硝子体手術に関して、詳細に理解している方は少ないのではないかと思います。本記事では、手術の概要から手術の流れ、手術時間、費用、そして合併症のリスクまで、硝子体手術の情報をわかりやすく解説します。
硝子体などを含む目の構造について
目は、硝子体・網膜・視神経など、さまざまな組織で構成されています。各組織がどのような特徴や機能を持っているのかを説明します。
- 硝子体について教えてください
- 硝子体は、眼球の後部にある透明なゼリー状の物質で、水分とコラーゲン繊維で構成されています。主な役割は、光が網膜に焦点を当てるのを助け、視覚信号を脳に送ることです。同時に、眼球の形状を保ち、外部からの圧力を分散する役割も果たしています。年齢とともに硝子体は変化し、透明性が徐々に低下します。これが原因で硝子体混濁と呼ばれる状態が生じ、視覚障害を引き起こすことがあります。
- 網膜について教えてください
- 網膜は、光を感知して視覚情報を脳に送る大切な役割を果たしています。網膜は眼球の奥に位置し、光が網膜に届くと、視細胞が刺激されます。
- 視神経について教えてください
- 視神経とは、光の情報を目から脳に伝達するための重要な神経の一部です。網膜が受け取った光の刺激は、視神経を通じて脳に送られ、そこで視覚情報として処理されます。視神経は左右にあり、それぞれの目から得た情報を脳に伝えることで、立体的に物を見ることができます。また視細胞は、桿体細胞と錐体細胞の2つに分類されます。桿体細胞は暗い場所でも働き、光の明るさを感じることができますが、色を捉えることはできません。一方、錐体細胞は色彩や明るさを感知し、特に明るい場所で活発になります。
硝子体手術について
次に、硝子体手術に関する情報や対象疾患、手術にかかる時間、入院期間、費用、そして合併症のリスクについて説明します。手術を検討する際の判断材料としてご参考ください。
- 硝子体手術の概要について教えてください
- 硝子体手術とは、硝子体を取り除くことにより、さまざまな眼疾患を改善する手術です。手術は局所麻酔または全身麻酔の下で、特殊な手術用具を使用し、眼球に小さな切開をして行います。網膜剥離の場合は、硝子体の一部が取り除かれ、網膜を正常な位置に戻す治療が行われます。硝子体の濁りや出血がある場合には、これらの異常な部分にも対処します。手術後、患者さんは眼帯を着用し、安静に過ごす必要があり、また手術後は経過を見るために定期的に眼科を受診しなければなりません。
- 硝子体手術はどのような病気に対して行われますか?
- 硝子体手術の対象となる疾患は、さまざまあります。例えば、黄斑浮腫は、黄斑部に浮腫が生じ、視力低下を引き起こす病態であり、手術は視力の正常な状態にするために行われます。同様に、糖尿病網膜症も糖尿病患者さんに見られる網膜の変化であり、手術によって網膜の修復や視力の維持が図られます。黄斑前膜や黄斑円孔も手術の対象となります。黄斑前膜は黄斑の前面に薄い膜が形成される病気で、手術によって軽快が期待できます。黄斑円孔は黄斑部に小さな穴が生じる病気で、手術が必要な場合には穴の修復が行われます。そのほか、網膜剥離や硝子体出血も対象疾患になります。
- 硝子体手術の手術時間や入院期間について教えてください
- 硝子体手術の手術時間や入院期間は、患者さんの目の状態に応じて変わります。手術時間の目安としては、30分から2時間ほどです。ほとんどの場合は入院の必要がありません。ただし、手術が複雑で合併症のリスクが高い場合は、1日以上の入院が必要です。なお、入院期間は手術後の患者さんの状態によって延長する可能性があります。
- 硝子体手術の費用について教えてください
- 硝子体手術には、硝子体顕微鏡下離断術と眼内内視鏡硝子体切除術の2種類があります。手術は保険適用となり、患者負担が3割の場合はどちらも片目あたり10万円から18万円ほどで、患者負担が1割の場合は35000円から6万円ほどです。薬剤料、入院料、麻酔料などが別途かかる場合もあり、具体的な費用は患者さんが受ける手術内容や原因となった病気によって異なりますので、手術を受ける前に医院に確認しましょう。
- 硝子体手術にはどのような合併症リスクがありますか?
- 手術後にはいくつかの合併症が起こるリスクがあります。まず、手術中に異常な血圧上昇や負荷がかかると、まれに硝子体出血が発生することがあります。この合併症の発症確率は非常に低いですが、大きな視力低下を引き起こす可能性があります。また、感染症眼内炎も考えられますが、手術時の創口が小さいため、感染症眼内炎になる確率は低いと言えるでしょう。ただし、発症した場合は迅速な対応が必要で、最悪の場合は重篤な後遺症をもたらす恐れがあります。さらに、手術中や手術後には網膜裂孔・網膜剥離を招くことがあります。これらの合併症が発生した場合、追加の手術が必要となります。手術後には眼圧の上昇で緑内障の懸念もありますが、ほとんどの場合、眼圧の上昇は一時的で、点眼薬や内服薬で管理可能です。まれに緑内障手術が必要になることもあります。最後に、網膜剥離を放置したり、手術後に増殖膜が形成されたりすると、増殖硝子体網膜症を招くこともあります。この状態になると治療が難しく、軽快しても大きな視力障害を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
硝子体手術の流れと術後について
手術から退院、そして視力回復までの流れについて詳しく説明します。
- 硝子体手術はどのような流れで行われますか?
- 硝子体手術の流れは、まず手術準備として眼周りと表面を消毒し、清潔な手術用シーツとバイ菌除けのシールをつけます。あわせて眼を開くための器械を使用したら、手術の準備が整います。麻酔は全身麻酔ではなく、眼の手術部分に効く局所麻酔が行われ、点眼麻酔とテノン嚢下麻酔が施されます。手術は約1時間から約2時間かかり、眼科手術用の顕微鏡を使用して行われます。手術中はライトを当てるため光をまぶしく感じますが、患者さんは徐々にそのまぶしさに慣れ、眼を触られる感覚や少し眼を押される感覚はあるものの、強く痛むようなことはほとんどありません。局所麻酔なので手術中は意識がはっきりしており、医師とのコミュニケーションが可能です。手術終了後は眼帯を装着し、回復室に戻ります。麻酔が切れたら、診察室で目の状態について説明され、診療が終了となります。
- 硝子体手術後どれくらいで退院できますか?
- 硝子体手術を受けた患者さんは、手術後数時間で退院しますが、これは一般的な目安です。手術後の経過が良くない場合や、合併症が発生した場合には、入院する必要があります。
- 硝子体手術後にはどれくらいでどの程度視力が回復しますか?
- 硝子体手術後の経過には個人差があります。軽快する速さや程度は、患者さんの健康状態や手術前の視力などに影響されます。数週間で視力が良くなることを感じる方がいれば、数カ月かかる方もいます。また、術後の見え方は採用した術式や内容によりさまざまです。最後に眼内にガスを入れるかどうかによっても変わります。
- 硝子体手術後の視力回復はどのくらいの期間保ちますか?
- 手術後の視力は徐々に良くなり、約半年で安定します。ただし、最終的な視力は手術前の症状の重篤さや採用した術式によって大きく左右されます。元の視力に近い状態を維持するためには、病気を早期に発見し、早期治療を心がけ、手術が必要と判断されたら迅速に治療を受けることが重要です。
編集部まとめ
この記事では、目の仕組みから、硝子体手術の概要、手術期間、および合併症のリスクについて紹介してきました。本記事が、患者さんご自身もしくは、そのご家族が将来的に硝子体手術を検討する際に役立つ情報となれば幸いです。
参考文献