「レーシック」は、近視・遠視・乱視などの視力の低下を改善するための手術です。レーシック手術を行うことで、視力が回復し裸眼でも見えるようになる可能性があります。
レーシック手術は手術時間が短いうえに、早期で視力の回復が得られることから、日本で広く普及している治療法です。
今回の記事では、レーシック手術で視力が戻る仕組み・手術の手順・術後の合併症のリスクなどについて詳しく解説します。
レーシック手術で視力矯正をしたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
レーシックの仕組み
- レーシックとはどのような治療法ですか?
- レーシックは屈折矯正手術の1つで、目の表面にある角膜をレーザーで照射することで屈折異常を矯正する手術です。
なお、屈折異常とは近視・遠視・乱視によって、目の奥にある網膜にピントが合わず見えているものがぼやける現象のことをいいます。
また、屈折矯正手術にはレーシックのほか、人工のレンズを目の中に移植する「phakic IOL」、目の中にある水晶体を人工のレンズに取り換える「白内障手術」があります。
- レーシック手術で視力が戻る仕組みを教えてください。
- レーシック手術では、近視・遠視・乱視の原因となる角膜形状の歪みを修正することで、視力を回復させます。レーザーで角膜の一部を切除し、形状を変えます。
これにより光が正確に網膜に焦点に当たるようになるため、ぼやけていた現象が改善され、クリアに見えるようになるのです。
- レーシック手術はどのような人が受けられますか?
- レーシック手術は一般的に、18歳以上の近視・遠視・乱視の矯正が必要な方に適しています。ただし、これらの矯正が必要なすべての方が受けられるわけではありません。近視の度数が高い・角膜が薄い・白内障があるといった場合は、レーシック手術が禁止されています。
また、妊娠中・授乳中の女性、重度の糖尿病を発症している方なども受けられませんので、別の治療法を検討することが必要です。
さらに、ドライアイのある方・抗精神薬を服用している方・40歳以上の方などもレーシック手術を受けられない可能性があります。医師と十分に相談して治療法を決めると良いでしょう。
- レーシック手術を行うとどのくらい視力が回復しますか?
- レーシック手術による視力回復は個人差がありますが、多くの患者さんが術後に視力向上を実感できるといわれています。
レーシック手術に関する研究によると、レーシック手術をした患者さんのうち、9割の方が裸眼視力1.0以上を達成したと報告されています。レーシック手術は100%の視力回復が保証されるわけではありませんが、高い満足度を得られる手術といえるでしょう。
なお、どのくらい視力が回復するのかについて不安に感じる方は、医師に相談することをおすすめします。
レーシック手術の手順や合併症
- レーシック手術の手順を教えてください。
- レーシック手術は、適応検査・術前検査・手術の順番で行います。適応検査とは、近視の度数・角膜の形状などを調べて、レーシック手術を行えるかどうかを検査するものです。適用検査で問題ないと判断されたら、術前検査を行い手術の日程を決めます。
レーシック手術の手順は以下のとおりです。- 点眼麻酔
- フラップの作成
- フラップをめくり、レーザーを照射
- フラップを戻す
まず、目の表面に麻酔をかける点眼麻酔をして、角膜の表面にフラップというフタを作製します。フラップを作製したらフラップをめくり、めくった箇所(角膜実質)にレーザーを照射します。
なお、レーシック手術で使用するレーザーはエキシマレーザーという機器で、角膜のカーブに合わせて切除するものです。
レーザーを照射した後は、フラップを戻し洗浄します。フラップが問題なく接着していたら完了となり、術後は定期的に経過観察を行います。
- レーシック手術のメリット・デメリットを教えてください。
- レーシック手術の大きなメリットは、視力を短時間で改善できることです。レーシック手術は短時間で行えるほか、術後の痛みがないため、患者さんの手術の負担が少ないといえます。
通常、術後は眼鏡・コンタクトレンズが不要になり、裸眼でも生活ができます。しかし、レーシック手術は近視・遠視・乱視に悩んでいるすべての方に適用できるものではありません。
また、レーシック手術を行うとドライアイ・感染症などの合併症が発生するリスクがあるため、注意が必要です。手術を行う前に医師と十分に相談し、リスクを理解したうえで検討することが重要です。
- レーシック手術で合併症が起こることはありますか?
- レーシック手術には合併症のリスクがあります。主な合併症は以下のとおりです。
- ドライアイ
- グレア・ハロー
- 角膜感染症
- 角膜混濁
レーシック手術の際に角膜の神経が一部切断されることが影響して、ドライアイを発症します。
ドライアイは、涙が不足することで目の表面に傷がついたり障害が生じたりする病気です。一般的にドライアイの症状は1週間から3ヶ月程度で改善しますが、個人差があるため、中には長期間にわたり症状が続く方もいるでしょう。目の乾燥が気になる場合は、医師に相談して保湿用の点眼薬を処方してもらうなどの対処をすることが重要です。
また、術後にグレア・ハローが起こることもありますグレア・ハローとは暗いところで光を見たときにまぶしく感じたり、光の周りに光の輪が見えたりする現象です。
症状の程度は個人差があり、夜間の車の運転に支障を来たす場合もあるといわれています。通常は数ヶ月から半年程度で症状が落ち着いてきます。
また、角膜感染症も合併症の1つです。レーシック手術では角膜を切除するため、術後感染症を起こし、重症になると角膜を取り換えなければならない可能性があります。
角膜感染症の発症頻度は低いといわれていますが、万が一発症した場合は速やかに適切な治療を行うことが大切です。
さらに、術後には角膜混濁が起こることがあります。角膜混濁とは、角膜が傷ついたり炎症を起こしたりすることで、白く濁ってしまう病気です。こちらも発症したら医師に相談し、適切な治療を行うことが大切です。
そのほかにも、遠くが見えるように矯正し過ぎた「過矯正」、角膜の中央部が突出して変形してしまう「角膜拡張症」などもあります。
- レーシック手術を行うことでほかの目の治療はできなくなりますか?
- レーシック手術を受けた後も、ほかの目の治療は可能です。例えば、レーシック手術を受けた後に白内障手術ができます。
白内障とは水晶体が白く濁る病気で、加齢とともに発症しやすくなります。レーシック手術を受けた方の中でも強度の近視の方は、後に白内障を発症し、白内障手術を受けるというケースもあるのです。
ただし、レーシック手術を行うとほかの治療に影響があるため、ほかの目の治療を行う際にはレーシック手術を受けたことを医師に伝えることが重要です。
レーシック手術の費用や手術後の通院について
- レーシック手術は自費診療ですか?
- レーシック手術は健康保険の対象外となるため、基本的に自費診療です。手術の費用は医療機関により異なりますが、片眼で数十万円程度(税込)が多いといわれています。
なお、手術の費用には治療に使用するレーザー機器の費用・人件費・消耗品などが含まれています。
さらに、手術の前には検査が必要であることから、検査の費用も含まれているのです。実際の費用は眼科に問い合わせて確認しましょう。
- レーシック手術後の通院は必要ですか?
- レーシック手術後の通院は必要です。なぜなら術後はドライアイ・感染症などの合併症のリスクがあるからです。通常、術後の翌日・1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年の間隔で診察を行います。その後は1年に1回は検査を行うことが望ましいです。
ただし、術後に不具合が生じたり合併症が生じたりした場合は、より短い間隔での受診が必要となる可能性があります。そのため、少しでも目の状態に違和感を覚えたら早めに受診すると良いでしょう。
なお、術後の通院は基本的に手術した眼科が望ましいです。
編集部まとめ
レーシック手術は、視力回復に効果的な治療法の1つです。視力低下の原因となる角膜の歪みをレーザーで修正することで、視力を改善します。
レーシック手術の手順は、はじめに適応検査を行い手術の可否を判断したうえで手術を行います。
手術を受けるにはいくつか条件があるため、近視・遠視・乱視に悩んでいるすべての方が受けられるわけではありません。
さらにレーシック手術は、術後にドライアイ・感染症などの合併症のリスクがあります。 手術を受ける前に医師と相談し、レーシック手術について理解したうえで進めると良いでしょう。
また、レーシック手術は自費治療となるため、手術を受けるにはまとまった資金が必要となります。
手術にかかる費用・治療の内容などは眼科によって異なるため、気になる方は眼科に問い合わせてみましょう。
参考文献