視界がかすんだり、黒い点が飛んで見えたりすることはありませんか。それは、もしかすると硝子体(しょうしたい)出血かもしれません。
硝子体出血とは、目のなかにあるゼリーのような部分に血が広がることで、見え方に変化が出る状態。原因や症状の重さによって、治り方や治療にかかる時間はさまざまです。
この記事では、硝子体出血の症状や原因、どれくらいで治るのかについて、Q&A形式でわかりやすく解説していきます。
硝子体出血の概要
まずここでは、硝子体出血とはどのような状態なのか、起こるとどのような症状が出るのか、またどのような治療が行われるのかなどについて、基本的な情報を整理しておきましょう。
- 硝子体出血とは何ですか?
- 硝子体出血とは、目のなかの硝子体に血液が混じる状態のことです。
硝子体とは、眼球内の大部分を占めるゼリー状の透明な組織で、眼球の形を保ち、光を網膜へと届ける役割を果たしています。この硝子体に、網膜やその周りの血管から出血が起こり、血液が入り込んでしまうのが硝子体出血です。
出血が混ざると、視界がにごったり、ものが見えにくくなったりする原因になります。なお、出血そのものは目の表面ではなく、もっと奥の見えない部分で起こっているため、外見からは判別できません。
- 硝子体出血が起きるとどのような症状が現れますか?
- 視界がかすんだり、黒い点や線のようなものが飛んで見えたり、急に視力が落ちたりすることがあります。
特によく見られるのが、飛蚊症(ひぶんしょう)と呼ばれる症状です。これは、黒い糸くずや点のようなものが目の前をちらちらと飛んで見える状態で、出血によって硝子体のなかに浮かぶ血のかたまりや混濁が原因です。
また、出血量が多い場合には、視野の一部が暗く感じたり、何も見えないような状態になったりすることもあります。ただし、目の痛みを感じることは少なく、気付かないうちに症状が進んでしまうこともあるので注意が必要です。
- 硝子体出血がある場合、どのような治療を行うか教えてください
- まずは出血の原因や広がりを調べるために、超音波検査などを使って詳しく調べます。そのうえで、症状や状態に合わせて治療方針が決まります。
硝子体出血があると、眼底を直接観察することが難しくなるため、超音波断層検査(エコー検査)を使って、目のなかの状態をチェックします。
出血の量が少なければ、特別な治療をしなくても自然に吸収される場合もあり、その場合は安静にして経過を見ることが基本になります。
- 手術が必要になるケースは、どのような場合ですか?
- 出血の量が多くて自然には吸収されにくい場合や、視力への影響が大きい場合は硝子体手術が行われます。
この手術では、目のなかの濁りや血液を取り除いて、視界をクリアに戻すことを目指します。また、手術によって眼底の様子がよく見えるようになることで、必要に応じてレーザー治療などを追加で行うこともできます。
手術を受けるかどうかは、視力の状態や出血の程度、原因となっている病気などをふまえて、医師と相談しながら慎重に判断されます。早めに適切な処置を受けることで、将来的な視力への影響を減らすことにもつながります。
硝子体出血の原因
硝子体出血は、目のなかにある血管が何らかの理由で破れて起こります。その原因はさまざまで、年齢や持病、生活習慣なども関係しています。ここでは、よく見られる原因や注意したい行動について、ひとつずつ見ていきましょう。
- 硝子体出血は生活習慣病による影響がありますか?
- あります。特に糖尿病や高血圧といった生活習慣病は、硝子体出血の大きな原因のひとつです。
例えば、糖尿病が進行すると「糖尿病網膜症」という病気を引き起こすことがあります。これは、網膜の血管がもろくなり、出血しやすくなる病気で、硝子体に血が広がるきっかけになります。
また、高血圧や脂質異常症なども、目の細かい血管にダメージを与え、知らないうちに出血につながってしまうことがあります。こうした生活習慣病は、目のトラブル以外にも全身の健康に関わるため、日頃からの予防と管理がとても大切です。
- 硝子体出血は外傷が原因の場合もありますか?
- 目の外傷(打撲や交通事故、スポーツ中の衝撃など)が原因で出血することもあります。
目に何かがぶつかったり、顔に強い打撃を受けたりすると、目のなかの血管が傷ついて出血してしまうことがあります。特に若い人や子どもでは、けがによる硝子体出血が多く見られる傾向があります。
目にけがをした後は、見た目に異常がなくても視界がにごったり、黒いものが飛んで見えたりしたら、早めに眼科で診てもらうことが大切です。
- 硝子体出血のリスクを高める行為があれば教えてください
- 血圧が急に上がるような行動や、身体に強い負担をかけるような習慣は、出血のリスクを高めます。
例えば、重い荷物を持ち上げたり、トイレで強くいきんだり、激しい咳やくしゃみを繰り返したりすると、目のなかの血管に一時的に強い圧がかかることがあります。また、喫煙や過度の飲酒、慢性的なストレスも、血管の状態を悪化させる要因となります。
もともと血管が弱くなっている人では、こうした負担がきっかけで出血を起こしてしまうこともあるため、生活のなかでちょっとした注意を払うことが、目の健康を守ることにつながります。
硝子体出血はどのくらいで治る?
硝子体出血の回復期間は、出血の量や原因、治療内容によって大きく異なります。自然吸収が期待できる軽度なものから、手術を必要とする重度なケースまで、個々の状態に応じた対応が必要です。
以下では、治るまでの期間や受診の目安について解説します。
- 硝子体出血が治るまでどのくらいの期間がかかりますか?
- 軽度の硝子体出血であれば、数週間から数ヶ月で自然に吸収されます。
出血の量が少ない場合は手術などの処置をせずに、自然に治癒するケースも多く、目安として1〜3ヶ月ほどで視界が徐々に回復していきます。
ただし、出血の原因となる疾患によっては経過観察中に悪化することもあるため、定期的な診察が欠かせません。
- 治癒する目安より回復が遅れている場合は病院を受診すべきですか?
- はい、想定よりも視力回復が遅れている場合は、必ず眼科を再受診してください。
自然吸収が期待されていた出血でも、何らかの合併症(網膜剥離や続発性の緑内障など)が進行している可能性があります。痛みがなくても、見え方の異常が続く、視力の改善が見られないといった場合には、放置せず早めに医師に相談しましょう。
- 手術を行った場合、どのぐらいの期間で治りますか?
- 硝子体手術を行った場合、視力の回復には数週間から数ヶ月かかることが一般的です。
手術自体は日帰りや短期入院で行えることが多いものの、手術後の視界がクリアになるまでにはある程度の時間がかかります。
また、術後の安静や点眼治療、定期検査も重要です。出血の原因疾患や眼底の状態によっては、視力の回復が限定的な場合もあります。
編集部まとめ
硝子体出血は、症状の出方や原因によって、自然に治る場合もあれば、手術が必要になることもあります。治るまでの期間は人によって異なり、長い場合は数ヶ月かかることもあります。
放っておくと視力に視力に影響が出ることもあるため、気になる症状があれば早めに眼科を受診するようにしましょう。
また、生活習慣病など目とは直接関わりのなさそうな症状が悪影響を及ぼすこともあります。普段から目だけでなく、身体全体を大切にすることが、長く視力を守る鍵になるでしょう。
参考文献