視力の矯正のためICLを選択する人が年々増加しています。ICLは屈曲矯正手術という視力矯正手術のひとつで、同じ屈曲矯正手術の有名なものとしてレーシックという治療法を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
この記事ではICLの概要やメリットとデメリット、レーシックとの違いなどについても説明します。
ICLについてしっかりと理解を深めることで、現在ICLを検討されている皆さんの参考になれば幸いです。
ICLの種類・治療法
- ICLとは何ですか?
- ICLは「Implantable Collamer Lens」の略で、日本語では「有水晶体眼内レンズ」といいます。眼の中にレンズを挿入することで近視・遠視・乱視の治療が可能になります。
しかしレンズといっても眼鏡のような硬いレンズではなく、コラーゲンとハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の共重合体という非常に軟らかい素材でできたレンズを使用しますので、眼内組織への刺激がほとんどないことが特徴です。
ロシアの医師が1980年代に開発したことが始まりといわれていますが、日本の厚生労働省が認可したのは2010年で新しい治療法です。
- ICLの種類には何がありますか?
- ICLはレンズを挿入する場所によって「前房型」と「後房型」の2種類に分けられます。
人間の眼の構造は角膜と水晶体という2つのレンズがあり、その間に光の量を調節する虹彩という部分があります。角膜と虹彩の間にレンズを挿入するのが前房型、虹彩と水晶体の間に挿入するのが後房型です。
前房型は後房型と比べてズレや脱落のリスクが高く、現在は後房型が主流となっています。
- ICLの治療法を教えてください
- ICL治療をするにあたってまずはICLが受けられるかどうか、眼の状態を検査する必要があります。近視の度合いや角膜から水晶体までの距離などを測り、適応を確認します。
手術はまず散瞳薬(瞳孔を広げて眼の調整機能を休ませる薬)と麻酔薬の目薬をして、角膜を切開した所からICLレンズを挿入する方法です。位置を調節し虹彩と水晶体の間に固定したら終了です。(手術自体は20分程度)
角膜の切開創は糸などで縫合することなく、眼内圧で自然と閉鎖します。術後数時間は経過観察のため病院内で安静にしていただきますが、その後は帰宅できるので日帰りで手術が可能です。
術後のフォローのために翌日・1週間後・1ヶ月後と、約半年間は通院が必要となります。
- ICLとレーシックの違いを教えてください
- ICLは眼内へレンズを挿入することによって見え方を調整しますが、レーシックは角膜自体をレーザーで削ることによって見え方を調整する治療です。
レーシックは一度角膜を削ってしまうと元に戻すことはできず「元々角膜が薄い」「近視・遠視・乱視が強すぎる」などの場合には治療ができないことがあります。一方ICLはレーシックと比較して強い近視・遠視・乱視に対応しており、角膜が薄い方でも治療が受けられます。
また一度挿入した眼内レンズを取り出して元の状態に戻すことも可能で、もし将来白内障など眼内の手術が必要になった際、治療に影響を与えにくいです。
ICLのメリット・リスク
- ICLの特徴には何がありますか?
- ICLは対応する視力の幅が広いことや万が一の場合に除去や再挿入ができる点が特徴的です。
視力矯正の治療を受けたいけれどレーシックなどの角膜を削ってしまう治療に抵抗があった方も多いかと思います。ICLは万が一の場合にもやり直しがきくという点で、そういった方々にも選択していただきやすくなっています。
角膜を傷つけない治療のためドライアイや見え方の質の低下も起こりにくいです。
- ICL治療のメリットを教えてください
- ICL治療を行うことで得られるメリットはやはり、眼鏡やコンタクトレンズに依存せず裸眼で日常生活を送れるようになることです。
コンタクトレンズは角膜の上に装着するいわば「異物」であり、ドライアイやアレルギーなどの原因になることがあります。そういったトラブルが多い方は、長期的にコンタクトレンズを使用し続けることで、重篤な眼の病気を引き起こす可能性があります。
ICL治療では角膜の内側にレンズを挿入するため角膜の表面を傷つけることがありません。またコンタクトレンズのように日々のお手入れも必要ありませんから生活が非常に楽になります。
- ICLを行うリスクはありますか?
- ICL治療は現段階の視力を矯正するものであり、視力低下を止めるわけではありません。
あまり若い時にICLをすると近視が進み、見え方が変わってしまうリスクがあります。逆に40代に差し掛かると今度は老眼が入ってくる可能性があり、これもまた治療後に見え方が変わってしまうリスクとなります。
- ICLは副作用や合併症が生じますか?
- ICL治療後の合併症には、ドライアイ・感染症・グレア・ハロー・白内障・ICLの回転などがあります。術後一時的なドライアイになることがありますが、保湿用の目薬で徐々に改善することが多いです。
また感染症も抗生剤の目薬で予防することができます。暗闇の中で光が非常に眩しく見える「グレア」と呼ばれる現象や、光の周りに輪が見える「ハロー」と呼ばれる現象が起こることがありますが、時間の経過とともに気にならなくなることが多いです。
白内障について、以前はICL治療後に白内障を発症することがありましたが治療の進歩に伴い現在では白内障が起こる可能性は0.49%と非常に稀となっています。
ICLレンズは眼との適合性が高いゆえに眼の動きに合わせて動き、回転してしまうことがあり、乱視の調整が入ったレンズを使用していた場合に見え方が変わってしまうことがあります。レンズが回転してしまった場合には整復術を行いレンズを元の位置に戻すことが可能です。
ICLの治療費用
- ICLの治療費用は高額になりますか?
- ICLは自由診療のため、費用は施設やレンズの種類によって異なりますが両眼で概ね60〜80万円(税込)と高額になります。
しかしコンタクトレンズを使用する場合30年間で120万円(税込)程の費用がかかるといわれているため、長期的に考えるとコンタクトレンズよりICLの方が費用が抑えられる可能性があります。
レンズは近視だけの場合より、乱視に対応したレンズの方が高額になりますので医療機関で確認してみてください。また費用にはアフターフォローの診療費などが含まれている場合が多いです。
- ICLは保険適用になりますか?
- ICLは公的医療保険の適用にはなりません。また高額医療費制度(1箇所の医療施設に支払った医療費が一定の額を超えた時に、支払額の一部が払い戻される制度)の対象外です。
高額なICLの費用を少しでも抑えるために「医療費控除」をすることが考えられます。医療費控除とは1月から12月までの医療費が10万円(税込)を超えた時に確定申告をすることで、納めた税金が戻ってくる制度です。
申請には領収書が必要となりますので捨てないように保管しておくことをおすすめします。
編集部まとめ
この記事ではICLの特徴やメリットとデメリット、レーシックとの違いなどについてお伝えしました。
ICLは2010年に厚生労働省によって認可された新しい視力矯正手術で、年々治療される方が増加しています。レンズを眼内に挿入することで視力を矯正する手術で、日帰り手術が可能です。
レンズを挿入する位置によって「前房型」「後房型」に分けられますが、合併症のリスクが低いため後房型が主流となっています。レンズの種類によって乱視や老眼にも対応しています。
同じく視力矯正手術であるレーシックとの最大の違いは角膜を傷つけず、万が一の場合に手術前の状態に戻すことができる点です。視力矯正手術を受けたいけれどレーシックには抵抗があった方にも、安心して選択できる治療です。
また角膜を傷つけないことで、副作用であるドライアイや見え方の質の低下が起こりにくくなっています。 角膜が薄い、近視や遠視が強すぎるなどのレーシックの適応でない場合も、ICLは受けられることがあります。
合併症として挙げられるのはドライアイ・グレア・ハロー・感染症・ICLレンズの回転などです。またデメリットとして近視や老眼が進行している時に治療を受けてしまうとその後レンズが合わなくなってしまい見え方が変わることがあるので、治療を受けるタイミングは慎重に検討する必要があります。
ICL治療を行うことで眼鏡やコンタクトレンズに依存せずに済み、日々の生活の質が向上する可能性があります。メリットとデメリット両方をよく理解した上で検討してみてください。
参考文献