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スマホが緑内障の原因になるって本当?緑内障の原因・症状・予防法も解説

緑内障 原因 スマホ

緑内障は視野が失われる病気で失明原因の第1位です。しかし40歳以上の約5%が緑内障と予測され、決して珍しい病気ではありません。

若い患者さんもいることからスマホとの関連性についてさまざまな意見がありますが、スマホが普及してまだ日が浅く十分なエビデンスが揃っているわけではありません。

そこでこの記事では、公的機関などの信頼のおける情報をもとに、スマホとの関連性も含め緑内障の原因・症状・予防法について解説します。

緑内障は適切な治療を行えば視野を維持できる病気であることがわかっていますので、いたずらに怖がることなく正しく理解していただければ幸いです。

緑内障の原因や症状

目が痛い人

緑内障とはどのような病気ですか?
緑内障は目と脳をつなぐ視神経がダメージを受け、視野障害が進行し視力が失われる病気です。放置すると失明の危険性がありますが、適切な治療をすれば病気の進行を抑制することができます。
網膜にある網膜神経節細胞からは軸索(視神経線維)が長く伸びており、約100万本が視神経乳頭でひとつの束になり視神経を形成し脳につながっています。細胞が担っていた部分の視野が失われてしまうのです。
眼圧が上昇し視神経乳頭に負荷がかかると、視神経線維が圧迫されダメージを受けて網膜神経節細胞死となり、眼圧は房水という液体が毛様体から分泌され、隅角にあるフィルター(線維柱帯)を通って排出されて循環することで一定に保たれています。しかし何らかの原因で房水がうまく排出されないと、眼圧が高くなり視神経線維が圧迫され網膜神経節細胞死となり視野障害が起こり緑内障となります。
緑内障は原発性緑内障・続発性緑内障・発達緑内障に分類され、患者数が多いのは原発性緑内障に属する開放隅角緑内障(隅角部分が開いている)と閉塞隅角緑内障(隅角部分が閉じている)です。
緑内障の症状について教えてください。
開放隅角緑内障の進行はゆるやかなため、病気の初期では自覚症状はほとんどありません。片目に視野の異常が生じても、両目で見ると視野を補い合うためなかなか気づきにくいといわれます。視野異常は黒くはっきりと見えなくなるのではなく以下のように表現されます。

  • 透けて見える
  • かすんで見える
  • まだらに見える
  • グレーに見える

そのため視野異常を単に目の疲れや老眼と勘違いする方も多いようです。 閉塞隅角緑内障では通常は眼圧がほぼ正常なことが多いため自覚症状はありませんが、急性発作を起こすと急激に眼圧が上昇し頭痛や眼の痛みが生じます。

緑内障の原因について教えてください。
緑内障の原因は明確にはわかっていません。以前は眼圧が高いことが原因とされていましたが、眼圧が正常範囲内(10~20mmHg)でも緑内障を発症する場合があることからさまざまな要因があると考えられています。
おもな要因は以下のとおりです。

  • 視神経の脆弱性
  • 血流不足
  • 免疫の異常

しかしいずれも確実なエビデンスはなく、はっきりした原因はわかっていません。発症や進行に関わる危険因子としては以下が知られています。

  • 高眼圧
  • 加齢
  • 家族歴
  • 低血圧
  • 2型糖尿病
  • 強度近視

なかでも眼圧は大きな要素であり、眼圧を十分に下げることで病気の進行を抑制できることがわかっています。

緑内障にスマホは関係ある?

悩む人

スマホが原因で緑内障になることがあるのですか?
緑内障の原因は明確にはわかっていないことに加え、スマホが普及して日が浅く十分なエビデンスが揃っていないのが実情です。今のところスマホが直接的な原因で緑内障になったという報告はありません。しかしスマホの長時間使用は目に悪影響を及ぼす可能性があることが知られています。
スマホのディスプレイにはLEDが使用されており、画面からブルーライトが発生していることをご存知の方も多いでしょう。ブルーライトは波長が短いため、目に与える影響が問題です。
波長が短い光は空気中のちり・ほこりにあたって散乱しやすくブレやちらつきが生じるため、調節しようとした目に負担がかかり眼精疲労が起こりやすくなります。また波長の短い光はエネルギーが高く、網膜にダメージを与えやすく加齢黄斑変性のリスクが高まります。
スマホに夢中になり長時間画面に集中していると、目の筋肉が凝り固まってピントを合わせる機能が低下し近視化を招いたり、目の筋肉に疲労がたまったりします。近くを見るときには、毛様体の輪状筋が緊張・収縮し水晶体が厚みを増して屈折力を増加させピントを合わせますが、近くを見続けていると水晶体の屈折力は増加したままになり近視化が起こると考えられています。
眼精疲労が改善せず毛様体の緊張が持続したままだと、毛様体近くの隅角も影響を受け房水が流出しにくくなり眼圧が上昇することもあるので注意が必要です。
スマホが直接的な緑内障の原因ではないにしても、緑内障になりやすい状況を引き起こすと考えられます。スマホを長時間使用すると目の健康にとってさまざまな悪影響があるため、使用に際しては適度な休止時間を設けるようにしましょう。
厚生労働省のガイドラインではデジタルディスプレイ機器の作業時間は1時間ごとに10~15分の作業休止時間を設けるよう推奨しています。
年齢が若くてもスマホが原因で緑内障になることはありますか?
若くても緑内障の方はいます。小児のかかる緑内障としては発達緑内障が知られており、生まれつき隅角に異常があることが原因で起こるとされ、発症頻度は約3万人に1人です。
生後早期に発症する早発型緑内障や、異常が軽度なため遅れて(10~20代)発症する遅発型緑内障などがあります。遅発型緑内障は自覚症状がなく発見が遅れることが多いです。本人が遅発型緑内障と自覚していない場合、スマホで眼精疲労が生じることは緑内障を悪化させ非常に危険であるといえます。
若い方でも家族に緑内障の方がいる場合や強度近視の方は緑内障になりやすいといわれていますが、スマホが直接的な原因で発症したという報告はありません。健常な方でもスマホを長時間使用すると眼精疲労により近視化や眼圧が上昇することがあるため、長期的に考えて緑内障になりやすい状況を避けるためにも使用時間に注意して上手にスマホと付き合うことが大切です。

緑内障の検査や治療方法

検査

緑内障が疑われる場合どのような検査を行いますか?
おもな緑内障の検査は以下のとおりです。

  • 眼底検査
  • 視野検査
  • 隅角検査
  • 眼圧検査

緑内障は視神経と視野に特徴的変化があるとされ、眼底検査と視野検査は非常に重要です。眼底検査で視神経乳頭付近の視神経の状態を確認します。近年は光干渉断層計(OCT)により網膜の断面を調べることが可能となり、より正確に障害の程度がわかるようになりました。
視野検査では検査を行う視能訓練士が視標を動かして視野を調べる動的視野検査と、コンピュータで自動的に視野を調べる静的視野検査があります。隅角検査は隅角が開いているか閉じているか病型の分類上必要な検査です。
眼圧の高低で緑内障を診断するわけではなく、ベースライン(治療開始前)の眼圧を確認し治療に活かすため依然として重要な意味を持ちます。

緑内障の治療方法について教えてください。
唯一エビデンスがあるのは眼圧下降療法といわれています。進行の止まる眼圧値は個人差があるため、患者さんの背景やベースラインの眼圧を考慮して目標眼圧を設定します。治療方法は以下の3つです。

  • 薬物治療
  • レーザー治療
  • 手術

まずは点眼治療を行い、効果が不十分であれば点眼薬を追加します。おもな点眼薬は以下のとおりです。

  • プロスタグランジン関連薬(PG関連薬)
  • 交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬)
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
  • 交感神経α2受容体作動薬(α2作動薬)
  • Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)

第一選択薬として房水流出促進作用のあるPG関連薬が使用されることが多く、効果が不十分だったり、副作用(刺激感・色素沈着など)があったりした場合は房水産生抑制作用のあるβ遮断薬の追加や変更が検討されます。目薬は眼圧を維持するためのものなので、長期的に継続することが重要です。
点眼薬で効果が不十分であればレーザー治療を行います。房水の流出口である隅角の中のフィルター(線維柱帯)部分にレーザーを照射し房水の排出を促進します。レーザー治療は痛みも少なく、外来で行うことができる治療です。
さらに眼圧を下げる必要がある場合には手術を行います。残念ながら手術によって失われた視神経や視野は回復せず、眼圧を下げる目的で行われます。
手術は大きく分けて以下の2つです。

  • 線維柱帯切開術
  • 線維柱帯切除術

線維柱帯切開術は、隅角のフィルター部分である線維柱帯を切開し房水の流出を促進させる目的で行われます。近年、体にあまり負担のかからない低侵襲緑内障手術(MIGS)が普及しつつあります。
MIGSにはさまざまな術式があり、場合によっては白内障と同時手術することも可能です。線維柱帯切除術は大きな眼圧下降効果が得られますが、術後の管理が難しいです。
手術は病型・病期によって選択されますが、手術を行っても確実に眼圧が下がるわけではなく再手術が必要なケースもあります。

緑内障の早期発見や予防法

診察

緑内障を早期発見するにはどうしたらよいですか?
緑内障は早期発見・早期治療できれば病気の進行を防ぐことが可能です。片目ずつ視野を確認することでセルフチェックもできますが、確実な方法としては、以下の3つがあります。

  • 眼底検査を含んだ検診を受ける
  • 病気がなくても眼科を受診して緑内障は大丈夫か医師に確認する
  • 緑内障の疑いなしといわれてもその後も定期的にチェックを受ける

すべての健診で眼底検査が行われているわけではありませんが、人間ドックや事業所などによる定期健診で眼底検査がある場合は受けることをおすすめします。健診で眼底検査を受ける機会がない場合は、症状がなくても眼科を受診して緑内障の検査を受けましょう。
また異常がなくてもその後も定期的に検査を受けることをおすすめします。

緑内障の予防法を教えてください。
緑内障の原因がはっきりわかっていないため効果的な予防法はないといわれています。しかし緑内障は早期発見・早期治療で視野・視力の低下を予防することは可能です。
唯一の予防策は、「早期発見・早期治療」といえます。自覚症状がなくても定期的に緑内障の検査を受けましょう。直接的な効果は別として、ウォーキングやジョギングなど適度な運動は、眼圧を下げるのに役立つとされています。
また暗い部屋での読み書きや喫煙は視神経に対してリスクがあるので避けましょう。
ブルーライトを効果的に防ぐ方法はありますか?
ブルーライトを減らすにはまず画面設定で輝度を減らすとよいでしょう。ブルーライトをカットするフィルムを画面に貼ることも効果的です。
デジタル端末から発せられるブルーライトは窓越しの自然光よりも少なく、網膜に障害を与えるレベルではないとの意見もあり、いたずらに恐れる必要はないとされています。また小児にとって太陽光は近視予防の面でも必要なため、小児のブルーライト眼鏡装用は発育に悪影響を与えかねないともされており評価が定まっていません。

編集部まとめ

スマートフォン

緑内障は放置していると失明する可能性のある病気ですが、早期発見・早期治療すれば視野を失うことなく普通に生活できるので過度に恐れる必要はありません。

はっきりした原因がわかっておらず確実な予防法もありませんが、長い将来を見据えて必要な対策は講じておきたいものです。得策としては定期的な眼科受診をおすすめします。

スマホはもはや必需品ですので、緑内障を含め健康への長期的影響を考慮しつつ適正使用を心がけましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

柳 靖雄医師(横浜市大 視覚再生外科学客員教授 お花茶屋眼科院長)

東京大学医学部卒業(1995年 MD)/ 東京大学大学院修了(医学博士 2001年 PhD) / 東京大学医学部眼科学教室講師(2012-2015年) / デューク・シンガポール国立大学医学部准教授(2016年-2020年)/ 旭川医科大学眼科学教室教授(2018年-2020年) / 横浜市立大学 視覚再生外科学 客員教授(2020年-現在) / 専門は黄斑疾患。シンガポールをはじめとした国際的な活動に加え、都内のお花茶 屋眼科での勤務やDeepEyeVision株式会社の取締役を務めるなど、マルチに活躍し ています。また、基礎医学の学術的バックグラウンドを持ち、医療経済研究、創薬、国際共同臨床研究などを行っています。

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