緑内障は40歳以上に多い病気で一度は聞いたことがあるでしょう。
しかし、緑内障という病気は知っていても実際にどのような原因で起こるのか・症状・予防法まで答えられる方は少ないのではないでしょうか。
緑内障は眼底にある視神経の繊維が障害を受け、少しずつ視野が狭くなってくる病気です。少しずつ症状が進行するため、緑内障は初期段階では気付きにくい病気といわれています。
最近では、スマートフォンの普及から若い方でも緑内障に罹患する方がいるようです。
緑内障の失明率は低いといわれますが、日本人の中途失明の原因1位で25%を占めるともいわれています。
眼に気になる症状がある方はぜひ、こちらの記事を参考にしてみてください。
緑内障の予防・原因
- 緑内障の予防は何が重要になりますか?
- 緑内障の予防で重要なことは目を酷使しないこととストレスを溜めすぎず規則正しい生活習慣を送ることです。視神経の障害には眼圧が関係していて、眼圧とは眼の中を循環する房水と呼ばれる液体によって決まる眼の内圧のことです。緑内障は眼圧が高くなることで視神経が障害され視野欠損や視力が低下する病気とされてきましたが、近年は眼圧が正常であっても視神経の障害が進む人が多いことも分かってきました。
そのため眼圧だけが緑内障の原因というわけではなく、遺伝・強度の近視・生活習慣などのさまざまな要素が視神経の障害に栄養を及ぼすといわれています。近年、パソコンやスマートフォンの普及によりこれらを長時間使用する方が増えていますが、使用状況は意識することで変えることができます。
具体的には寝る前の使用を控える・画面の明るさを調整するなど、目を酷使しない環境を整えることが大切です。また、適度な運動は全身の血流を促すだけでなく眼の血流も促します。逆に喫煙は眼の血流を悪化させてしまうので禁煙するのがベストです。
- 緑内障の原因は何があげられますか?
- 緑内障の明確な原因は分かっていないものの、眼圧が高い状態が続くと視神経の障害が進行します。眼圧の正常値は10〜20mmHgとされており、血圧と同じように日内変動があります。耐えられる眼圧の程度は個人差があるため、他の人と眼圧を比較しても意味がありません。それよりも定期的な眼科受診で経過をみることが非常に大切です。また緑内障は40歳以上の20人に1人が緑内障を患っているとされており、加齢も原因の一つといえるでしょう。
そのほか、喫煙・遺伝・過度のストレスも眼への血流を阻害する因子になりますので、まずは規則正しい日常生活を送ることが大切です。また、緑内障を患った方の多くは眼精疲労を訴えます。
近年はパソコン・スマートフォンの普及で便利になりましたが、一度使用状況を見直すのも良いのではないでしょうか。
- 緑内障になりやすい要因はありますか?
- 家族に緑内障を患っている方や下記に示す持病がある方は緑内障を発症しやすいといえます。
- 糖尿病
- 高血圧
- 睡眠時無呼吸症候群
- 貧血
- 片頭痛
このほか緑内障になりやすい生活習慣は下記のとおりです。
- 長時間、パソコンやスマートフォンを使う方
- アルコール摂取する機会が多い方
- カフェインをよく摂取する方
- 喫煙する方
- 緑内障の種類にはどのようなものがありますか?
- 緑内障は種類によって治療が異なるため、緑内障のタイプについて知っておく必要があるでしょう。検査をしても原因が特定できず他の疾患が原因でないものを原発緑内障、他の疾患が原因で眼圧の上昇が認められるものを続発緑内障と呼びます。
また隅角と呼ばれる房水が流れる経路の詰まりの有無によっても分類ができ、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障に分類できます。そのほか小児期に眼圧上昇が認められる小児緑内障もありますが、今回は成人の緑内障のタイプについて詳しく解説しましょう。- 原発開放隅角緑内障 :原因となる他の疾患がない緑内障で、緑内障の中でも一番多いタイプです。性別問わず40歳以上の方に多いとされていて、症状がゆっくり進行するので自覚症状がないまま症状が進行していることがあります。病名の通り、房水が流れる経路の隅角は開いているものの、房水の出口が詰まり流れが悪化することで発症します。原発開放隅角緑内障は必ずしも眼圧が高いとは限らず、眼圧が正常範囲である場合も多いのが特徴です。眼圧が正常範囲の緑内障を正常眼圧緑内障とも呼ばれます。視神経が障害されることにより視野欠損が生じ、その範囲が徐々に広がっていきます。
- 原発閉塞隅角緑内障 :他の原因疾患がなく、隅角が狭くなり眼圧が上昇することによって発症する緑内障です。加齢とともに罹患率は高くなり男性よりも女性に多く発症し、発症速度によって慢性型と急性型に分類できます。短時間で塞がった時には急性緑内障発作と呼び、急激な眼圧上昇に伴って頭痛・嘔吐・激しい眼の痛みなどの症状が出現します。急性緑内障発作が起きた場合、治療が遅れると失明の危険もあるため早期の眼科受診と緊急な処置が必要です。一方で慢性的な隅角の狭い方は徐々に視野狭窄が進行するタイプの緑内障もあります。
- 続発緑内障 :他の疾患・外傷・薬物などの影響で眼圧が上昇して発症する緑内障です。続発緑内障を引き起こす眼の疾患はぶどう膜炎・高齢者に多い偽落屑症候群・白内障などが挙げられます。全身疾患として原因となりえる疾患には糖尿病・ベーチェット病・サルコイドーシス・アミロイドーシス等です。また薬剤では一般的にステロイドの長期使用が考えられます。さまざまな要因が考えられる続発緑内障は、原因となっている疾患や外傷の治療を行いながら眼圧を下げる治療を並行して行います。続発性緑内障は暗点の出現する場合もありますが、自覚症状がないことも多いです。
緑内障の症状・費用
- 緑内障の症状について教えてください
- 緑内障の初期段階では自覚症状がないことがほとんどです。実際には片方の眼に視野欠損が起きていてももう片方の眼が補ってしまうので気付きにくく、知らないうちに病状が進行している場合が多いです。病状が進行すると不定形の視野欠損が出て少しずつその範囲が拡大するのです。
原発閉塞隅角緑内障で急激に眼圧が上昇した場合、急性緑内障発作とも呼びます。この場合は眼のかすみ・激しい眼の痛み・吐き気や嘔吐を伴う頭痛などの症状が現れます。このような症状が現れた場合には、適切な処置を早期に行わないと失明に至る場合もありますので早期の眼科受診が大切です。
- 緑内障治療ではどのようなことがされますか?
- 緑内障で障害された視神経は元に戻ることはありません。そのため緑内障の治療は視野欠損の進行を防止あるいは遅らせることが目的になります。
緑内障は眼圧を十分下げると正常眼圧緑内障の方でも病状の進行を遅らせることが明らかになっており、眼圧コントロールが非常に大切です。実際の緑内障の治療は点眼などの薬物治療・レーザー治療・手術治療があります。- 薬物治療 :多くの緑内障で選択されることが多い治療で眼圧を下げる点眼で緑内障の進行を抑えます。眼圧を下げる点眼薬は房水の産生を抑える作用や房水の排出を促す作用などさまざまな作用機序のものがあり、緑内障の種類や重症度によって処方されます。場合によっては点眼薬を複数組み合わせる場合や内服薬と併用する場合がありますが、使用に関しては主治医の指示に従ってください。
- レーザー治療 :眼にレーザーを当てて眼圧を下げる治療法で治療効果は2~3年持続するといわれています。手術に比べると体への侵襲が少なく約10~20分程度で治療が行えます。また術後の合併症の心配がほとんどなく、効果が薄れた場合は再度治療を行うことが可能です。レーザー治療の対象は、点眼で眼圧が十分に下がらない場合・視野狭窄が進行してしまう場合・緑内障発作を起こす可能性が高い場合などにレーザー治療が選択されます。レーザー治療は2種類の方法があり、閉塞隅角緑内障や急性緑内障発作に適応されるレーザー虹彩切開術と、一部の開放隅角緑内障に効果がある選択的レーザー線維柱帯形成術です。
- 手術 :点眼やレーザー治療では効果が不十分な場合に選択される治療です。手術を行っても障害された視神経は元に戻らないため、病状の進行と悪化を防ぐことが目的です。手術内容によっても変わりますが入院期間は10日間前後になります。また手術後も定期的な通院が必要で、医師による創部の観察が不可欠です。さらに、手術後も点眼等の継続的な治療を受けることで眼圧を安定させていくことが大切です。緑内障の手術は大きく分けて2つあり、房水の排水路を新たに作る手術もしくは房水の排水を促す手術があります。
- 緑内障は保険適用されますか?
- 緑内障の検査・治療ともに医療保険が適応されます。また民間の医療保険に加入している場合は保険内容にもよりますが、緑内障手術の入院で入院給付金の対象になる可能性があります。保険会社に支払い事由かどうか確認すると良いでしょう。
また、緑内障で視野欠損が進行した場合は眼科医による一定の検査基準に該当する場合、身体障害者手帳を申請できることがあります。ご自身の病状が該当するかに関しては主治医に確認しましょう。
緑内障に罹患したら普段の生活で心掛けること
- 緑内障に罹患した場合に食事療法は有効ですか?
- 緑内障は明らかな原因はまだ分かっておらず対症療法が中心になります。
食事については視力を保つのに不可欠なビタミンAや抗酸化作用をもつルテイン・アスタキサンチン・ビタミン類などが挙げられますが、栄養素単独で考えるよりバランスの良い食事をとることが大切です。
糖尿病など他の疾患によって緑内障を発症している場合は、原因疾患の食事療法を優先すると良いでしょう。
- 緑内障に罹患したら主に目を使う作業はやめたほうがいいですか?
- 緑内障に罹患したからといって目を使う作業をゼロにすることは難しいでしょう。日常生活で目を使っても緑内障は悪化しません。ただし、目を酷使した環境になっているようであれば、一度日常生活を見直してみるのも良いでしょう。
- 定期的に眼科受診を行った方がいいですか?
- 眼に症状がある方はもちろん自覚症状がない場合でも40歳以上であれば眼科受診をするのが良いでしょう。なぜなら緑内障の初期では自覚症状を認識しにくく、一度障害されてしまった視神経は元に戻らないからです。
最近ではインターネットの普及が目覚ましく40歳以下でも緑内障と診断される方もいらっしゃいます。緑内障の原因になりえる他の持病を抱えている方や見え方に違和感等がある場合は年齢にとらわれずに眼科受診をおすすめします。
編集部まとめ
緑内障は早期発見・治療が非常に重要な病気であることがお分かりいただけたと思います。
障害された視神経は元に戻ることはありませんが、現状の見え方が維持できるよう規則正しい生活を心がけ、緑内障と診断された場合も定期受診を怠らないようにしましょう。
参考文献