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硝子体手術後に起きる光視症とは?症状・原因などを解説

硝子体手術後に起きる光視症とは?症状・原因などを解説

眼球の内側を埋める透明でゼリー状の組織を硝子体といいます。

硝子体を取り除いて病気の治療をする硝子体手術は、眼科の領域において最も難しい手術のひとつです。

多くの人が受ける手術として広く知られていますが、術後に光視症という症状が起こることがあります。

この記事では硝子体手術後に起こる光視症の症状・原因・対処法などについて解説していきます。

光視症について知り、症状が起きた際は適切に対応できるようにしておきましょう。

硝子体手術後に起こる光視症の症状

硝子体手術後に起こる光視症の症状
硝子体手術とはどのような手術ですか?
眼の硝子体と呼ばれる組織を除去し、眼球の内側から病気を治療する手術です。
硝子体は水晶と網膜の間にある眼球の大半を占める透明な組織です。硝子体を取ることが手術の目的ではなく、網膜剥離・糖尿病網膜症などの治療のために行います。
白目の部分から3カ所穴を開け眼内に細い器具を挿入し、硝子体の切除や網膜の治療を行っていきます。出血や悪い膜があれば同時に処理することも可能です。
その後、眼内を空気に置き換え裂孔の周囲をレーザーで内側から焼き付けます。場合によっては手術後に治療用のガスを入れることがあります。
ガスが網膜を抑えてくれるため、術後は下を向いて生活することが重要です。また、年齢によっては白内障手術を同時に行う場合があります。硝子体手術は20分ほどで終了するものから数時間かかるものがあります。
術後は充血・視力の低下などが続きますが徐々に落ち着いてくるでしょう。
眼にとってダメージが大きい手術なので効果が見られるまでに3カ月~半年ほど必要になることがあります。
手術前より見えやすくなることが最終的な目標なので、長期的な視点を持つことが大切です。
非常に高度かつ繊細な手術でもあるので、出血・感染症・網膜剥離・白内障・緑内障などが合併症として起こる可能性があります。
乱視・飛蚊症・光視症などの症状に悩まされることもあるかもしれません。
医師とじっくり相談したうえで手術を行うことが重要です。
光視症の主症状を教えてください
光が当たったわけでもないのに光が飛んで見えることがあります。
光視症は以下のような症状が見られます。

  • 視野の一部にチカチカ・ピカピカした光が見える
  • 一瞬もしくは数秒間キラキラした光が見える
  • 暗い場所にいる時や眼を閉じている時に稲妻のような光が見える

これらの症状は硝子体が網膜を引っ張ることによる刺激が原因で起こります。
光視症は病気ではないので放置しても問題はありません。
しかし、網膜剥離の前兆として症状が現れることがあります。
治療が必要となる病気が潜んでいる場合もあるので注意が必要です。

光視症にかかると生活に支障が出ますか?
頻繁に症状が現れると生活に支障が出ることがあります。
光視症と飛蚊症(視野に黒い点が飛んでいるように見える症状)が同時に起きたり視野欠損が生じた場合は網膜剥離や網膜裂孔の可能性があります。
光視症の後に煙や墨のようなものが上から落ちてくるように見えるときは出血などが起きている場合もあるでしょう。
病気を早期に発見・治療すれば手術せずにレーザー治療などで改善することがあります。
光視症は時間が経過すれば症状が収まることもあるので過度に神経質になる必要はありません。
しかし、光視症の症状が重くなった・光視症以外の症状が起きた場合は早めに眼科を受診しましょう。
症状があったから必ずしも病気というわけではありませんが、受診することが安心感につながります。
光視症は普段の生活でも起こりえますか?
普段の生活において光視症の症状が現れる場面はあります。
光視症の原因として加齢物理的な力が加わることが挙げられるでしょう。
子どもの頃は硝子体が大きく網膜との間に隙間がありませんが、中高年になると硝子体が萎んだり網膜にしわが寄ったりします。
それによって硝子体が網膜を引っ張りやすくなるので光視症の症状が現れるのです。
また、頭をぶつける・ボールが眼に当たる・眼を指で強く押すなど強い刺激が加わると光として感じてしまうことがあります。
場合によっては網膜裂孔・網膜剥離などの病気になる可能性があるので注意が必要です。
ボールが当たるなど物理的に強い力がかかることで網膜が破れてしまうことを裂孔原性網膜剥離といいます。
網膜剝離や網膜裂孔の症状が重い場合は早急に手術する必要があります。

硝子体手術後に起こる光視症の原因・費用

硝子体手術後に起こる光視症の原因・費用

この手術でなぜ光視症が起こるのですか?
白内障手術を同時に行った場合には眼内レンズの瞳をつくる虹彩との間に隙間ができ、横から光が入りやすくなることが一因です。しかしながら、硝子体と網膜の癒着の強い部分に牽引が生じ、光視症が生じることもあり、網膜裂孔や網膜剥離の原因となることもあり注意が必要です。
視野に光やリングが見える症状が現れることがありますが、ほとんどの場合は時間が経過すれば収まります。
術後は光がちらつく・光の線が見える・ふわっとしたものが見えるなどの症状が現れることがありますが一般的な経過です。
症状は徐々に落ち着き、視力の改善・ゆがみの減少によってよく見えるようになるでしょう。
手術以外での治療法はありますか?
網膜裂孔や網膜剝離が原因で光視症の症状が現れている場合はレーザー治療を行うことがあります。
レーザーで焼き付けることで網膜がはがれないようにする治療です。
短時間で終わるので外来で治療できますし、眼にとって負担が少ない方法です。
ただし、裂孔が大きすぎたり硝子体の引っ張る力が強い場合などは治療できません。
治療費用の相場を教えてください
病気の種類などによって違いますが、硝子体手術の費用は3割負担で12万~17万円ほどです。
同時に白内障手術を行った場合、追加料金として約3万円ほど発生します。
レーザー治療は3割負担で2万円~10万円ほどです。
他に薬剤費などの費用が発生する場合があります。
治療は保険適用されますか?
公的医療保険が適用されるので自己負担割合は1~3割です。
費用が高額になる場合は医療費控除・限度額適用認定証発行の対象になることがあります。詳細はお近くの保健機関や区役所にお問い合わせください。

硝子体手術後に起こる光視症の注意点

硝子体手術後に起こる光視症の注意点

光視症は他の疾患の早期発見にも役立ちますか
光視症は網膜裂孔・網膜剥離を早期に発見する手がかりとなることがあります。
網膜裂孔は硝子体剥離が起こる際に網膜が破れた穴のことです。網膜裂孔を放置すると網膜剥離になることがあります。
網膜剥離は網膜が脈絡膜から剥がれてしまう病気です。網膜剥離が進行すると光の刺激を受け取れなくなってしまいます。
網膜剥離の前兆として光視症・飛蚊症・視力の低下・視野欠損などの症状が起こることがあるので注意が必要です。
また、脳梗塞・脳動脈瘤・能動静脈奇形・脳腫瘍など、脳の病気によって光視症が起こることがあります。
心配な場合は神経内科や脳神経外科でMRI・CTなどの画像診断を受けましょう。
他に閃輝暗点という視界にギザギザした光が見えた後に片頭痛が起こる病気が原因で症状が現れることがあります。
光視症は眼の病気・脳の病気のどちらかが起きているサインとなることがあります。
光視症に罹患した際に気を付けることはありますか?
光視症に羅患した際は眼底検査を受けることが重要です。眼底検査は瞳孔を広げた後、検眼鏡で瞳孔から眼球の奥にある網膜の状態を調べる検査です。
光視症だけではなく飛蚊症・視力低下・視野欠損などの症状がある場合は早めに検査を受けましょう。網膜裂孔・網膜剥離などは早期発見が重要な病気です。
病気ではない場合も定期的に検査を受けることが大切です。症状が軽いから大丈夫だと放置せず、医師に相談しましょう。
また、眼を適度に休ませることも光視症を悪化させないために大切なことです。
パソコンやスマートフォンの画面を見る機会が多い現代人は想像以上に眼が疲れています。
眼精疲労は光視症だけでなくさまざまな病気の原因となる場合があります。眼の疲れを感じた時は無理をしないようにしましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

硝子体手術後に起こる光視症は改善する場合が多いので過度に心配する必要はありません。

しかし、症状が長引く場合や新たな症状が現れた際は専門の医師に相談しましょう。

生理的な現象で光視症が起きているのなら問題がありませんが、病気のサインとして症状が現れている場合があります。

網膜裂孔や網膜剥離などの病気は早期に治療することが重要です。

いつも眼を大切にケアし、気になる症状があれば眼科を受診しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

東京大学医学部卒業(1995年 MD)/ 東京大学大学院修了(医学博士 2001年 PhD) / 東京大学医学部眼科学教室講師(2012-2015年) / デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016年-2020年)/ 旭川医科大学眼科学教室教授(2018年-2020年) / 横浜市立大学 視覚再生外科学 客員教授(2020年-現在) / 専門は黄斑疾患。シンガポールをはじめとした国際的な活動に加え、都内のお花茶 屋眼科での勤務やDeepEyeVision株式会社の取締役を務めるなど、マルチに活躍し ています。また、基礎医学の学術的バックグラウンドを持ち、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究などを行っています。

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