緑内障は、中途失明原因1位の眼疾患です。きちんと治療すれば失明に至ることはほとんどないのに、治療が遅れる方が多いため失明率はなかなか下がらないといわれています。
なぜ、発見が遅れるのでしょうか。それは、人は両眼で物を見ているからです。悪い方の眼をもう片方が補い、両眼では普通に見えてしまいます。
緑内障の進行は非常にゆっくりで、痛みも自覚症状もありません。これらが、緑内障が「サイレントキラー」と呼ばれる所以でしょう。
今回は、緑内障について病院選びのポイントまでを詳しく解説します。自分の視力を最後まで守りたい方はぜひ本記事を参考にしてください。
緑内障の種類
緑内障には、多くの種類がありますが、大きく分けると以下の3つに分類されます。
- 原因がはっきり分からない原発性緑内障
- ほかの病気に引き続いて起こる続発性緑内障
- 先天的な隅角異常のため起こる発達緑内障
「原発性」というのはほかに理由となる病気がない、または原因不明の場合を指します。
「続発性」というのはほかに原因疾患があり、2次的に引き起こされたものという意味です。緑内障の種類について以下で詳しく説明しましょう。
原発開放隅角緑内障
隅角が大きく開いているタイプで、緑内障の90%を占めます。房水の出口である線維柱帯が徐々に目詰まりすることによって水の流れが悪くなり、少しずつ眼圧が上昇するのです。
また、眼圧の違いによって2種類に細分化されます。眼圧が20mmHgより高いものを「高眼圧緑内障」、眼圧が20mmHg以下の正常範囲のものを「正常眼圧緑内障」と呼びます。
原発閉塞隅角緑内障
隅角が狭くなっている緑内障のタイプです。隅角が狭くなり、線維柱帯が塞がって房水の流れが妨げられることにより、眼圧が上昇します。
加齢とともに水晶体が厚くなってくることが原因と考えられます。さらに隅角が狭くなり、何らかの機序で完全に隅角が閉じて急性緑内障発作を起こすことがあるため、注意しましょう。
正常眼圧緑内障
緑内障の中で、日本人の多くの人が罹患しているタイプです。初期には視力・眼圧は正常であるため気づきにくいという特徴があります。
症状は、視神経に障害がみられ視野欠損として現れます。ただし両眼に一度に症状が出ることは稀で、両眼で見ているときは視野障害には気づきません。かなり進行してから気づいたときには、両眼の視野を大きく失っていたということもあります。
治療は生涯にわたりますが、毎日きちんと眼圧を下げる目薬を点眼することが大切です。
先天緑内障
発症する確率は低い緑内障ですが、生まれたときから先天的に眼圧が高い緑内障を、先天緑内障と呼びます。子どもにみられることがほとんどです。
先天緑内障は生まれながら目が異常に大きいのが特徴です。原発性の発達緑内障の場合も非常に確率は低くなります。
続発緑内障
何かほかの理由により、続発的に眼圧が上がる緑内障のことです。代表的な原因は以下の2つです。
- ぶどう膜炎
- ステロイド薬剤
ぶどう膜炎により続発緑内障は、炎症が起きた際に、眼の中で白血球などが隅角に詰まることで眼圧が下がらなくなってしまうのです。炎症を抑えるためにステロイド治療することで眼圧は下がります。
ステロイド薬剤が原因で続発緑内障を発症するケースもあります。眼周囲の皮膚に使用している患者さんにみられることが多いです。そのため、ステロイド投与の調節や加減が難しいといわれています。
緑内障の原因
緑内障の原因は、はっきりとはわかっていません。
眼球に一定の張りを与えて形を保たせている圧力のことを「眼圧」といいます。眼球に一定の張りを持たせている役割は「房水」という水分が担っています。
この眼圧によって房水の量が一定に保たれているおかげで、私たちは物をはっきり見ることができます。
房水が生産される量と排出される量のバランスがうまく調節されている場合は、眼圧は一定で問題ありません。
房水の量のバランスが崩れたときに、眼球が空気をパンパンに入れたボールのように張り、眼圧も高い状態になって緑内障が発症します。
また「隅角」と呼ばれる線維柱帯が目詰まりを起こし、うまく房水が流出されないときにも眼圧が上昇すると考えられています。
眼圧は10~20mmHgが正常範囲とされていますが、何らかの原因で20mmHgを大きく上回る状態が続くと視神経に障害が起こります。
しかし、正常眼圧緑内障のように眼圧が正常の範囲にもかかわらず、緑内障を発症します。このようなことから眼圧以外にも原因があるといわれていますが、確証が得られてはいません。
緑内障の症状
緑内障の自覚症状としては、見えない場所(暗点)が出現する、あるいは見える範囲(視野)が欠けてくるが挙げられます。
しかし、日常生活では両眼で見ているうえ、病気の進行は緩やかです。そのため、初期の段階で視野障害が起こっていたとしても自覚しないことがほとんどです。
突然、何らかの原因により急激に眼圧が著しく上昇し、急性緑内障発作が起こることがあります。この発作が起こると、眼痛・充血・目のかすみ・頭痛や吐き気といった症状が現れます。
場合によっては失明する危険もあるため、急性緑内障発作の場合はすぐに救急車を呼んで眼科を受診してください。
正常眼圧緑内障の場合、視野が徐々に欠けていく視野欠損が現れます。そのため、40歳を過ぎたら視野検査を受けてください。家族に緑内障に罹患している人がいる場合は、30歳を過ぎたら検査を受けましょう。
緑内障の治療
緑内障の治療の目的は、視機能を守ることです。緑内障は眼圧を下げることで進行を遅らせることができます。 緑内障の治療は主に3つの方法で行われます。
- 薬物療法
- レーザー治療
- 手術
それぞれ詳しく説明しましょう。
薬物療法
緑内障の基本的な治療は点眼薬を用いた薬物療法です。緑内障の目薬の役割は以下の2つです。
- 房水の産生を制限する
- 房水の排水を促進する
緑内障の点眼薬には、眼圧を下げる効果のあるものから視神経を保護するものまでさまざまあります。
緑内障のタイプ・重症度・眼圧の高さなどから第一選択薬にて治療を開始します。緑内障の第一選択薬は以下のものです。
- FP受容体作動薬
- β遮断薬
- EP2受容体作動薬
しかし、第一選択薬だけでは効果がないと判断された場合は、第二選択薬と組み合わせて治療を行う場合もあります。
ただし、症状が良くならないからと自己判断で中止しないよう注意してください。
眼圧を下げる飲み薬を処方されることもありますが、副作用が出て内服できない場合もあります。
薬の効果を最大限に活かすためにも、正しく点眼薬はさしましょう。1回に1滴、目頭を指でつまんで1分ほど閉眼します。しばらく眼の表面に薬剤を留まらせることが大切です。
目薬を2種類以上使用している場合は、5分以上間隔を空けてさしてください。
レーザー治療
レーザー照射によって房水の排出を促進したり、房水の通り道を作ることによって水の流れを変えたりすることで眼圧を下げる効果があります。
眼球の中には、毛様体と呼ばれる房水が作られる場所があります。
湧き水のように湧いてきて「隅角」と呼ばれる部位から外に流れ出ており、最終的には体の中の静脈に入り、体の中へ戻っていくという循環を繰り返すのです。
レーザー治療には、主に以下の方法があります。
- 線維柱帯形成術(SLT)
- 虹彩切開術(LI)
- 周辺虹彩切除術(PI)
線維柱帯形成術(SLT)は隅角にある線維柱帯にレーザー照射することで、房水の排出を促進させて眼圧を下げます。
点眼だけでは十分に房水が排出されないような開放隅角緑内障に効果を発揮します。施術時間が短いため、外来で行うことができます。
虹彩切開術(LI)は虹彩(いわゆる茶目)にレーザーで孔を開けて、房水の通り道を作ることによって眼内の水の流れを変える方法です。
隅角が瞳孔に押されて房水の流れが悪化した閉塞隅角緑内障に有効なレーザー治療です。施術は、点眼麻酔の後に専用のコンタクトレンズを装用して行います。
周辺虹彩切除術(PI)は、水晶体と虹彩の間で房水の流れが悪くなっている場合、虹彩に流れ口を作ることで眼圧が下がることを期待して施術します。
虹彩切開術が実施できない場合に行う方法で、急性緑内障発作などに行われます。
手術
手術が必要な場合は、以下のような場合です。
- 眼圧が高くてコントロールができない場合
- 眼圧は正常でも、視野障害が進んでしまい保てないと予想された場合
- ほかの方法を試すも視野障害の進行していしまう場合
- 正常値が10~21mmHgにもかかわらず、10mmHg以下に眼圧下がってしまっている場合
緑内障の手術は、眼圧を下げて進行を抑制することが目的です。薬物療法やレーザー治療では効果があまり現れなかった場合にのみ行われます。
以下に、緑内障の代表的な手術を説明します。
- 低侵襲緑内障手術
- チューブインプラント手術
低侵襲緑内障手術はミグス(MIGS)とも呼ばれ、房水を眼外に染み出すように細工をする手術です。
小さい傷で少ないダメージで施術できるため、体に負担がかかりにくいです。手術時間も短く、日帰りで終わります。
チューブインプラント手術は線維柱帯を切開して房水の排出をたやすくする手術です。
重症の緑内障にも対応できる新しい手術となっています。従来のトラべクトミーと比べて、合併症のリスクが少ないのもメリットです。
上記2つの手術でも眼圧が下がらない場合は、一般的な緑内障の手術であるトラベクレクトミー(線維柱帯切除術)を行う必要があります。
緑内障の病院選びのポイント
緑内障の早期発見・早期治療につなげるためにも、緑内障に詳しい専門の医師がいる病院に定期検診に行くことが大切です。
また、緑内障は患者さんと眼科専門の医師の連携によって長きにわたる治療が必要な病気です。ここからは、緑内障で眼科を選ぶポイントについて説明しましょう。
日本眼科学会認定眼科専門の医師が診療している病院を選ぶ
できるだけ高い技術力や実績を重視するなら、日本眼科学会認定の眼科専門の医師というのは1つの判断基準になります。
日本眼科学会には、1万名を超える高水準の眼科専門の医師が所属しています。緑内障は1人ひとりの症状が異なるため、さまざまな症例をみてきた眼科専門の医師なら自分に合った治療法を提案してもらえるでしょう。
公式サイトで検索すれば、眼科専門の医師の診療実績や経歴についても紹介されているため、参考にしてみてください。
緑内障手術の実績が多い病院を選ぶ
緑内障の手術を受けるときは、少しでも不安を軽減させるため治療実績や症例数が多い病院を選ぶのがポイントです。
目安としては、緑内障手術の実績が多い病院を選ぶと良いでしょう。
たとえば、トラベクレクトミー手術の場合は、眼圧調整や抜糸など術後の管理が必要になります。
緑内障は手術をしても眼の寿命を延ばすだけで治るわけではありません。成功して終わったとしても、予後の状態によっては再手術が必要になる場合もあります。
緑内障を専門にみてくれる医師のいる病院なら、手術だけでなく術後の管理も安心できるポイントといえるでしょう。
緑内障手術の前後を同じ医師が担当してくれる病院を選ぶ
手術前から患者さんの眼の状態を把握している眼科専門の医師が手術を担当してくれると、心理的にも安心です。
薬の引継ぎや術前術後の患者さんの状態も熟知しているため、コミュニケーションがスムーズです。
緑内障という根治が難しい眼疾患を抱えた患者さんに医師り添い、治療や症状などの悩みを共有してくれるような医師であれば、より一層心強いでしょう。
十分な説明をしてくれる病院を選ぶ
十分な説明をしてくれるかどうかも病院選びの重要なポイントです。
緑内障の種類は多く、正しく治療を進めるためにも医師の説明は必要不可欠です。
また、緑内障は根治する病気ではないため、通院や検査、治療など費用面で不安を持っている患者さんもいるでしょう。
緑内障は、検査・治療・手術ともに保険適用です。緑内障の検査費用は3割負担の場合で、約1,500円〜4,000円となります。
緑内障の説明をはじめ、現状や治療の進め方・費用など、丁寧に説明を行ってくれる病院は安心といえるでしょう。
新しい医療機器を導入している病院を選ぶ
新しい医療機器など設備の整った病院で検診を受けると、早い段階で症状に合ったより良い治療を受けられます。
たとえば「光干渉断層計(OCT)」は、網膜の断層写真の中で神経のダメージを色づけしてくれる機能がある新しい機器です。
緑内障の種類を決めて治療方針を考えるために、OCTを使った眼底検査は欠かせません。OCTは網膜の血液の循環状態まで把握することが可能になり、緑内障の経過観察において欠かせません。
このような新しい医療機器を導入している病院なら、緑内障だけでなく黄斑疾患などさまざまな眼疾患の早期発見や精密検査が可能になり安心でしょう。
感染対策が十分にされている病院を選ぶ
眼科での手術は角膜が剥き出しになるため、あらゆる細菌やウイルスの影響を受けやすくなっています。
空気中には多くの塵や埃、細菌やウイルスが漂っています。日本眼科医会によると、新型コロナウイルスは、結膜炎を併発する可能性があるとの報告もあります。
感染対策が十分されていて、衛生面でも安心・安全な病院を選ぶようにしましょう。緑内障の病院選びの際は、以下のポイントを参考にしてみてください。
- 手術室は空気清浄されているか
- 手術器具や用具の洗浄・滅菌が徹底されているか
- 眼圧計のチップ先端・眼粘膜に接触する器具はアルコール消毒されているか
- 視力検査で用いるメガネ枠や機器の顔が接触する部分は患者さんごとにアルコール清拭しているか
- 患者さんの目や顔を触る医療従事者は患者さんごとに手指消毒または手袋を交換しているか
アフターケアがしっかりしている病院を選ぶ
術後のアフターケアがしっかりしているのかも大切な選択基準です。手術を受けて終わりではありません。
術後の予後を良い状態で保つためには、生活指導がされている・相談できる環境などのアフターケアが整っていることです。
術後も術前と変わらず快適に生活ができるよう、しっかりサポートされている病院を見つけてみてください。
まとめ
40歳以上の日本人の20人に1人が罹患している緑内障ですが、緑内障の失明率はかなり低く、適切に治療を受ければ問題ありません。
発症したからといってあまり怖がらず、今回紹介した病院選びを参考に自分に合った眼科を見つけてみてください。
また、眼圧を下げるために効果的なことは2つです。1つ目は、血流を確保することです。煙草を吸うだけで血管を細くして血流が低下し滞らせてしまいます。
そのため喫煙の習慣がある方は、これを機に禁煙・卒煙を目指してみましょう。
2つ目は、動脈硬化を防止することです。血管がなるべく老化しないために、血中のLDLコレステロールが上がったり、動脈硬化を起こしたりする食べ物を摂り過ぎないように注意しましょう。
眼の健康寿命を延ばすことで、生涯にわたって視野と視力を保つことが可能です。
早期発見・早期治療を行うためにも、たとえ自覚症状がなくても定期検診を受けましょう。
参考文献