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網膜硝子体手術の難易度は高い?手術の方法や医院選びのポイントについて解説!

網膜硝子体手術の難易度は高い?手術の方法や医院選びのポイントについて解説!

網膜硝子体手術(もうまくしょうしたいしゅじゅつ)は、その名の通り眼内にある硝子体(しょうしたい)に対して行う手術です。硝子体出血や網膜剥離(もうまくはくり)などに罹患した際に手術を行うことがあります。しかし、実際にどのような手術なのかわからないままだと不安に感じる方も多いでしょう。

そこで、この記事では網膜硝子体手術の基本知識と、どのような疾患に対して行う手術なのか、難易度はどれくらいか、医院を選ぶ際のポイント、術後に気をつけることなどについて詳しく解説していきます。

網膜硝子体手術とは

網膜硝子体手術とは 網膜硝子体手術とはどのような治療なのでしょうか。まず、眼球内部にある硝子体や、網膜硝子体手術について説明していきます。

硝子体とは

硝子体は、眼球の大半を占めている透明なゼリー状の組織です。水晶体(すいしょうたい)と混同される方も多いのですが、カメラで言うとレンズの役割をしているのが水晶体、眼の奥にあってフィルムのような役割をしているのが網膜(もうまく)と言います。

そして、水晶体と網膜の間に位置し、網膜を保護しているのが硝子体です。硝子体は90%以上が水でできており、その他はコラーゲン繊維と少量の細胞成分で構成されています。加齢や病気で性状が変化しやすく、なんらかの原因で硝子体が炎症を起こしたり、濁ったり、網膜を引っ張ったりすると疾患が生じて網膜硝子体手術が必要になります。

網膜硝子体手術の概要

網膜硝子体手術は、上記で説明した硝子体や網膜に発症した病気を治療するための手術です。白目に小さな孔を開けて細い器具を挿入し、硝子体の中にある出血や溷濁した部位を取り除いていきます。極小切開とされる23~27ゲージ(0.6~0.4mm)程度の小さい創口が主流で、症例によって最適な孔のサイズを選択することが多いです。

なお、網膜硝子体手術を必要とする疾患の中には、早急に治療を行わないと失明する危険性が高まるケースもあるため比較的緊急性が高い治療と言えるでしょう。また、硝子体内部に器具を挿入することから、術後に網膜剥離などの合併症を引き起こすリスクが高く、豊富な経験や知識と最新の機器が重要となる高度な手術です。

網膜硝子体手術の主な対応疾患と症状

網膜硝子体手術の主な対応疾患と症状 網膜硝子体手術を行う主な疾患と、その症状をご紹介します。

黄斑前膜

黄斑前膜は「黄斑上膜(おうはんじょうまく)」とも言い、白内障と同様に罹患者数が多い疾患のひとつです。黄斑は網膜の中心にあり、最も高精細な働きをしています。視力で言うと1.0以上の見え方に影響する部分です。そして、この黄斑の前に膜ができてしまう疾患が黄斑前膜。最も多い原因が加齢で、ほかには眼球の外傷、眼球内部の炎症、手術の後遺症などが挙げられます。黄斑前膜に罹患すると物がぼやけたり、にじんだり、ゆがんで見えたりするようになりますが、投薬による治療や眼鏡等で矯正することができません。初期症状が軽いため気がつきにくく、進行してから手術になるケースが多いです。症状が悪化してから手術を行うと、術後もゆがみなどの後遺症をもたらしてしまうこともあるため早期発見、早期治療が求められます。

黄斑円孔

網膜の中心にある黄斑に孔(あな)があいてしまう疾患です。はっきりとした原因はわかっていませんが、網膜と硝子体が強く癒着したときに黄斑が硝子体に引っ張られて孔があくとされています。黄斑はもともと薄い部位で、0.05mmしかありません。黄斑に孔があいてしまうと視野に異常が起こり、視力が徐々に低下して物がゆがんで見えるようになるため治療が必要です。なお、この症状は、50~70歳代の女性に現れやすく、加齢に伴う症状を「特発性黄斑円孔」といいます。その他、強度な近視に伴う「近視黄斑円孔」、眼球を強く打撲したときに生じる「外傷性黄斑円孔」などがあります。手術の際に医療用のガスなどを入れて孔を閉じるため、数時間から数日ほど「うつぶせ」で過ごす必要があります。そのため、日帰りではなく入院を選択する方もいます。

硝子体出血

文字通り、硝子体内部に血が溜まってしまい視力が低下する疾患です。ただし、硝子体には血管がないため、厳密に言うと硝子体が出血しているわけではありません。硝子体出血とは、なんらかの理由で眼底にできた未熟でもろい「新生血管(しんせいけっかん)」などから出血した血液が眼球内に溜まった状態を指します。出血量が少ないうちは硝子体に浮遊する血液などによって「飛蚊症(ひぶんしょう)」の症状が起こります。さらに出血量が増えると、溜まった血液が原因で硝子体が濁り、視力低下やかすみなどの症状を引き起こします。硝子体出血の中には、網膜剥離や網膜静脈閉塞症(もうまくじょうみゃくへいそくしょう)などの重大な眼の疾患が原因となっているケースもあり、そのような場合は失明する可能性があるため注意が必要です。

網膜剥離

網膜剥離は、眼球の内側にある網膜が眼底から剥がれてしまう疾患です。網膜は、眼底にある毛細血管を通じて酸素や栄養を受け取っているため、剥がれると機能が低下して視野欠損や視野狭窄(しやきょうさく:視界がせばまること)などの症状を引き起こします。しかし、痛みなどの自覚症状がないため、かなり進行するまで気がつかないというケースも少なくありません。最悪は失明に至る可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。網膜剥離は眼科手術の中で最も難易度が高く、執刀医の力量や経験が問われるといっても過言ではありません。

なお、網膜剥離の発症しやすい年代が、生涯で2度あります。それが、20代前後と50代前後です。20代は近眼の人に生じやすく、進行が遅いため本人も気がつかずに健診で発見されたというケースをよく耳にします。そして、50代は加齢による硝子体の収縮が原因となっており、進行が早いという特徴があります。この年代で罹患すると、剥がれるスピードが速いため失明のリスクが高いです。発症してからできるだけ早い手術を行うことが、目を守るために重要なポイントと言えるでしょう。

糖尿病性網膜症

糖尿病の三大合併症のひとつで、失明原因第3位に位置する治療が難しい疾患です。全員ではありませんが、糖尿病に罹患してから10年程度で発症することが多いと言われています。初期段階では自覚症状がなく、中期になるとダメージが進行して網膜全体の血行が悪くなるため、白斑ができたり、毛細血管の形状が崩れたりします。末期には不足した血流を補うため新生血管が生成されるようになり、血管が破裂すると網膜剥離や硝子体出血などの深刻な合併症を引き起こします。一足飛びに悪化するわけではありませんので、糖尿病を患っている方は、定期的に眼底検査を行うと良いでしょう。

眼底出血

網膜や硝子体の出血など、眼底部からの出血の総称が眼底出血です。高血圧や糖尿病などの疾患、網膜血管の動脈硬化、後部硝子体剥離、事故等の外傷などが原因となっています。出血しても明らかな視力低下や視野欠損が生じるわけではないため、初期段階は気がつきにくいのが特徴です。しかし、出血が長期に渡ると、滲出物によって損なわれる面積が増えてしまい、治癒率が低下します。生活習慣病などの全身疾患から引き起こされることが多いため、健康診断などで生活習慣病のリスクが高いと指摘を受けた人は、眼底検査も行うようにしましょう。なお、眼底出血が起こる疾患のひとつに「網膜静脈閉塞症」があります。網膜状にある静脈がなんらかの理由で詰まってしまい、血液や成分液があふれ出す疾患です。この際、あふれ出した血液や内容物が眼底出血となります。

網膜硝子体手術の方法

網膜硝子体手術の方法 ここでは、網膜硝子体手術の流れについて詳しく説明していきます。

網膜硝子体手術の流れ

網膜硝子体手術の主な流れは以下の通りです。(医院によって流れは異なります)

1.手術準備
眼の消毒を行い、局所麻酔をかけていきます。必要に応じて静脈麻酔や、リラックスできるような気体を吸入することもあります。

2.ポートの設置
白目に手術機器を挿入するための孔(ポート)を3つ開けます。ひとつは術中に眼内を見えやすくするための照明を、もうひとつは眼球の形を保つための灌流液(かんりゅうえき)を注入するものを、そして最後がメスやレーザーなどを挿入するための孔です。なお、ポートは小さな傷のため、術後自然にふさがります。

3.治療を行う
挿入した機器で硝子体を切除して吸引したり、ピンセットのような器具を用いてめくり取ったり、眼内でレーザーを照射したりと、疾患に応じた処置を行います。なお、術中に硝子体を吸引した分だけ灌流液を流し入れて眼の形を保持しますが、網膜剥離や黄斑円孔などの疾患はガスの浮力で網膜を圧着させる必要があるため、最後のステップとして注入した灌流液をガスに置き換えます。 平均的な手術の時間は、30~1時間程度です。しかし、難症例の場合は、2~3時間程度かかることもあります。

日帰り網膜硝子体手術について

網膜剥離や硝子体出血などは、突然症状が出て視力が低下します。そのため、手術までに時間がかかると日常生活に支障をきたしたり、待っている期間に強い不安を感じたりする方も多いのではないかと思います。また、網膜硝子体手術を必要とする治療の中には、失明の危険性がある緊急性の高い疾患も含まれています。従来の網膜硝子体手術は入院して行うことが多く、すぐに手術に対応できないというケースが多かったのですが、近年は手術システムが進化しており、日帰り手術が可能な施設が増えてきています。

白内障との同時手術について

網膜硝子体手術を行う際、白内障の手術を同時に行うケースがあります。なぜなら、白内障(水晶体)がないほうが網膜硝子体手術を行いやすいというメリットがあるからです。そのため、白内障の症状が強く出ているという方は、同時手術を検討するのも良いでしょう。

網膜硝子体手術の難易度は高い?

網膜硝子体手術の難易度は高い? 網膜硝子体手術の難易度が気になる方も多いのではないかと思います。難易度の解説と同時に、網膜硝子体手術を受ける病院選びのポイントもご紹介します。

網膜硝子体手術の難易度について

網膜硝子体手術は、眼科で行われる手術の中でも繊細で難易度が高く、白内障よりも専門性が求められます。そのため、従来は中核病院で入院して行われるのが一般的でした。近年では手術システムが進化したことにより、日帰り手術を行うことができるクリニックが増えてきています。しかし、その専門性の高さから執刀できる医師が少ないこともあり、手術までに待たされてしまったり、手術を断られてしまったりするケースも多いようです。

網膜硝子体手術を受ける医院を選ぶポイント

網膜硝子体手術を受けるうえで、どの医院にしたら良いか悩むと思います。そのようなときは、以下のポイントから決めていきましょう。

  • 日本眼科学会の専門医が在籍している
  • 豊富な網膜硝子体手術の経験を持っている
  • 先進的な機器や設備を導入している

網膜硝子体手術の注意点

網膜硝子体手術の注意点 網膜硝子体手術を行ってからしばらくは、普段通りの生活ができません。当日と、術後に分けて、それぞれ気をつけたほうが良い点をご紹介します。

網膜硝子体手術を受ける当日の注意点

網膜硝子体手術を受けた当日は、以下のような点に気をつけましょう。

  • 翌日の診察まで、眼帯を外さない
  • 目を押さえたり、こすったりしない
  • 洗顔や化粧をしない
  • 忘れずに処方された点眼を行う
  • アルコールやタバコは控える
  • 入浴しない(顔に水がかからないよう、濡れタオルで拭く程度にする)
  • 細かい字を見ないようにする
  • 激しく目を動かさないようにする

なお、手術の際に眼内へガスを注入した場合、ガスが消失するまではうつぶせで過ごすという姿勢の制限が付きます。また、ガスが眼内に残った状態で気圧の低い場所へ行くと、眼圧が高まり危険です。飛行機などに乗ることを避けましょう。

網膜硝子体手術を受けた後の注意点

術後1か月ほど経過すれば普段通りに生活ができますが、特に手術当日から1週間は傷口がふさがっていないため以下の点で注意が必要です。

  • 目をこすったり、目に力を入れたりしない
  • 術後から1週間程度眼鏡を使うと良い
  • 顔に水がかからないようにする(濡れタオルでそっと拭く程度)
  • 指定された期間は点眼を続ける
  • 手をしっかり洗って感染症対策をする
  • アルコールやタバコは控える
  • 化粧はできるだけ控え、アイメイクをしない
  • 汗をかくような激しい運動は控える

なお、術後3~7日の間に、急に見えにくくなる、強い痛みを感じる、充血する等の症状が現れた場合、合併症が考えられます。できるだけ早く受診しましょう。

まとめ

まとめ 網膜硝子体手術とはどのようなものなのか、どのような症例で行われる手術なのか、難易度や病院選びのポイント、手術の流れなど詳しい情報を解説しました。網膜剥離や硝子体出血は、突然発症することが多いです。そのため、手術をすることに対して不安な気持ちになることも多いでしょう。近年、網膜硝子体手術は日帰りでも治療を受けることができるほど手軽な雰囲気になってきました。しかし、大変難易度が高い手術になるため、経験豊富な専門医がおり、最新の機器や設備が整っている医院を選ぶと良いでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

東京大学医学部卒業(1995年 MD)/ 東京大学大学院修了(医学博士 2001年 PhD) / 東京大学医学部眼科学教室講師(2012-2015年) / デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016年-2020年)/ 旭川医科大学眼科学教室教授(2018年-2020年) / 横浜市立大学 視覚再生外科学 客員教授(2020年-現在) / 専門は黄斑疾患。シンガポールをはじめとした国際的な活動に加え、都内のお花茶 屋眼科での勤務やDeepEyeVision株式会社の取締役を務めるなど、マルチに活躍し ています。また、基礎医学の学術的バックグラウンドを持ち、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究などを行っています。

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