2000年代初頭に普及し、数ある視力回復手術の中でも、もっともメジャーな手術と言われるようになったレーシック手術。自分も受けてみたいと検討しているものの、眼の手術ということもあり、「痛そうで怖い……」と不安に思われている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、レーシック手術は痛いのか否かについて詳しく解説します。手術の具体的な流れや、他の視力矯正手術との比較においてどれほどの痛みがあるのか、気になる疑問点をしっかりと解説していきます。
レーシック手術とは
レーシック手術とは、レーザーを眼の角膜に照射して、視力を回復させる眼科手術の一種です。特殊なレーザーを眼の角膜に照射してフラップ(ふた)を形成し、そのフラップを持ち上げた後、レーザーで角膜の下層組織を整えて視力を矯正します。
近視・遠視・乱視の矯正が可能で、個人差はありますが、メガネやコンタクトを装着しなくても不自由を感じない状態まで基本的に改善します。角膜を削って調整するため、レーシック手術を行うためには、十分な角膜厚が必要であり、矯正する度数が大きすぎる場合は、手術を受けられない場合もあります。
レーシック手術は健康保険の適用外でありますが、視力矯正手術のなかでは比較的コストは低く、手術時間やダウンタイムも非常に短いなど、負担が少なくて受けやすいと急速に普及し、多くの人々に選ばれるようになりました。
レーシック手術の基本的な流れ
レーシック手術を受ける際の基本的な流れは以下のとおりです。
1.手術前の準備
2.手術当日の流れ
3.手術後の経過観察
それぞれの行程について詳しく解説します。
・手術前の準備
レーシック手術をする際は、まず、適応検査を実施します。レーシック手術はすべての方が対応できるわけではないため、手術可能か否かを、事前に検査して判断する必要があるのです。なお、適応検査と手術を同日に行うことはありません。
普段コンタクトレンズを装着されている方は、一定期間装着を中止するよう指示されます。 コンタクトレンズが角膜の形状に影響を及ぼすためです。適応検査時にコンタクトレンズの影響がまだ残っていた場合は、再度別日に再検査を行うようになりますので注意が必要です。
また、アルコールを摂取すると眼圧が上がってしまう可能性があるため、前日に多量に摂取するのは控えておきましょう。
・手術当日の流れ
手術当日は、手術前に院内にて再度診察を行います。レーザー機器に影響を及ぼす恐れがあるため、当日は、目元の化粧や整髪剤の使用は控えるようにしてください。診察後に問題ないと判断されれば、点眼による眼の消毒および麻酔を実施します。
その後、レーザー照射によるレーシック手術を行います。状況にもよりますが、ほとんどの場合、両目合わせて約30分程度で完了するでしょう。手術後は回復室へ移動し、30分程度休んだのち、角膜の状態を確認する診察を行います。
問題なければ、点眼薬や保護用メガネをもらい、その日のうちに帰宅可能です。
・手術後の経過観察
レーシック手術終了後、経過観察をします。術後の翌日、数日後、1週間後と、定期的に診察を行い、経過を見ていきます。角膜上皮層が治癒するまでは、眼の炎症、感染症のリスクが高くなっている状態なので、頻繁に確認しケアする必要があるためです。まぶたを強くこすったり、衝撃を与えたりしないよう注意し、医師の指示されたとおりに過ごしましょう。
術後およそ1週間ほどで眼の違和感がなくなり、視界が安定します。その後3ヵ月ほどは、視力が多少変動する可能性がありますが、1年も経たずにそれも安定すると言われています。
レーシック手術のメリット
レーシック手術にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 代表的なメリットを以下に挙げましたので、参考にしてください。
・視力の大幅な改善
レーシックの代表的なメリットが、視力回復効果です。 近視・遠視・乱視を問わず改善が可能で、メガネやコンタクトレンズを装着するわずらわしさから解放されます。地震大国の日本において、災害時にメガネやコンタクトレンズを急いで装着しなくていいのは、大きなメリットと言えるでしょう。 コンタクトレンズの定期購入が不要になるため、ランニングコストを抑えられる効果も期待できます。また、手術後に症状が安定すれば、医師に相談のうえで、ソフトタイプのカラーコンタクトも装着可能になります。
・手術時間の短さ
レーシックは、手術時間が非常に短いのも魅力です。手術は両眼合わせても30~40分程度で終了し、手術前後の時間をトータルしても1~2時間ほどで完了します。入院も必要なく、即日に自宅へ帰宅できるため、日常生活への支障が少ないと言えます。
なお、手術日とは別の日に、手術を受けられるか否かを判断する適応検査を受ける必要があります。レーシック手術をしたいと思ったその日に、手術ができるわけではないので注意してください。
・回復期間の短さ
レーシックは術後の回復が早いのも特徴です。個人差はありますが、多くの場合、手術してから翌日には裸眼で生活できるレベルまで回復します。人によっては、術後数十分ほどで視力が回復する方もおり、状態が良ければ、術後から2日程度で仕事に復帰することも可能です。手術直後は、運転や入浴、メイクなど、さまざまな制限をかけられますが、比較的早い段階で今まで通りの生活を送れるようになるのは大きな魅力です。
レーシック手術は痛い?
「レーシック手術って痛いの?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。眼に直接実施する手術なので、どうしても不安になってしまうかもしれません。
ここでは、レーシック手術における痛みについて詳しくご紹介します。
手術中に痛いと感じる場合
レーシック手術は、驚くことに手術中にほとんど痛みを感じることはありません。その理由は、手術前に点眼麻酔を行うからです。この麻酔は、注射などの刺すような痛みを伴わない点眼タイプですので、注射のような痛みを心配する必要はありません。
ただし、手術中にはまぶたを動かさないように固定する専用器具を使用します。これにより、少しの圧迫感や違和感があるかもしれません。しかし、これは「痛み」とは異なる感覚です。レーザーを当てる際の感覚も特になく、視界はややぼやけるものの、大きなストレスや痛みを感じることはほとんどありません。
手術後に痛いと感じる場合
個人差はありますが、レーシック手術後に麻酔の効果が切れると、痛みが生じる場合があります。痛みの具合は人それぞれで、眼が少ししみる程度の方もいれば、まぶたが開けにくいような痛みを感じる方もいます。
また、手術後はドライアイになりやすくなるため、眼の乾燥による痛みが出るケースもあります。しかし、これらの症状は一時的なもので、日常生活に大きな支障をきたすような強い痛みが続くことは稀です。
レーシック手術の痛い感覚の種類
レーシック手術を受ける際、多くの方が「手術後の痛み」についての不安を抱えています。ここでは、手術後にどのような痛みが生じるのか、その特徴や種類について詳しく解説します。
レーシック手術の痛みの種類
個人差はあるものの、レーシック手術をして痛みを感じた方は、以下のような種類の痛みを感じる場合が多いです。
1.しみるようなヒリヒリとした痛み:これは、まるで辛いものを食べた後の舌の感覚のような、一時的なヒリヒリとした痛みです。
2.眼に異物が入ったようなチクチクした痛み:風で目に砂やほこりが入った時のような違和感を伴う痛みです。
また、稀に涙が止まらなくなる、あるいは眼を開けられなくなるほどの強い痛みを感じる方もいます。このような痛みは、手術後の一時的な反応として起こることがあります。
もし、上記で紹介した痛みの種類よりも、明らかに違う重い痛みを感じた場合や、痛みが長時間続く場合は、無理に我慢せず、速やかに担当医師に相談することをおすすめします。早期の対応が、後のトラブルを防ぐ鍵となります。
レーシック手術で痛いと感じた時の対処法
レーシック手術をすると、どれくらいの期間に痛みが生じるのでしょうか。 また、痛みが生じたときにどう対処するべきなのでしょうか。 ここでは痛みへの対処法について詳しく解説します。
痛みが続く期間
・手術直後の痛み
手術直後に麻酔が切れてくると、人によっては痛みが生じてくる場合があります。 麻酔が切れてからの痛みは、多くの場合翌日にはなくなり、人によっては数時間ほどでなくなるケースもあります。
・数日後の痛み
レーシック手術後の痛みは、人によっては数日ほど続く場合もあります。 この場合、長くても1週間ほどで痛みがなくなる場合がほとんどです。 ただし、レーシック手術をしてドライアイ症状になった場合、眼の乾燥による痛みが一定期間続く場合があります。レーシック手術後のドライアイ症状は一時的なもので、半年~1年ほどで改善されます。
・長期間続く痛み
レーシック手術直後のヒリヒリするような痛みが、1週間以上改善しない場合、眼に何らかのトラブルが発生している可能性が考えられます。そのまま放置しても改善しない恐れがあるため、痛みが長期間続いているのであれば、医師に相談して対策してもらいましょう。
痛みを和らげるための対策
・目薬の使用
レーシック手術後は、痛み止め用の点眼薬を処方されるため、それをさせば痛みが緩和されます。ただし、痛み止め目薬は強い薬のため、基本的に少量しか渡されず、手術後翌日以降の使用を不可とする場合も多いと言われています。ドライアイによる痛みが生じている場合は、医師に相談の上、点眼薬を処方してもらいましょう。
なお、手術直後は、市販の点眼薬の使用は基本的に不可となっており、数週間~数ヶ月程度は使わないよう医師に指示されます。
・休息の重要性
どの外科手術にも言えることですが、患部の痛みを和らげるためには、手術後に患部に負担を与えないようにすることが大切です。術後1週間は運動を避け、仕事も2日程度はお休みすることが望ましいです。アイラインなど目の周りのメイクも、できる限り控えるようにしましょう。
・適切な環境作り
ホコリやゴミ、光などの刺激から眼を守るために、保護用のメガネを普段から着用するようにしましょう。また、就寝時は、無意識に眼を刺激しがちなので、保護用の眼帯を装着するようにしてください。不要不急の外出は避け、眼に刺激を加えないような環境づくりを心がけましょう。
レーシック以外の矯正手術は痛い?視力矯正手術を比較検討
視力矯正のための手術方法は、レーシックだけではありません。ICLやPRKといった他の手術方法も存在し、それぞれに特有の特徴や痛みの度合いがあります。ここでは、それぞれの手術方法の特徴や痛みについて詳しく解説しますので、視力矯正手術を検討中の方は参考にしてみてください。
ICL(眼内コンタクトレンズ)
ICLは、眼の中に小さなレンズを挿入して視力を矯正する手術です。入院は必要なく、手術の翌日には視力の回復が期待でき、レーシックのように角膜を削らないので、ドライアイの原因になりにくいという特徴があります。また、レンズを眼の中に入れるため、手術後に再び近視に戻るリスクがほとんどないのも魅力です。
難点としては、手術用のレンズを発注する必要があり、レンズの在庫がないと、手術をするまでに数ヶ月ほどの待機期間が生じる場合がある点があげられます。また、保険も適用されず、レーシック手術よりも費用が高額となる場合が多いようです。
・ICL(眼内コンタクトレンズ)は痛い?
ICLは、レーシックと同様に点眼麻酔をするため、手術中にほとんど痛みは生じません。 手術後も、痛みはほとんどありませんが、眼がごろごろするなどの違和感が生じる場合があり、人によってはしみるような痛みを感じる方もいます。
ICLはレーシックと同様に、比較的痛みの少ない視力矯正手術であると言えます。
PRK(屈折矯正手術)
PRKは、眼の角膜をレーザーで削って視力を矯正する手術です。レーシックのように角膜フラップ(ふた)を形成しないため、角膜が薄い方でも施術が可能なのが特徴です。角膜を切開しないため、スポーツをされている方など、眼に衝撃が加わる可能性がある方にも適しています。
ただし、手術後の回復期間はレーシックよりも長く、安定するまで1ヶ月程度を要します。回復はゆっくりですが、最終的にはレーシックと同等のレベルまで見えるようになります。
・PRK(屈折矯正手術)は痛い?
手術中は点眼麻酔をするため、基本的に痛みを感じません。手術後は治療用ソフトコンタクトレンズを装着するのですが、ヒリヒリ・チクチクとした痛みが数日ほど続くことがあります。痛みは徐々に引いていきますが、人によっては、1週間以上痛みが続く人もいます。基本的に、レーシックよりも痛みが出やすい傾向にあるようです。
まとめ
レーシック手術は、近視・乱視・遠視に悩む人を良好な状態に改善し、日帰りも可能で回復期間も短いなど、メリットの多い視力矯正手術です。
手術中は点眼麻酔をするためほとんど痛みを感じませんが、手術後はヒリヒリ・チクチクとした痛みが生じる場合があります。多少の痛みは生じるものの、多くの場合数日ほどでなくなるため、痛みを過度に恐れる必要はないと言えるでしょう。
「裸眼でもっと自由に見えるようになりたい」とお考えなら、痛みのリスク以上のメリットが得られる可能性が高いでしょう。
参考文献