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緑内障手術の入院期間は?目安と手術後の流れや注意点を解説

緑内障手術の入院期間は?目安と手術後の流れや注意点を解説

緑内障は中高年で多い目の病気で、日本の失明原因の第一位ともいわれますが、早期発見と適切な治療によって多くの場合は視力と視野を維持できます。緑内障の治療はまず点眼薬による眼圧コントロールが基本ですが、進行を防ぐために手術が必要になるケースもあります。本記事では、緑内障手術が必要となるケースや手術の種類・所要時間、さらに入院の必要性と期間・手術当日の流れ、そして手術後の注意点や通院・職場復帰の目安までを解説します。

緑内障手術の基礎知識

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緑内障で手術が必要なケースを教えてください
緑内障は基本的に点眼薬や内服薬などの薬物療法から開始します。しかし、点眼薬で眼圧が十分下がらず病状が進行する場合には、眼圧を下げるための手術治療を検討します。
しかし緑内障の手術を行っても、すでに失われた視野や視力が回復するわけではありません。あくまで眼圧を下げてこれ以上の進行・悪化を食い止めることが目的であり、治療のゴールは視機能の維持です。手術適応の判断や時期については患者さんそれぞれの病状によりますので、主治医と十分に相談して決めることが重要です。
緑内障の手術にはどのような種類がありますか?
緑内障の治療法には大きく薬物療法・レーザー治療・手術の3種類があります。ここでいう手術にはメスを使う観血的手術だけでなく、レーザーによる処置も含まれます。緑内障手術の主な種類を整理すると、以下のようになります。
  • レーザーによる手術 レーザー虹彩切開術(LI)、選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
  • 観血的な手術(メスを使う手術) 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)、線維柱帯切開術(トラベクロトミーなど)
  • 低侵襲緑内障手術(MIGS) マイクロフックを用いた線維柱帯切開術、iStent挿入術など
緑内障の手術は何時間かかりますか?
手術の所要時間は術式によって大きく異なりますが、ここではおおよその目安を示します。レーザー治療の場合は数分程度(5分前後)で終了します。点眼麻酔のみで行い、準備含めても短時間で済みます。また、低侵襲緑内障手術(MIGS)の場合、手術そのものは10分程度と短時間です。
白内障手術と同時に行うケースでも手術時間がその分延びるだけになります。観血的手術の場合、30分~1時間程度が一つの目安です。手術内容や患者さんの状態によっては1~2時間程度かかることもあります。このように行う治療によって、手術時間は大きく異なります。

緑内障手術の入院期間と手術の流れ

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緑内障手術を行う際は入院が必要ですか?
眼科医療や手術機器の発達により緑内障手術も入院せず受けられる時代になってきました。特に、レーザー手術やMIGSなど低侵襲の手術は身体への負担も少ないため、入院の必要がないケースがほとんどです。ただし、患者さんの全身状態や観血的手術など手術の内容によっては医師の判断で入院がすすめられる場合もあります。主治医から入院が必要といわれた場合も慌てずに、事前に入院期間の目安や準備すべきことを確認しておきましょう。
緑内障手術で入院が必要になった場合の入院期間を教えてください
入院期間も手術の種類や患者さんの状態によって変わりますが、一般的には数日~1週間程度とされることが多いです。場合によっては1~2泊ほどの短期入院で済むこともあります。入院期間が長くなりやすいものは、線維柱帯切除術のように術後の管理が重要な手術では、術後1~2週間程度の入院が必要とされることがあります。このように幅があるため、事前に主治医からおおよその入院日数を聞いておくと安心です。
緑内障手術の流れを教えてください
手術当日までの準備から退院までの大まかな流れは次のようになります。
  1. 手術前日~当日朝の準備
    入院または外来手術の場合でも、手術前には眼科で各種検査(視力・眼圧・眼底検査、必要に応じて血液検査や心電図など)を行います。入院の場合は必要書類の確認や病棟・手術室の案内があります。
  2. 手術直前の処置・麻酔
    手術の約1~2時間前から手術前の点眼薬が開始されます。局所麻酔の場合は手術室で眼の周囲に麻酔の注射を行うか、点眼による表面麻酔を行います。
  3. 手術
    手術は顕微鏡をのぞきながら細かい器具を使って行われます。所要時間は前述のとおり術式によって異なりますが、途中で痛みを感じたり気分が悪くなったりした場合は遠慮なく伝えてください。
  4. 手術直後の処置
    手術が終わると、手術した目には眼帯があてられます。点眼治療は引き続き必要なので、術後すぐから抗生剤の点滴や点眼薬の開始があります。
  5. 術後の経過観察と退院
    手術翌日には主治医の診察があり、眼帯を外して眼の状態(眼圧や傷の具合)をチェックします。問題がなければ点眼治療の指示を受け、退院日が決まります。入院の場合は数日間、毎日または隔日の診察で経過を確認し、必要に応じて処置を行います。
  6. 退院~自宅療養
    退院後は基本的に自宅で安静に過ごしながら、指示どおり点眼や内服を継続します。

以上が一般的な流れです。手術を受ける施設や術式によって多少手順は異なりますが、大切なのはわからないことはその都度確認し、不安なことは遠慮なくスタッフに相談することです。

緑内障で入院中にリハビリは必要ですか?
いいえ、特にリハビリテーション(機能訓練)の必要はありません。眼の手術ですので、整形外科の手術後のようなリハビリ体操や歩行訓練などは基本的に行いません。むしろ大事なのは術後安静にして目を休めることです。入院中は安静度の指示があり、無理のない範囲で生活します。

緑内障手術後の注意点

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緑内障手術後に注意すべきことはありますか?
はい、術後の目を守るためにいくつか大切な注意点があります。主な事項は下記のとおりです。
    • 目をこする・押す行為は禁止
    • 術後しばらくは安静に
    • 清潔と感染予防
      手術後は感染予防が重要です。目に汚れた水や埃が入らないように注意しましょう。また顔や頭を洗うのも1週間以上制限されたり、手術後点眼薬を指示どおりに使ったりすることが重要です。

以上の点を守りつつ、無理をせず規則正しい生活を送ることが大切です。退院時に渡される術後の注意点の指示書をよく読み、わからないことはそのままにせず医療者に問い合わせましょう。

緑内障手術後の通院頻度を教えてください
術後の通院の頻度は、術後経過によって段階的に変わっていきます。手術直後~退院後しばらくは頻繁に通院が必要です。例えば、術後翌日、その数日後、1週間後といった具合に最初の数週間は毎週あるいは週に数回受診し、眼圧や傷の治り具合を確認します。
緑内障手術後はどのような治療が行われますか?
緑内障手術後も、引き続きいくつかの治療が行われます。大きく分けると、術後合併症を防ぐための治療と、緑内障自体の進行を防ぐための治療です。手術直後から感染予防や炎症防止のための点眼治療が始まります。これは自己判断で調整するのではなく、患者さんの状態に応じて主治医が調整しますのでその指示に従うことが重要です。
また、手術によって眼圧が十分下がっているか、術後経過で変動していないかを見ながら、必要に応じて従来の緑内障点眼治療を継続または再開します。もちろん、緑内障手術後に眼圧管理が良好で、進行も緩やかであれば点眼薬を用いない場合もあります。しかし、現実には緑内障手術を行っても点眼薬を続けることは少なくありません。このように緑内障手術を終えたら治療が終わるわけではないことは念頭に置いておく必要があります。
緑内障手術後の職場復帰の目安を教えてください
職場復帰の時期は、手術の種類と術後経過、さらにお仕事の内容によって変わってきます。一般的な目安を述べると、デスクワークなど身体に負担の少ない仕事であれば早ければ手術翌日から復帰可能です。一方、身体を動かす量が多い仕事(立ち仕事や肉体労働など)は、術後1~3週間程度はお休みしたほうがよいでしょう。該当する業務がある方は、職場で事情を説明して一時的に同僚に代わってもらうなどした方が安心です。

編集部まとめ

まとめ

緑内障手術について、その必要性から術後の注意点まで解説しました。緑内障の手術は眼圧を下げて視野のこれ以上の悪化を防ぐために行われる治療であり、決して特別なケースだけのものではありません。点眼治療で十分効果が得られない場合には誰にでも起こりうる選択肢です。手術と聞くと不安かもしれませんが、不明な点は主治医に質問し、納得したうえで治療を受けることが大切です。術後も定期的な通院と治療の継続は必要ですが、それは将来の視力を守るための大事な治療です。ご本人だけでなくご家族も正しい知識を持ち、協力して治療に臨んでください。緑内障と上手に付き合いつつ、できるだけ普段どおりの生活が送れるよう、本記事の情報がお役に立てば幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
栗原 大智医師(眼科医)

栗原 大智医師(眼科医)

2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。 / 資格:日本眼科学会専門医

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