瞼にしこりができる目の病気、霰粒腫をご存じでしょうか。ものもらいといわれる麦粒腫と似た症状になることもありますが、原因・経過・治療法が異なります。
こちらの記事では霰粒腫の症状・原因・麦粒腫との違いについて解説しました。ものもらいと同様繰り返しやすい病気であり、乳幼児から高齢者までどの世代の方も発症する病気です。
気になる症状がある方は是非参考にしてみてください。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)の症状や原因
- 霰粒腫とはどのような病気ですか?
- 霰粒腫は「めいぼ」とも呼ばれ、瞼にしこりができる病気です。涙成分の一つである脂は目の乾燥を防ぐ働きがあり、瞼の奥にあるマイボーム腺から分泌されます。
このマイボーム腺の出口が詰まり、肉芽腫と呼ばれるしこりができることで発症します。しこりができる場所は人それぞれです。
上瞼と下瞼のどちらにもできる可能性があり、外見から見て分かる場所にできる場合もあれば、瞼の内側にできる場合もあります。
霰粒腫は幅広い年齢層で発症する病気で、ものもらいといわれる麦粒腫と似た症状になることもありますが、どちらも他人にうつす病気ではありません。高齢で霰粒腫を繰り返す場合は悪性腫瘍の場合もあるため注意が必要です。
- どのような症状が出るのですか?
- 霰粒腫は瞼にしこりができるため、米粒大から小豆大のやや硬いしこりで自覚することが多いです。細菌感染が原因の麦粒腫とは異なり、霰粒腫は基本的に痛みや赤みはありません。
しかし、しこりの部分が細菌感染を起こすと化膿性霰粒腫となり痛みや赤みなどの症状が出てきます。この場合は麦粒腫との鑑別が必要です。
霰粒腫のしこりが小さい場合は数週間で自然に吸収されることもありますが、しこりが次第に大きくなり皮膚のただれや目のかすみなど日常生活に影響が出る場合があります。気になる症状がある場合には早めに眼科を受診しましょう。
霰粒腫はしこりが残ると再発しやすい傾向にあり、一生のうちに1・2回しかならない方もいれば、繰り返す方もいます。繰り返すとマイボーム腺の機能が低下するため、ドライアイのリスクが高まります。
- 原因について教えてください。
- 霰粒腫は瞼の縁にあるマイボーム腺が詰まることで起こる病気です。非感染性の慢性肉芽腫性炎症なので、細菌感染は原因となりません。
クレンジングが不十分でアイメイクに含まれる油分が残っている場合やコンタクトレンズの汚れが残っている場合も原因になり得ます。また加齢・ストレスのほか、不規則な生活・ホルモンバランスの変化・疲労が関係しているといわれています。
十分に睡眠をとり規則正しい生活を心がけましょう。油分の多い偏った食事も関係しているため、バランスのとれた食事も大切です。
- 麦粒腫との違いを教えてください。
- 霰粒腫も麦粒腫もどちらも瞼に腫れやしこりができる状態を指しますが、決定的な違いは原因です。麦粒腫は通常ブドウ球菌の感染によって起こるのに対し、霰粒腫は分泌腺の詰まりが原因で起こります。
一般的に痛みやかゆみの症状がでるのが麦粒腫であることが多く、霰粒腫でも感染を起こすと痛みや赤みなどの似た症状が現れるため、見た目だけでは判断することが難しいです。
麦粒腫は感染が落ち着く約1週間ほどで症状が軽快しますが、霰粒腫は炎症が落ち着いてもしこりだけが残るなど、経過が長くなることがあります。他人への感染の心配がないことは麦粒腫との共通点になります。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)の対処法や治療方法
- 自分でできる対処法はありますか?
- しこりが気になる場合も多いですが、むやみに目をこすったりしないようにしましょう。また新たな感染が起こらないよう、マイボーム腺の出口がある瞼の清潔を保つことも大切です。
霰粒腫があまり大きくなく早い段階でしこりに気づいた場合は、瞼を蒸しタオルなどで温めることでマイボーム腺の脂を溶かし瞼の血流を改善できます。
そして血流が良くなった瞼を優しくマッサージし、分泌物の排出や吸収を促す方法がご自身でできる対処法です。
また霰粒腫ができやすい体質の方は、脂腺が詰まりやすくなるアイスクリーム・バター・チョコレートなどの食事は節度をもって食べると良いでしょう。
- 眼科ではどのような検査が行われますか?
- 基本的には自覚症状を含む問診・視診・触診が行われます。またさまざまな目の病気を調べられる細隙灯と呼ばれる拡大鏡で瞼の内側を診察することも多いです。
治療でステロイドを使用する場合は眼圧の急激な変動がないか確認するために眼圧検査が欠かせません。
霰粒腫を繰り返す場合は瞼の悪性腫瘍である脂腺がんとの鑑別をするため、皮膚組織を採取して病理検査が行われることもあります。
- 眼科での治療方法について教えてください。
- しこりが小さければ自然に吸収されることもあるため、感染防止目的で抗生物質の内服や抗炎症作用のある点眼を使用しながら経過をみることがあります。
痛みや赤みなど炎症症状がみられる場合はまず抗生物質の内服・点眼・眼軟膏を使用して炎症をおさえることが治療の第一選択です。
しこりがやや大きい場合はしこりの中に副腎皮質ステロイド薬を注射することで治ることがありますが、ステロイド治療をしてもしこりが残り見た目が気になる場合は手術を選択する場合もあります。
- 手術が行われるケースもあるのですか?
- しこりが残り、気になる場合や繰り返し霰粒腫ができる場合は手術が選択されます。しこりの位置により切開場所は変わります。しこりが皮膚面に突出している場合は皮膚を切開し、しこりの大きさによりますが通常1~3糸縫合されることが多いです。
また、目の周りの傷跡は残りにくいとされています。縫合した場合は3日~1週間程度で抜糸されますが、手術後は瞼が腫れることが多いので1週間程度大事な予定を入れないようにしましょう。
しこりが瞼の裏側に拡大している場合は結膜面から切開しますが、この場合は皮膚に傷跡が残ることはありません。手術は局所麻酔で行われることが多く、手術時間は約15~30分程度です。
手術当日の洗顔や洗髪はできませんが、翌日には眼帯もはずれ、日常生活に制限もないことがほとんどです。局所麻酔での手術が難しい小児の場合は全身麻酔で行われることもありますが、小児の場合は自然に経過をみることもあります。
ただし、小児でもしこりが大きくなる場合は弱視の原因にもなるので、手術すべきかどうか眼科医に相談するのが良いでしょう。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)の予防法や早期発見
- 霰粒腫の予防法を教えてください。
- 瞼の皮膚は薄く、目は非常にデリケートな部分です。そのため、霰粒腫・麦粒腫のどちらも目もとの清潔を保つことが大切です。
また霰粒腫ができた時はコンタクトレンズの使用を控えると良いでしょう。女性でアイメイクをする方はクレンジングを丁寧に行い、洗い残しがないようにしてください。
またホットタオルなどで瞼を温めることが詰まった脂を溶かし瞼の血流を良くするため、マイボーム腺の詰まりの解消を促します。
入浴時はシャワーで済ませず湯船に浸かって身体を温めることが瞼の血流改善にもつながります。ただし、炎症症状がある場合に温めてしまうと症状が悪化しますので注意しましょう。
- 早期発見のポイントを教えてください。
- 麦粒腫と似たような症状を呈することもある霰粒腫は外見だけで判断するのが難しい病気です。
皮膚科と眼科どちらに受診したら良いか迷う方もいらっしゃいますが、瞼に症状がある場合は単なる皮膚トラブルでなく、目のトラブルから生じていることもあるためまずは眼科を受診すると良いでしょう。
瞼に炎症が起きた場合やしこりが確認できた場合は、日常生活に支障が出る前に早めに眼科を受診し適切な治療を受けることが大切です。
編集部まとめ
霰粒腫はものもらいといわれる麦粒腫と似た病気ですが、原因や症状に違いがあることが分かりました。
しこりが小さいと自然治癒する場合もありますが、炎症がある場合は麦粒腫などの他の目の病気と鑑別が難しい病気です。自己判断せず、早期に眼科を受診することが大切です。
しこりが残ると見た目にも影響しますので、気になる方は眼科医の診察をおすすめします。また、日頃から目もとの清潔を保つことが霰粒腫の予防ですので、日常生活を一度見直してみるのも良いでしょう。
参考文献