圧が上がるのが特徴で、目が痛くなってかすんだり、頭痛や吐き気がしたりといった急性緑内障発作になって見つかるケースがあります。閉塞隅角緑内障の場合は、基本的にレーザー治療や手術によって治療を行います。
- 緑内障が進行するとどのような影響がありますか?
- 残念ながら、視神経は一度傷つくと元通りになることはありません。初期の段階で発見し早期に治療を行うことができれば、進行を遅らせたり失明を防いだりすることはできますが、何もせずに末期を迎えてしまうと、視野がどんどん狭くなり視力も悪くなって、日常生活にも支障をきたすようになります。また、その状態を放置すると失明してしまうリスクが高くなるため、定期的に検査を受けることが大切です。
緑内障を早期発見するために
では、自覚症状が出にくい緑内障を早期に発見するにはどうすれば良いのでしょうか。取るべき行動、必要な検査について解説します。
- 緑内障を早期発見するためにはどうすべきか教えてください。
- 自覚症状がなかなか現れず、「目に違和感がある」「なんかおかしいな」と思ったときにはかなり進行してしまっている可能性が高いのが緑内障です。一方で、早期に発見できれば症状を食い止めることができます。そのため、定期的に健康診断を受け、そこで指摘を受けたら、必ず眼科を受診し、検査を受けることが大切です。
去年も同じ指摘を受け、眼科で問題がないと言われていたとしても、今年指摘を受けたのならまた受診することが重要です。 そして、40歳を過ぎたら健康診断以外にも定期的に検査を受けるようにしましょう。また、すでに緑内障と診断されている場合は「症状が進行している」という実感がなくても医師の指示に従い、適切な治療を受けるようにしましょう。
- 緑内障の検査の流れを教えてください。
- 緑内障の診断には複数の検査が必要になります。まず行う必要があるのが眼圧検査です。この検査には、機械を直接目に当てて測定する接触型や、目に圧縮した空気を送って測定する非接触型があります。緑内障の治療は眼圧を下げることが基本となるため、この検査はとても大切です。次に必要なのが隅角検査です。
この検査では、検査用のコンタクトレンズを装着して、眼圧が高くなっている原因や緑内障のタイプを調べることができます。また、眼底検査を行う必要もあります。眼底検査では、視神経の障害の度合いや、周囲の網膜神経線維層の欠損の有無、視神経乳頭の出血の有無などを調べます。さらに、緑内障の進行度合いを調べる視野検査も重要です。視野検査にはハンフリー視野計とゴールドマン視野計で行う2種類があり、患者さんの状態によって使い分けます。
緑内障の治療
緑内障は、眼圧を下げることができれば、病状の進行を防いだり遅らせたりすることができます。ただ、傷ついてしまった視神経を元に戻すことはできません。また、どんなに治療を行っても進行を止めることができない緑内障が存在するのも現状です。治療の目的としては、進行を止めるまたは遅らせることであり、回復させるものではないことを理解しておきましょう。
- 緑内障は治療しますか?
- 上述のとおり、緑内障の治療は進行を止めることや遅らせることが目的のため、治療によって症状を回復させることはできません。緑内障は重度にまで進行すると失明してしまうリスクがあるため、進行予防、抑制を目的として、薬物療法、レーザー治療、手術を行うことが大切です。これらはすべての緑内障に対して同じような治療効果が期待できるものではなく、緑内障のタイプや患者さんの状態に適した治療を選択する必要があります。そのため、治療を受けようと考えている方は、緑内障を専門としている医師が在籍する眼科を受診するようにしましょう。
- 緑内障の治療法について教えてください。
- 緑内障の治療法は薬物療法、レーザー治療、手術と大きく3種類存在し、最も基本的な治療法は薬物療法となります。現在、緑内障に適した点眼薬は10種類以上あり、それぞれの種類ごとに異なる効果が期待できます。これらの点眼薬の中から緑内障のタイプや重症度、眼圧の高さなどに合ったものが処方されます。
なお、1種類の点眼薬では効果が少ないと判断された場合は、いくつかの種類を組み合わせて処方されることもあります。点眼薬は、緑内障の症状が今以上に悪化しないようにすることを目的として処方されるため、改善しないからという理由で使用をやめてしまわないように気をつけましょう。また、薬物療法の中には眼圧を下げる飲み薬を使用する場合もあります。薬物療法の次にメジャーな治療法としては、レーザー治療が挙げられます。この治療法には、レーザーで虹彩に穴を開けて目の中の房水の流れを変えるものと、レーザーを線維柱帯に照射することで房水の排出を促進するものがあります。
これらは閉塞隅角か開放隅角かによって使い分けがされています。薬物療法・レーザー治療で改善が見込めなかった場合の最終手段として、手術が挙げられます。目の外側に房水が染み出すように細工することが目的の手術と、線維柱帯を切開して房水を排出しやすくする目的の手術があります。また、房水の排出を改善するために器具を留置する方法もあります。いずれの治療法についても、緑内障のタイプや症状の重さなどを考慮した上で適切な手段を選択する必要があります。
編集部まとめ
「ものを見る」という動作は生活していくうえで欠かせないものです。前述したように、視神経は一度傷つくと元通りにはなりませんし、緑内障が重症化すると失明してしまうリスクもあるため、早期発見・早期治療が重要です。これまで一度も検査を受けたことがない40歳以上の方、ものが見えづらくなってきたという方、家族に緑内障患者がいる方は専門の医療機関を受診することをご検討ください。
参考文献