硝子体手術とはどんな手術なのかご存知でしょうか?
本記事では硝子体手術について以下の点を中心にご紹介します。
- 硝子体手術とは?
- 硝子体手術が行われる目の疾患とは?
- 硝子体手術の合併症とは?
硝子体手術について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
そもそも硝子体手術とは?
硝子体手術は、眼の内部に存在する硝子体というゼリー状の組織を対象とした手術です。
硝子体は、眼球の大部分を占め、眼球の形状を保持し、外部からの圧力や衝撃を分散する役割を果たしています。
硝子体手術は、網膜に何らかの異常が発生した場合、例えば糖尿病網膜症や網膜剥離などに対して行われます。
網膜を含む目の奥の神経が一度損傷すると、現代の医療技術では修復できないといわれています。そのため、硝子体手術は、網膜を保護するための手段といえます。
硝子体手術は、白目の部分を通じて微細な器具を眼内に挿入し、硝子体を取り、網膜を治療したりする手術です。
具体的には、硝子体カッターを使用して出血や混濁した硝子体を切除し、吸引除去します。
硝子体手術は非常に繊細で難易度が高く、通常は局所麻酔下で行われ、手術時間は約1時間〜2時間以上に及ぶこともあるといわれています。
硝子体手術には、感染症や網膜剥離などのリスクが存在するため、手術前に医師と十分に話し合うことが重要です。
また、手術後のケアも重要で、術後約1〜2週間の安静と、指示された点眼薬の使用、視力の変化があった場合の早期受診が必要です。
なぜ硝子体手術が必要になるのか
硝子体手術は、硝子体に濁りがあると視力低下に繋がるため、治療が必要となります。
加齢や疾患により硝子体が変質し、網膜を引っ張る、出血で透明性が損なわれるなどの問題が生じることがあります。
したがって、この問題は視力に影響を及ぼす可能性があるため、硝子体手術が必要となります。
硝子体手術が行われる目の疾患
硝子体手術は、特定の眼の疾患が発生した際に行われます。
以下では、硝子体手術が必要な眼の疾患について解説します。
- 黄斑前膜(網膜前膜):黄斑という視覚に重要な部分の上に、蜘蛛の巣やセロハンテープのような膜が形成され、視力低下や物体の歪みを引き起こす病気です。
- 黄斑円孔:黄斑部に小さな穴が開く病気で、中心視力の低下を引き起こします。
- 網膜剥離:眼の内側の壁に存在する網膜が剥がれてしまう病気です。これは視野が欠けてしまう症状を引き起こし、黄斑部まで剥がれてしまうと大きな視力障害を引き起こす可能性があります。
- 硝子体出血:硝子体内に出血が広がり、視力低下を引き起こします。
- 近視性牽引黄斑症:高度な近視の人々に見られる病気で、網膜の一部が引っ張られ、黄斑部が変形することで視力が低下します。
- 眼内レンズ脱臼:人工レンズが正しい位置からずれてしまう状態で、視力低下を引き起こします。
これらの疾患は、硝子体手術によって治療できるとされています。
硝子体手術にはリスクも伴うため、手術を受けるかどうかを決定する前に、医師とよく相談することが重要です。
硝子体手術までの主な流れ
硝子体手術までの主な流れについてご存知でしょうか? 以下では、硝子体手術までの主な流れについて解説します。
手術前の精密検査
手術を受ける前には、患者さんの目の状態を詳しく調べるための精密検査が行われます。
手術前の精密検査は、手術の成功率を高めるためにも重要です。
まず、患者さんの目の症状や疾患の状態を詳しく調べるために、専門的な眼科検査が行われます。
これには、視力検査、眼圧測定、眼底検査などが含まれます。
これらの検査により、手術の必要性や手術方法の選択、手術のリスクなどを評価します。
また、手術を受ける際に体に問題がないかを確認するために、かかりつけの医師に相談することもあります。
これには、心臓病や糖尿病などの既存の疾患が手術に影響を及ぼす可能性があるかどうかを確認することが含まれます。
準備
手術は、患者さんが横たわった状態で行われます。
初めに、眼の周囲と表面は丁寧に消毒されます。
次に、清潔な手術用シートが顔全体に掛けられ、さらに眼の周囲には抗菌シールが貼られます。
その後、患者さんが眼を開けていられるように、まぶたに特殊な器具が設置され、これにより手術の準備が完了します。
手術は、眼科専用の顕微鏡を使用して行われます。そのため、手術中は上方から強い光が照射されますが、その明るさには徐々に順応していきます。
手術中、眼が触れられたり、軽く押される感覚がありますが、痛みはほとんど感じないとされています。
麻酔
眼科手術では、患者さんが痛みを感じないようにするために麻酔が行われます。
麻酔は、手術を受ける眼だけに効果を発揮する局所麻酔と呼ばれるもので、全身麻酔ではありません。
まず、眼に点眼麻酔を行い、その後、白目の表面を覆う薄い皮膚の下に麻酔薬を染み込ませる方法が一般的です。
この方法は「テノン嚢下麻酔」と呼ばれ、注射は行われませんので、麻酔による痛みはほとんどないとされています。
テノン嚢下麻酔は、手術中の痛みを抑えるだけでなく、手術後の回復も早くなるといわれています。
また、局所麻酔のため、手術中も意識がはっきりしており、耳も聞こえ、話すことも可能です。
これにより、手術中に何か不快感があった場合は、すぐに医師に伝えられます。
手術当日
手術当日は、手術開始の約1時間前にクリニックに到着していただきます。 朝食や昼食は通常通り摂取して構いません。 心電図や血圧計を装着するため、リラックスした服装で来院してください。
手術では、眼球に微小な穴を3〜4ヶ所程開け、そこにトロカールと呼ばれる器具を挿入します。
1箇所に注入針を固定し、灌流液を注入して眼圧を保ちます。
同時に、別の箇所から照明器具や硝子体カッターを挿入し、出血や混濁により視界が悪くなった硝子体や膜状の組織を切除し、吸引除去します。
疾患の種類により、網膜上の膜をピンセットのような器具で剥がし、網膜にレーザーを照射したりと、必要な処置が行われます。
網膜剥離や黄斑円孔などの疾患の場合、灌流液をガスに交換して手術を終了します。
手術時間は症例によりますが、約20分〜1時間で終了します。
手術が終了した後は、一旦クリニック内で休息していただきます。
その後、注意事項を再確認し、保護眼帯を装着したまま、お帰りいただきます。
硝子体手術の合併症
硝子体手術は、一定のリスクと合併症が伴います。
硝子体手術の合併症は、手術後の視力回復を遅らせる可能性があり、場合によっては新たな視力問題を引き起こす場合もあります。
以下では、硝子体手術の合併症について解説します。
網膜裂孔
網膜裂孔は、眼の網膜に生じた穴や裂け目のことを指します。
この状態は、視力に影響を及ぼす可能性があり、放置してしまうと網膜剥離を引き起こす可能性があります。
網膜裂孔は、2つに分類されます。
一つは「萎縮性裂孔」で、硝子体の変性や萎縮が原因で発生します。
もう一つは「牽引性裂孔」で、硝子体と網膜が癒着し、その結果、網膜が硝子体に引き寄せられて生じます。
網膜裂孔の主な症状としては、飛蚊症(虫のようなものが黒い点や、糸くずのような浮遊物が見える気がする)や光視症(目をつぶっていても光が見える)があります。
網膜裂孔の治療は、裂孔が生じた初期段階であれば、レーザー治療や冷凍治療を用いて裂孔の周囲を固め、裂孔が広がらないようにすることが可能とされています。
しかし、網膜がすでに剥離している場合には、網膜を元の位置に戻すための手術が必要となります
駆逐性出血
駆逐性出血は、眼内の血行動態変化によって起こる網膜下の大出血で、駆逐性出血が発生すると、ほとんど失明状態となります。
駆逐性出血の発生頻度はかなり低いようですが、発生の予測が出来ず、予防も出来ないため、合併症のなかでも恐れられています。
眼内の血管が物理的な狭窄や閉塞により血液の流出が妨げられて、脈絡膜の血圧上昇が起こります。
さらに、眼内圧低下、血圧上昇、咳嗽発作などによる眼窩圧上昇が相乗的に働き、脈絡膜血管が脆弱化している場合は破綻をきたし、短後毛様体動脈からの出血が駆逐性出血となります。
駆逐性出血は、手術中に突然発生することがあります。
血圧がかなり高かったり、手術中に目に力を入れてしまうと発生する確率が高くなるため、リラックスした状態で手術を受けることが推奨されています。
眼圧の上昇
眼圧の上昇は、眼科手術後に見られる一般的な現象で、特に硝子体手術後に起こることがあります。
手術後の炎症が原因で、一時的に眼圧が上昇することがありますが、点眼薬や内服薬の使用によって眼圧は下がります。
しかし、長期間、点眼剤を使用しなければならない場合もあります。
硝子体出血
硝子体手術は、眼内の問題を解決するための一つの方法であり、その一部として硝子体出血の治療が含まれます。
しかし、手術自体が硝子体出血の原因となる可能性もあります。
手術では、眼球の白目部分に小さな穴を開け、特殊な器具を眼内に挿入して硝子体を切除します。
その後、疾患に応じて網膜に追加の操作を行います。
手術後の視力回復は疾患によりますが、術後半年程度で視力の回復が期待できます。
また、手術後は一時的に眼圧が上昇することがありますが、ほとんどの場合、点眼薬や内服薬で眼圧が下がるとされています。
網膜剥離
網膜剥離は、網膜が眼球の内壁から剥がれる状態を指します。
これは、硝子体手術後にさまざまな原因で起こる可能性があります。
網膜剥離が発生した場合、視力を保つためには再度の硝子体手術が必要となり、網膜剥離を治療する必要があります。
網膜剥離は重大な合併症であり、適切な治療が行われない場合、視力を完全に失う可能性もあります。
しかし、適切な手術と治療により、多くの場合、視力を回復することが可能とされています。
硝子体手術の痛み
硝子体手術には痛みがあるのでしょうか? 以下では、硝子体手術の痛みについて解説します。
手術前の麻酔
麻酔は手術中の痛みを軽減するためのものですが、その一方で、麻酔自体が患者さんにとっては新たな痛みの原因となることがあります。
以下では、硝子体手術前の麻酔による痛みについて詳しく解説します。
テノン嚢下麻酔
テノン嚢下麻酔は、眼科手術において一般的に用いられる局所麻酔の一つです。
テノン嚢下麻酔では、眼球を覆う結膜とテノン嚢という薄皮の間に麻酔薬を注入します。
テノン嚢下麻酔は、麻酔時の痛みが少なく、合併症発生の危険も低いとされています。
(但し、痛みに関しては個人差があります)
テノン嚢下麻酔は、麻酔の効果が球後麻酔と比較して軽く、持続時間も短いという特性を持っています。
そのため、テノン嚢下麻酔を硝子体手術で使用するためには、手術の痛みを抑え、手術時間を短縮し、手術を確実に完了させられるような、高度な硝子体手術の技術が必要となります。
これは、テノン嚢下麻酔を用いる際の前提条件となります。
テノン嚢下麻酔は、小さな切開から手術を行うことで、傷口からの出血や感染のリスク、そして術後の痛みを軽減でき、傷の治癒が早まることで、術後の回復過程もスムーズに進むという利点があります。
そのため、患者さんへの負担が軽く、日帰りでの硝子体手術が可能とされています。
点眼薬による麻酔
硝子体手術では、点眼麻酔と注射による麻酔が組み合わせて使用されます。
まず、点眼麻酔が行われ、その後に注射の麻酔が行われます。
点眼麻酔は、眼球の表面を麻痺させるために使用されます。
これにより、手術中の不快感や痛みを軽減できるとされています。
点眼麻酔は、通常、手術前に行われ、比較的短時間で効果が現れることが期待されています。
一般的には、点眼麻酔の痛みをほとんど感じないとされています。
しかし、個々で感じ方は異なるため、一部の患者さんは点眼時に軽い刺激感を感じる場合があります。
点眼麻酔が効いた後に注射の麻酔が行われますが、この時点で眼球の表面は既に麻痺しているため、注射による痛みはほとんどないとされています。
球後麻酔
球後麻酔は、眼科手術において一般的に用いられる局所麻酔の一つです。
球後麻酔では、眼球の後方に向かって深く針を刺し、麻酔薬を注入します。
球後麻酔の効果は強力で、手術中の痛みを大幅に軽減できるとされています。
しかし、注射時には相応の痛みを伴うことがあります。
また、稀に眼の奥の血管を傷つけて大量の出血(これを球後出血と呼びます)を引き起こし、誤って眼球に針が刺さったりする(これを眼球穿孔と呼びます)などの合併症を引き起こすことがあります。
手術の最中の痛み
網膜硝子体手術は、局所麻酔下で行われるため、痛みを感じることはほとんどないといわれています。
網膜硝子体手術は、一般的には、まず点眼麻酔を行い、その後に注射による麻酔を追加します。
この組み合わせにより、手術中の痛みはほとんど感じないとされています。
手術中に感じるのは、器具が眼球に触れる感覚程度です。
手術後の痛みや違和感
手術後、麻酔が切れてきても多少の違和感が残る程度で、痛みはほとんどないといわれています。
手術後には痛み止めの薬が処方されますが、ほとんどの方は使用することはないとされています。
また、手術後しばらくは感染をおこさないか注意する必要があります。
手術後約3ヵ月間は炎症を抑え、ばい菌感染を防ぐため点眼薬が処方されます。
まとめ
ここまで硝子体手術についてお伝えしてきました。 硝子体手術についての要点をまとめると以下の通りです。
- 箇硝子体手術とは、眼の内部に存在する硝子体というゼリー状の組織を対象とした手術である
- 硝子体手術が行われる目の疾患として、黄斑前膜(網膜前膜)、黄斑円孔、網膜剥離、硝子体出血、近視性牽引黄斑症、眼内レンズ脱臼などが挙げられる
- 硝子体手術の合併症として、網膜裂孔、駆逐性出血、眼圧の上昇、硝子体出血、網膜剥離などが挙げられる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。