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 白内障と糖尿病の関連性|糖尿病が原因の眼疾患や白内障手術の方法も解説

白内障 糖尿病

白内障の原因のほとんどは加齢といわれており、誰もがかかる可能性のある病気です。

加齢が原因であれば、白内障になるのは仕方のないことなのかもしれません。しかし糖尿病を併発している場合は注意が必要です。

糖尿病患者さんでは、若年で白内障を発症したり、白内障の進行が速くなることが報告されています。

そこでこの記事では白内障と糖尿病の関連性や糖尿病にはどのようなリスクがあるのかについて解説します。持病に糖尿病がある人はぜひ参考にしてください。

白内障と糖尿病の関連性について

白内障と糖尿病の関連性について

白内障の大きな要因は加齢ですが、そのほかにも紫外線・放射線・糖尿病などさまざまな要因があることがわかっています。

白内障は50歳代で約40%・60歳代で約70%・70歳代で約90%・80歳代ではほぼ100%の人が白内障になるといわれており、白内障はある意味自然な老化現象です。

しかし糖尿病があると白内障の発症・進行が加速するといわれています。なぜそうなるのか、白内障が起こるメカニズムをみてみましょう。

白内障は水晶体が白濁して視力が低下する病気ですが、白濁の原因は水晶体のタンパク質の変質です。

水晶体内のクリスタリンというタンパク質が何らかのストレスを受けることで構造が変わり、凝集・不溶化を起こし結果として水晶体が白濁します。

ストレスには加齢による酸化ストレスがありますが、糖尿病の場合はさらに糖化ストレスも加わると考えられています。糖化とは過剰な糖と結合することです。

糖尿病で高血糖が続き過剰な糖が細胞内に取り込まれると、解糖系経路だけでは処理しきれないためポリオール代謝経路を迂回するようになります。

ポリオール代謝経路ではグルコースはソルビトールに、さらにフルクトースに変換されますが、フルクトースは糖化反応を起こしやすい糖です。

糖化が進むと糖化タンパク同士で架橋を形成して、不溶性の大分子である終末糖化産物(AGEs)が作られます。さらにAGEsはAGEs受容体と結合してさまざまな炎症シグナルを発生させ糖化ストレスを引き起こします。

ポリオール代謝経路自体が酸化を亢進する反応なので、糖尿病があるとクルスタリンは酸化や糖化を受けることでより変質しやすくなるといえるでしょう。

実際に以下のような研究報告があります。

  • 白内障の発症・進行のリスクは血糖値と糖尿病罹患期間に応じて上昇する
  • 糖尿病患者さんは健常者と比較して白内障発症がより早期で、頻度は約5倍

糖尿病による高血糖状態は糖の代謝異常を起こして酸化や糖化を亢進し、さまざまな細胞や組織にダメージを与えて合併症を引き起こすと考えられます。

糖尿病は万病のもとともいわれていますのでくれぐれも注意しましょう。

糖尿病が原因の眼疾患

糖尿病が原因の眼疾患

糖尿病により高血糖状態が長く続くと、ほぼ全身の臓器・組織が何らかの障害を受けるようになります。

特に毛細血管などの細い血管がダメージを受けやすく網膜症・腎症・神経障害が3大合併症として有名です。

眼科領域では網膜・水晶体・角膜・視神経など障害を受ける組織によりさまざまな合併症があり、以下に紹介します。

併発白内障

糖尿病性白内障は高血糖により水晶体のタンパク質であるクリスタリンが酸化・糖化を受けて変質・白濁することで発症します。

白内障の発症・進行のリスクは血糖値に応じて上昇するので、血糖コントロールを厳格にすることが重要です。

水晶体混濁の所見は水晶体後嚢直下に起こることが多いようです。

網膜症

糖尿病性網膜症は、網膜組織が障害を受けることで発症します。

日本では失明人数は年間3,000人以上といわれ、中途失明原因として緑内障・網膜色素変性症に次いで第3位です。(2019年調査)

進行状態によって3段階に分けられます。

  • 単純網膜症:初期の段階で毛細血管が弱くなると血管壁が膨れてコブ(毛細血管瘤)ができたり、血管が破れて小さな出血を起こしたのち血清成分が沈着してシミ(硬性斑点)ができたりします。この段階では自覚症状もなく、血糖コントロールをしっかり行えば治すことも可能です。
  • 増殖前網膜症:さらに進行すると細い血管が詰まり、血流が低下した領域が酸素や栄養不足により壊死し、眼底検査で小さな白いシミ(軟性斑点)として観察されます。血糖コントロールに加えレーザー光凝固を行うことで進行を抑えることが可能です。
  • 増殖網膜症:血管の閉塞が広範囲に及ぶと、酸素不足を補うために新しい血管(新生血管)が作られます。新生血管は弱いので、出血が起こり硝子体に流れ出てしまい急激な視力低下となります。この段階になると網膜剥離や新生血管緑内障を起こしやすくなるので注意が必要です。

糖尿病患者さんの約40%が発症しているといわれ、罹患期間が長かったりHbA1c値が高かったりするほどリスクが有意に増加します。

糖尿病患者さんは眼の自覚症状がなくても、網膜症の発症・進行予防のために定期的に眼科を受診することをおすすめします。糖尿病眼手帳(日本糖尿病眼学会編)や糖尿病連携手帳(日本糖尿病協会編)などを利用して眼科医と内科医の連絡をとる方法もあります。

続発性緑内障

糖尿病性網膜症に続発するものとして血管新生緑内障があります。

網膜の低酸素状態により虹彩・隅角付近に新生血管が生じると、血管線維膜が周辺組織と癒着して房水の流出を妨げ眼圧が上昇し緑内障を発症します。

いったん発症すると、緑内障の手術(線維柱帯切除術)を行っても眼圧コントロールは困難です。

角膜症

高血糖が続くと角膜が脆弱となり、手術や網膜光凝固などの角膜へのストレスがきっかけとなって角膜に障害を起こすことがあります。

点状表層角膜症・再発性角膜上皮びらん・遷延性角膜上皮欠損などがあります。

糖尿病の患者さんは、白内障の手術後は特に角膜症の発症に注意が必要です。

視神経症

視神経に栄養を与える後毛様動脈の循環障害で発症すると考えられます。

前部虚血性視神経症の場合は突然の視力低下が起こることもあります。

動眼神経麻痺

動眼神経麻痺は神経に栄養を与えている血管がダメージを受けることで起こる神経障害です。

動眼神経に麻痺が生じると眼球を自由に動かす筋肉の働きが悪くなり左右の眼球が違う方向を向くようになり、物が二重にぶれて見えます。

また動眼神経は上眼瞼挙筋・瞳孔括約筋・毛様体筋にも信号を送っているため麻痺が生じると、眼瞼下垂・瞳孔散大などの症状がでます。

外転神経麻痺

外転神経が障害を受け麻痺が生じると、眼球を外側に向けて水平に動かすことが困難になります。

内斜視の状態になりピントを合わせづらくなり、物が二重にぶれて見えるなどの症状がでます。

糖尿病性白内障の種類

糖尿病性白内障の種類

糖尿病性白内障の多くは、もともと加齢が原因で起こった白内障に糖尿病の要因が加わって発症すると考えられています。しかし糖尿病が直接原因かどうかの判断は困難です。

分類方法も確立されておらず、成人型・真性型・脱水型に分ける場合もあります。脱水型はごくまれで、一般的には成人型か真性型が多いようです。

成人型

糖尿病性白内障のほとんどが成人型とされ、症状の進行が速いといわれています。

白濁はおもに水晶体皮質後嚢下にみられます。

真性型

真性型は1型糖尿病にみられ、若年者で血糖コントロール不良な状態が継続している場合に発症します。

早期の適切な糖尿病の治療により発症・進行を抑えることが可能です。そのため発生頻度は低く、小児糖尿病患者のうち1%程度です。

糖尿病性白内障の治療

糖尿病性白内障の治療

水晶体タンパクの変質はおもに過剰に取り込まれた

ブドウ糖の代謝異常が原因なので、治療としてはまずは血糖コントロールとなります。

視力低下になった場合は、一般の白内障と同様の手術が行われます。

しかし糖尿病患者さんでは術後の炎症反応の増加・創傷治癒の遅延・易感染性が認められることからより低侵襲の手術が望ましく、術後の管理にも注意が必要です。

血糖コントロール・術式について、それぞれ以下に解説します。

血糖コントロール

糖尿病の慢性合併症では厳格な血糖コントロールをすることで、発症を半減できるといわれています。

血糖値が変動すると全身状態や合併症にも影響を与えるため、適切な血糖コントロールを維持することが治療上重要です。

コントロール不良の場合は術後網膜症が悪化したり、血管新生緑内障や角膜症が発症する場合があります。

超音波乳化吸引術

一般的に行われる術式で、水晶体の袋部分(水晶体嚢)を残し、水晶体の皮質と核を超音波で破砕・吸引して除去します。

創口が3mm程度で縫合の必要もなく低侵襲性の術式です。

糖尿病の患者さんの角膜は脆弱で術後に糖尿病角膜症を発症する場合が多いことを考えると、低侵襲性の術式で以前より安全性が高い手術が行えるようになったといえます。

計画的嚢外摘出術

術式としては古くからある方法です。後嚢を残したまま、柔らかい皮質を吸い取った後硬い核をそのままの形で摘出する方法です。

現在では核が硬く超音波吸引術が不適な場合に行われることがあります。

核をそのままの形で取り出すため、創口が10mm以上になり縫合が必要です。術後の炎症や易感染性を考えると、糖尿病患者さんにとってはリスクの高い術式といえるでしょう。

白内障手術の方法

白内障手術の方法

糖尿病の患者さんの手術の場合は、事前に内科医に連絡し連携して治療にあたります。

手術時にHbA1cが高すぎたり、血糖コントロールが不良だったりした場合などは、コントロールが改善してからの手術となることもあります。

糖尿病性白内障の場合も一般的な白内障と同様で、水晶体の除去後に眼内レンズを挿入する方法です。ここでは手術方法と糖尿病性白内障に限っての注意点も解説します。

水晶体の除去

水晶体の中身を超音波によって細かく砕き吸引する方法が一般的です。

点眼による局所麻酔後、角膜を3mm程度切開しさらに水晶体前部を開き、皮質と核を超音波で破砕・吸引して取り除きます。

糖尿病患者さんの場合角膜が脆弱なので、創口はなるべく小さく低侵襲であることが重要です。

手術は通常医師の手によって行われますが、最近では先進機器を使ってより正確に、より低侵襲に行えるレーザー白内障手術を行なっている医療機関もあります。残念ながらレーザー白内障手術は保険適応外です。

眼内レンズの挿入

水晶体除去後は水晶体の代わりとなるレンズを挿入します。

術前の検査値からレンズの度数を決め、単焦点・多焦点眼内レンズの中から自分に合った種類を選択します。手術費用は選択するレンズによって決まるので主治医とよく相談のうえ決めましょう。

最近のレンズはアクリルソフトやシリコンなど柔らかい素材なので小さな創口から折り畳んで挿入することが可能となり、創口を縫合する必要もありません。低侵襲になったので糖尿病の患者さんでも安全性の高い手術を受けることができるようになりました。

術後は感染予防のためのケアが重要です。点眼薬の使用方法や眼帯の有無は主治医の指示に従いましょう。糖尿病患者さんの場合は、感染予防のために術後ゴーグルの使用をおすすめします。

糖尿病性白内障の術後は血糖コントロールはもちろんのこと、特に網膜症の悪化や角膜症の発症についての経過観察が重要です。

機器や技術の進歩で以前より安全性の高い手術が可能になったといえますが、糖尿病のある方は特に術後の炎症や感染には十分注意しましょう。

白内障手術後の合併症

白内障手術後の合併症

主な合併症は以下のとおりです。糖尿病患者さんは確率が高くなるものもあるので注意しましょう。

  • 術後眼内炎:術後に細菌が侵入・増殖することで発症します。頻度としては約0.05%と低いですが、炎症が強い場合は視力低下などの後遺症が残ることもあります。糖尿病患者さんは感染症にかかりやすいので特に注意が必要です。
  • 後発白内障:術後数ヶ月~数年経って残した水晶体嚢が濁ってくることがあります。視力が低下した場合は外来でレーザーを用いて除去が可能です。</li。
  • 術後屈折誤差:術前に決めた眼内レンズのピントと実際のピントに誤差が生じることがあり、見えにくく感じることがあります。
  • 駆逐性出血(脈絡膜出血):頻度は0.03~0.06%と低いですが、コントロール不良な高血圧や糖尿病の患者さんでは確率が高くなることがあります。

一般的に糖尿病患者さんは、術後の炎症反応が増加したり感染症にかかりやすかったりするので術後の合併症に注意するとともに、全身状態の管理がとても重要となります。

まとめ

白内障 糖尿病 まとめ

白内障のほとんどは加齢が原因のため、誰もがかかる可能性のある病気です。

しかし糖尿病があると白内障の発症が早まったり、進行が速まったりするので注意が必要となります。

糖尿病性白内障の治療においては、血糖コントロールは必須であり、手術にも大きな影響を及ぼします。

以前に比べ白内障手術は低侵襲になったため、糖尿病患者さんでもより安全性の高い手術が可能になりましたが、術後は炎症反応や感染症には依然注意が必要です。

この記事を読んで、白内障を含めさまざまな合併症を引き起こす糖尿病のリスクについて少しでも理解を深めていただければ幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柿崎 寛子医師(Vista medical center Shenzhen)

柿崎 寛子医師(Vista medical center Shenzhen)

三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科

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