緑内障は失明の原因となる病気の1つです。「若いからまだ大丈夫」と思う人もいるでしょう。しかし、40歳代の20人に1人がかかっているといわれています。
誰もがかかる可能性がある緑内障ですが明らかな原因は不明で、初期のうちは無症状なのが特徴です。
自覚症状が現れるときにはかなり進行しているのでなるべく早期に発見したいところです。
また同じ緑内障の中でもステロイド薬を使用することで起こるステロイド緑内障という病気があり、こちらも早期発見が病気の進行を遅らせるのに重要なことが判明しています。
この記事では、緑内障の病態・診断に必要な検査・ステロイド薬の使用によって発症するステロイド緑内障についても解説します。
緑内障についての理解を深めて、早期発見につなげていきましょう。
緑内障・ステロイド緑内障の原因や症状
- 緑内障とはどのような病気ですか?
- 緑内障は失明する原因の第一位で、分かりやすくいうと「視野が欠けていく」病気です。
目の中には房水という水分が含まれていて、この房水が眼球の中を流れているため目は球形をしています。目の中が房水でパンパンに膨らんでしまって固くなっている状態のことを「眼圧が高い」といいます。
緑内障は眼圧が高くなることで目と脳をつないでいる視神経が障害されて視野が狭窄・欠損する病気です。緑内障は、下記の3種類に分類されます。- 原発緑内障
- 続発緑内障
- 発達緑内障
続発緑内障は、眼科の疾患や眼科以外の疾患が原因で眼圧が上がる緑内障です。続発緑内障の原因となる眼科の疾患は主にぶどう膜炎・目の怪我・目の手術後です。
眼科以外の疾患では糖尿病・脳疾患・薬の副作用が原因で眼圧が上がって発症します。中でも、ステロイド薬の使用によって発症する緑内障をステロイド緑内障といいます。ほかに眼圧が上がる原因はなく発症する緑内障は原発緑内障です。
原発緑内障は下記の2種類があります。- 開放隅角緑内障
- 閉塞隅角緑内障
開放隅角緑内障は房水の出口である隅角という部分が広いために、徐々に進行していくのが特徴です。眼圧の上昇は軽度で、慢性緑内障とも呼ばれ、原発緑内障の中でも患者さんが多いです。
対して、閉塞隅角緑内障は房水の出口に当たる隅角が閉塞してしまうため、急激に眼圧が上がります。これを急性緑内障発作といいます。
そして、閉塞隅角緑内障は治療が遅れると失明をしてしまう恐れがあり注意が必要です。発達緑内障は生まれつき眼圧が高かったり、生まれてから眼圧が上がったりする子どもの緑内障です。ほとんどの場合が1歳になるまでに発症しています。続発緑内障・原発緑内障は40歳以上の人の20人に1人が発症し、年齢が上がるほど頻度は高くなります。
- 緑内障の症状について教えてください。
- 緑内障の主な症状は視野欠損ですが、初期のうちは無症状である場合が多いです。痛みはなく、視力も低下しないので日常生活への負担はありません。
8割の方は気が付かないうちに視野が欠損してしまうのが緑内障の特徴であることを覚えていてください。なぜならば、私たちは普段ものを両目で見ているからです。左右どちらかの目に視野が欠損している部分があっても、反対側の目で見えてしまうので視野欠損に気が付きにくいのです。
緑内障が進行して視野が極度に狭くなったとしても、片目が見えていれは気が付くことができません。また、高齢者の場合は上部の視野が欠損しても上まぶたが下がっていて気が付きにくいこともあります。そして、閉塞隅角緑内障は急激に眼圧が上昇してしまうことがあります。
これを急性緑内障発作といい、激しい眼の痛み・頭痛・吐き気・嘔吐・目のかすみ・充血といった症状が現れるのです。急性緑内障発作が起こった場合は、視神経が急激に障害されるため速やかに治療をして眼圧を下げなければなりません。
- 緑内障の原因について教えてください。
- 緑内障は これといった原因は不明です。眼圧が高い状態が続いて視神経が障害されることで緑内障を発症しますが、眼圧が高くないのに緑内障を発症してしまうことがあります。そこで眼圧以外に緑内障の原因が考えられるようになりました。
視神経が弱い・血流量の異常・免疫異常・視神経にとって毒になる物質が存在することなどが考えられていますが、原因として解明されていません。また、家族歴・遺伝・生活習慣・近視などのさまざまな要因も原因ではないかと考えられています。
- ステロイドが原因で緑内障になることがあるのですか?
- 長期的にステロイドホルモンが含まれる薬物を使用すると、その副作用で房水の流れが障害されて眼圧が上がります。これをステロイド緑内障といいます。ステロイド薬の使用が原因で起こる続発性緑内障ですが、病態は原発性開放隅角緑内障と同様です。
緩やかに進行して、ステロイド薬の使用を中止すれば眼圧が下がることも多いです。ステロイド緑内障は内服・点滴などの全身投与に比べて、点眼・軟膏など特定の部位に使用する局所投与で起こりやすくなります。
ステロイド点眼薬・軟膏はぶどう膜炎・アレルギー性結膜炎・アトピー性皮膚炎などさまざまな疾患で処方されるので、長期的に使用する場合には定期的な検査が欠かせません。
- ステロイド緑内障はステロイド内服薬の服用でも発症するのですか?
- ステロイドの内服薬もステロイド緑内障を発症する可能性があります。内服だけではなく点滴でも発症します。
投薬してから数週間以内に発症するといわれており、ステロイド緑内障を発症した後のステロイド薬の投薬については医師の指示を仰いでください。なぜなら、ステロイドホルモンは副腎と呼ばれる組織で作られるホルモンで、普段は一定の量が分泌されます。
しかし、長期間治療のために副腎から分泌されるより多くの量を内服や点滴によって摂取すると、副腎からステロイドホルモンは分泌されなくなるのです。急に投薬をやめてしまうと体内のステロイドホルモンが不足してしまって、倦怠感・吐き気・頭痛などの症状がみられます。これをステロイド離脱症候群といいます。
ステロイド緑内障を発症してしまったら、ステロイド薬は自己判断で中止せずに医師の指示に従ってください。
緑内障・ステロイド緑内障の検査や治療方法
- 緑内障が疑われる場合どのような検査を行いますか?
- 緑内障の早期発見に検査は非常に重要です。診断されたあとも、緑内障の進行具合・治療の効果をみるために検査は欠かすことができません。
緑内障が疑われる場合に行われる検査は下記の5つです。いずれも痛みを伴う検査ではありません。それぞれについて詳しくみていきましょう。- 眼圧検査
- 眼底検査
- 視野検査
- 隅角検査
- 画像解析検査
眼圧検査は目の硬さを調べる検査です。眼に空気を当てて測定する非接触型・眼に直接機械を当てる接触型の2種類の方法があります。眼底検査は視神経の障害について調べる検査です。
緑内障の場合は視神経乳頭という部位の凹みが広がります。また、視神経乳頭の出血の有無・網膜神経線維層の欠損の有無を確認できます。視野検査は視野の範囲を調べる検査で、緑内障の進行具合を調べるのに欠かせない検査です。
隅角検査は検査専用のコンタクトレンズを使って隅角の様子を調べる検査です。緑内障の診断の他に、眼圧上昇の原因特定・病型の判断をする目的で行います。解析検査は視神経乳頭・視神経線維層の形状を解析して緑内障の進行の度合いをみる検査です。
- ステロイド緑内障の治療方法について教えてください。
- ステロイド薬によって発症した緑内障は、ステロイド薬の使用を休止することで眼圧が下がります。しかし、眼圧・眼底・視野狭窄の程度によっては抗緑内障薬の点眼・炭酸脱水酵素阻害薬を服用することもあります。
薬物療法を行っても改善しない場合は手術療法を考慮することもあるので医師の指示に従って治療を行いましょう。
緑内障・ステロイド緑内障の早期発見や予防法
- ステロイド緑内障になりやすいのはどのような人ですか?
- ステロイド薬を長期間・高頻度において使用している患者さんはステロイド緑内障になりやすいです。その中でも原発開放隅角緑内障の患者さんとその近親者・糖尿病の患者さん・強度の近視がある患者さん・膠原病の患者さん・子どもはステロイド緑内障のリスクが高いといわれているのです。
また、ステロイド緑内障の原因となるステロイド薬はベタメタゾン・デキサメタゾン・プレドニゾロン・トリアムシノロン・ヒドロコルチゾンなどが挙げられます。ステロイド薬を使用している患者さんは、定期的に眼科を受診して眼圧が上昇していないか調べることをおすすめします。
- 緑内障を早期発見するにはどうしたらよいですか?
- 緑内障は初期のうちは症状がなく、気が付かないうちに進行してしまう恐れがある病気です。早期発見するためには次の3つの方法をおすすめします。
- 健康診断を受ける
- 眼科を受診するときは緑内障について尋ねる
- 定期的に検査を受ける
緑内障を早期発見するためには健康診断を受けることをおすすめします。人間ドック・職場で行う定期健診・自治体等の特定健診では眼底検査が受けられる場合があります。日本緑内障学会の調査で、健康診断で緑内障が見つかった人のうち約90%は緑内障に気が付いていないことが分かりました。
眼底検査で緑内障の疑いを判定できるので、眼底検査の含まれた健診を受けましょう。メガネやコンタクトレンズを作るときや、充血・目やに・痒みなどの症状で眼科を受診する際に緑内障がないかを相談することも早期発見につながります。
今はまだ緑内障の疑いがなくても、年齢が上昇するにつれて緑内障の罹患率は上昇します。早期発見のためにも健康診断・眼科で定期的に検査を受けましょう。
- 緑内障の予防法を教えてください。
- 残念ながら、緑内障には特にこれといった予防法はありません。視神経が障害される原因が明らかになっていないためです。緑内障は初期は無症状なので症状が出るころにはかなり悪化している場合が多く、手術が必要になることがあります。
そうならないためにも早期発見が非常に重要です。早期発見にはやはり定期的に眼底検査を含んだ健康診断・眼科の受診が一番です。40歳以上の方は半年から1年に一度は検査を受けることをおすすめします。また、糖尿病の患者さんは緑内障にかかるリスクが高いといわれています。糖尿病を予防するためにも規則正しい生活を心がけましょう。
編集部まとめ
緑内障は珍しいものではなく40歳代の20人に1人がかかっている病気です。年齢が上がるにつれ発症する割合が高くなります。
眼圧が高くなることで視神経が障害される病気で、初期は無症状で、気が付かないうちに進行して視野が狭窄していきます。そして、失明する恐れもあり早期発見が非常に重要です。
緑内障の診断に必要な検査は痛みを伴いません。なので、定期的に眼底検査を含んだ健康診断を受けたり、眼科を受診する際には緑内障について相談したりしましょう。
また、ステロイド薬を長期間使用することでステロイド緑内障を発症しやすくなります。
ステロイド薬を使用する際には医師の指示に従って定期的に眼科を受診し、ステロイド緑内障の発症を予防しましょう。
参考文献