ICL手術は、視力矯正の新たな選択肢として注目を集めています。レーシックのように角膜を削ることなく、眼に特殊なレンズを挿入して視力を改善するこの方法は、従来の治療法とは異なるメリットがあるため、興味を持っている方も少なくないでしょう。
一方で、「やめた方がいい」という意見も聞かれます。本記事では、なぜICL手術がやめた方がいいといわれるのか、その理由や手術に関する重要なポイントについて、わかりやすく解説します。
ICL手術をやめた方がいいといわれる理由
ここではまず、ICL手術をやめた方がいいといわれる理由について説明します。
- ICL手術にはどのようなリスクがありますか?
- ICL手術の代表的なリスクとして、術後の感染症や合併症が挙げられます。特に、術前や術中の管理が適切でない場合や、執刀医の経験不足、手術環境が整っていない場合にリスクが高まることがあります。
感染症が発生した場合、迅速な対応をしなければ視力の回復が難しくなることもあります。そのため、医療施設や医師選びがとても重要なポイントです。
- ICL手術を受けることで生じるデメリットを教えてください
- ICL手術にはいくつかのデメリットがあります。
まず、治療費が高額で、レーシック手術よりもコストがかかる傾向にあります。一般的には30~50万円程度が必要とされるため、手術費用を事前に把握しておくことが大切です。
また、手術に使用するレンズは患者さんごとにオーダーメイドになるため、国内在庫がない場合には海外から取り寄せる必要があり、手術までの待機期間が発生することもあります。この点はスケジュールに余裕を持って考える必要があります。
さらに、上述のとおり、外科的な手術である以上合併症などのリスクもゼロではありません。特に、視力が安定しない方や既往症のある方にとっては慎重な判断が求められます。
- ICL手術を一度受けると眼はもとの状態には戻せませんか?
- レーシック手術の場合、角膜を直接削って視力を回復させるため、一度削った角膜をもとに戻すことはできません。一方、ICL手術は角膜を削らずに眼内にレンズを挿入するため、ある程度眼の状態をもとに戻すことが可能です。
手術の際には、レンズを挿入するために約3mmの切開が必要ですが、この切開創は小さく、将来的にレンズを取り出すことも可能です。ただし、再手術やレンズの取り出しにもリスクが伴うため、事前に医師との十分な相談が必要です。
ICL手術の適応条件
ICL手術は、視力矯正を目的とした高度な手術ですが、適応条件を満たしていなければ安全かつ効果的な治療ができません。手術を検討する際は、自身が条件に合致しているかを確認しましょう。
- ICL手術の適応条件を教えてください
- ICL手術を受けるには、以下の条件を満たしている必要があります。
・年齢
18歳以上の方が対象で、未成年の場合は保護者の同意が必要です。ただし、20歳前後までは眼の度数が安定しないことがあるため、原則として21歳以上が推奨されています。また、年齢上限はありませんが、加齢に伴う水晶体の変化を考慮し、45歳くらいまでが望ましいとされています。
・視力の度数
-6.0D以上の強度近視が一般的な対象です。-3.0D以上-6.0D未満の中等度近視や、-15.0D以上の強い近視の場合は、慎重な判断が必要です。
・角膜内皮細胞密度
規定値以上の細胞密度が必要です。これは角膜の健康状態を保つための重要な条件となります。
・前房深度
角膜と水晶体の距離が2.8mm以上であることが求められます。この距離が十分でない場合、安全にレンズを挿入できない可能性があります。
・視力の安定性
術前1年以内の視力に、大きな変化がないことが条件です。視力が安定していない場合、手術後の効果が持続しない可能性があります。
- 妊娠中でもICL手術を受けられますか?
- 妊娠中および授乳中の方は、ホルモンバランスの影響で視力が一時的に変動する可能性があるため、手術は受けられません。このほか、前房深度が2.8mm未満の場合や全身疾患や眼疾患があり、医師が不適切と判断した場合も、手術はできません。
- 全身疾患がある場合、ICL手術を受けることによるリスクはありますか?
- 全身疾患がある場合、手術の安全性や術後の回復に影響が出る可能性があります。特に糖尿病や免疫疾患などは、感染症リスクや合併症を高めることが知られています。
このようなケースでは、医師が慎重にリスクを評価し、安全が確保できないと判断した場合には手術を断られることもあります。
ICL手術後のリスクと注意点
手術後の経過やケアにはいくつかの注意点があります。それらをしっかり守ることで、より安心してICL手術後の生活を楽しむことができます。
- ICL手術後の合併症にはどのようなものがありますか?
- ICL手術は安全性が高いとされていますが、それでも以下のような合併症がごくまれに発生することがあります。
・感染症(眼内炎)
手術時に作る小さな切開部から細菌が侵入し、術後眼内炎という感染症が起こることがあります。しかしこの確率は低く、0.02%程度とされています。
・眼圧上昇・緑内障
ICLを挿入すると虹彩が角膜側に押され、房水の流れが悪くなることがあります。ただし、これは古いタイプのレンズを使用した場合に限られるケースです。
・白内障
レンズが水晶体に接触することで白内障が発生する場合があります。大変稀なケースですが、視力が低下した場合には白内障手術が必要になることもあります。
・ハロー・グレア
暗い場所や夜間の光の見え方が変わることがあります。光がぼやけて見えるハローや、眩しさを感じるグレアが代表的な症状です。これらの症状は時間が経つと気にならなくなる場合がほとんどですが、長引く場合もあるため、医師と相談しながら経過を観察してください。
- ICL手術後に必要なケアを教えてください
- ICL手術後は、視力が安定するまでの間、適切なケアが大切です。
手術翌日には必ず検診を受ける必要があるため、手術当日と翌日は予定を空けておくことをおすすめします。その後も視力が完全に安定するまで、1年間にわたって定期的な検診が必要です。
手術当日は制限が多く、特に帰宅時に車や自転車の運転はできません。シャワーやスキンケアは可能ですが、入浴や顔を洗う際には目元を濡らさないよう注意が必要です。
お風呂や洗顔・洗髪が自由にできるのは、術後1週間が目安とされています。また、目元のメイクやスキンケアも、手術後1週間は控えましょう。
- ICL手術後の運動はいつから可能ですか?
- 運動の再開タイミングは、運動の種類によって異なります。
ジョギングやゴルフなど軽い運動は術後1週間後から始められますが、水泳や激しいスポーツは1ヵ月間控える必要があります。運動を再開するタイミングや注意点は個人差があるため、必ず医師に相談してから始めるようにしましょう。
編集部まとめ
ICL手術は、視力矯正の新たな選択肢として注目されていますが、「やめた方がいい」と言われる理由についても理解しておくことが大切です。
手術には適応条件があり、視力や目の状態が安定していなければ受けられない場合があります。また、術後には感染症やハロー、グレアといったリスクも少なからず存在します。 これらの点を踏まえ、手術前には十分な情報収集と医師との相談を行い、自分に合った選択をすることが重要です。
参考文献