ICL(Implantable Collamer Lens)手術は、近視や乱視などの屈折異常を眼内にレンズを挿入して矯正する手術方法です。近年、レーシック(LASIK)に代わる新たな選択肢として注目されており、その術後の見え方の質の高さや満足度の高さ、近視が戻りにくいことなどから国内の視力矯正手術の主役となりつつあります。20代〜30代の若い世代でもICL手術を検討する方が増えており、実績は世界で300万件以上、日本でも年々手術件数が増加しています。本記事では、ICL手術を検討中の方に向けて、ICL手術とはどのような手術か、その流れ、手術後の見え方はどう変わるのか、術後によく起こる症状とその対処法を解説します。
ICLの手術とは
- ICL手術の流れを教えてください
- ICL手術は事前検査から術後ケアまで含めると次のような流れになります。まず手術適応の有無を確認するための詳細な検査を受け、目の形状や度数に合ったICLレンズをオーダーメイドで準備します。当日は日帰り手術が可能です。点眼麻酔で目の感覚を麻痺させ、黒目の縁を約3mmだけ小さく切開します。そこから折りたたんだICLレンズを専用の挿入器具で眼内に挿入し、虹彩と水晶体の間の所定の位置にレンズを広げて固定します。レンズが正しく収まったら、必要に応じて瞳孔を縮める薬を投与し、手術は完了です。
片眼わずか数分程度の短時間で終了します。手術直後からある程度見えており、しばらく安静にした後、医師の診察を受けて問題なければ当日中に自宅へ帰ることができます。なお基本的には両目同日に手術を行うことが多いですが、状況によって片眼ずつ行う場合もあります。
- ICL手術後はどのような制限がありますか?
- ICL手術は入院不要の手軽な手術ですが、術後しばらくは目を安静に保ち合併症を防ぐためにいくつか生活上の制限があります。以下に主な制限事項の例を挙げます。
- 入浴・洗顔
手術当日は顔を濡らせません。身体(首から下)のシャワーは翌日から可能ですが、顔や髪は術後3日間は濡らさないようにし、顔拭き程度に留めます。
洗顔・洗髪は基本的に術後4~7日目から許可されることが一般的です。 - 運転
視力が安定すれば翌日から運転可能です。 - 化粧
目元以外のメイクは術後4~7日目から可能です。アイメイク(アイシャドウ・アイライナーなど)やまつ毛エクステは1ヶ月程度控えるよう指示されるのが一般的です。 - 運動
軽い散歩程度であれば数日後から問題ありませんが、ジョギングやゴルフなど身体を大きく動かす運動は術後1週間程度控えてください。特に、水泳やダイビングなど水中競技は術後少なくとも1ヶ月は禁止です。プールや温泉も医師の許可が出るまで避けましょう。
以上の制限はあくまで一般的な目安で、患者さん個々の状態によって主治医の指示が優先されます。医師から示された術後指導を守ることで、感染症や合併症のリスクを大幅に減らすことができます。
- 入浴・洗顔
- ICL手術後は普通の生活に戻れるまでどのくらい時間がかかりますか?
- 個人差はありますが、多くの患者さんは手術の翌日には日常生活の大半をこなせる視力が得られます。例えば、デスクワークや軽い家事であれば翌日から無理なく始められるでしょう。ただし、目に負担のかかる活動や汚れやすい環境での作業は医師の許可が出るまで避けてください。一般的に1週間も経てばほとんどの制限が解除され、普段どおりの生活を送れるようになります。とはいえ、目の状態が完全に安定するまで数日〜1週間程度かかるケースもありますので、焦らず主治医の指示にしたがって経過を見守りましょう。もし違和感が続く場合は、無理に日常生活を急がず眼科で相談してください。
ICL手術後の見え方の変化
- ICLの手術後すぐに視力が回復しますか?
- 完全にクリアな視界が手術直後に得られるわけではありませんが、回復はとても速いです。手術直後は麻酔の影響や眼内に注入した液の影響で少し霞んで見える状態になります。数時間安静にすると徐々に視界がクリアになり、当日夜には裸眼でも生活できる程度になることも多いです。ただし、ごくまれに個人差で視力が完全に安定するまで数日〜1週間程度要する場合もあります。焦らず指示された点眼や休養を守れば、基本的には短期間で良好な裸眼視力を獲得できるでしょう。
- ICL手術後の見え方の特徴を教えてください
- ICL手術後の見え方にはいくつか特徴的な点があります。まず、裸眼とは思えないほどはっきり見えると感じる方が多いです。ICLレンズは高い光学性能を持ち、角膜を通した屈折矯正よりもコントラスト感度や鮮明さで優れるケースがあります。一方で、暗所や夜間での見え方に一時的な違和感を覚えることがあります。それがハロー・グレア現象です。これは暗い場所で光源の周りに輪がかかって見えたり、街灯や車のライトがまぶしく滲んで見える現象で、ICLレンズの構造上、術後しばらく出現する場合があります。この症状はほとんどの場合で時間の経過とともに軽減し、数ヶ月程度で気にならなくなるとされています。
- ICL手術後は眼鏡やコンタクトなしで生活ができますか?
- はい、多くの方がICL手術後は眼鏡やコンタクトに頼らない生活を送れます。ICL手術の目的自体が裸眼視力の向上にありますので、適切な度数のレンズを挿入すれば、術前に矯正視力1.0が出ていた方であれば術後もほぼそのレベルの裸眼視力が期待できます。ただし、わずかに近視や乱視が残るケースでは夜間の運転時などに念のためメガネを使用することをすすめられることもあります。また、ICLでは老眼は矯正できないため、40代以降になって手元が見えにくくなった場合は老眼鏡が必要になる点には留意しましょう。
- ICL手術後に再び目が悪くなることはありますか?
- 基本的にICL手術で得られた視力は長期的に安定すると考えられています。ICLは角膜を削る手術ではないため、術後に角膜形状の変化による視力低下は起こりにくく、長期間にわたり効果が持続します。加えて、ICLレンズは生体適合性の高い素材で作られており基本的に交換不要かつ半永久的に効果を発揮するとされています。しかしながら、いくつか注意点もあります。まず、人間の目は年齢とともに変化しますので、加齢による視力変化はICLでも避けられません。また、ごくまれにではありますがICLレンズの影響で白内障が早期に生じる例が報告されています。ICL手術後に視力が急激に悪化するようなケースはまれであり、基本的には得られた視力を長く維持できると期待してよいでしょう。
ICL手術後に起きやすい症状と対処法
- ICL手術後はどのようなトラブルが起きやすいですか?
- ICL術後によくみられる代表的な症状やトラブルには次のようなものがあります。
- ぼやけ・かすみ
手術直後〜翌日にかけては目の中の状態が落ち着いていないため、一時的に視界がぼやけたりかすんで見えることがあります。 - 異物感・ゴロゴロ感
小さな切開創がある影響で、目にゴロゴロとした違和感を覚えることがあります。 - 軽い痛み・充血
麻酔が切れた後、目に軽い痛みやズキズキする感じを覚えることがあります。 - ハロー・グレア
暗い所で光がにじむハローや光がギラつくグレアの症状が出ることがあります。特に夜間の運転時に街灯や対向車のライトが眩しく感じる場合があります。 - ドライアイ
ICL自体は角膜を傷つけないためレーシックほど顕著ではありませんが、手術後しばらくは点眼薬の影響や瞬きの減少で目が乾きやすくなる方もいます。
以上が起きやすい軽度の症状ですが、多くは一時的であり、時間とともに回復していくことが多いです。
- ぼやけ・かすみ
- ICL手術後に違和感や痛みがあった場合の対処法を教えてください
- 術後に何らかの違和感や軽い痛みを感じるのはよくあることなので、まずは落ち着いて対処しましょう。以下に一般的な対処法を挙げます。
- 指示された点眼薬を正しく使う
- 目をこすらない
- 安静と休息をとる
- 冷やした清潔なタオルで軽く冷やす
- 我慢せず医師に相談する
術後の違和感に対しては「様子を見ていい症状か、すぐ受診すべきか」の判断が難しいこともあります。不安な場合は定期検診を待たずに医療機関に問い合わせてみるのが賢明です。「術後○日だがまだ痛みがある」「○○のような症状が出たが大丈夫か」など伝えれば、受診の必要があるか指示してもらえます。大切なのは自己判断で無理をしないことです。ICL手術後のフォロー体制はクリニックごとに整っているはずですので、不安なことは遠慮なく質問し、適切な助言を受けてください。
編集部まとめ
ICL手術は、角膜を削らずに視力を矯正できる方法であり、20〜30代の若い世代にも人気が高まっています。手術自体は短時間で痛みも少なく、安全性の高いものですが、術後の経過について正しく理解しケアすることが大切です。
術後は早期に視力が回復し、多くの方が裸眼で快適に生活できるようになります。見え方も自然で鮮明なことが特徴ですが、夜間のハロー・グレアなど最初は多少の違和感が生じる場合もあります。しかし、これらの症状の多くは一時的で、適切な対処と時間の経過により落ち着いていきます。重篤な合併症はまれですが、定期検診を怠らず、少しでも異常を感じたら専門医に相談することで、万一のトラブルにも早期対応できます。
ICL手術後の見え方の変化や症状について十分理解し、正しいケアを行えば、裸眼のクリアな視界という大きなメリットを長く享受できるでしょう。手術を検討中の方は、ぜひ信頼できる眼科専門医とよく相談し、不安を解消したうえで適切な方法を選択してください。
参考文献