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ICLをやらなきゃよかったと後悔する理由は?安全性とリスクの現状まで詳しく解説!

ICLをやらなきゃよかったと後悔する理由は?安全性とリスクの現状まで詳しく解説!

ICL(眼内コンタクトレンズ)に興味をお持ちの20~30代の方のなかには、手術後に「やらなきゃよかったと後悔することはないだろうか?」という不安を抱える方も少なくありません。本記事では、ICLのリスクや安全性の現状、また、どういった理由で「やらなきゃよかった」と感じる事例があるのか、そして後悔しないためのポイントや術後ケアの重要性について解説します。

ICLとは

ICLとは

ICLとはImplantable Collamer Lensの略で、眼内コンタクトレンズと呼ばれる視力矯正手術です。目の中の水晶体(レンズ)を残したまま、特殊な屈折力を持つレンズを挿入する方法です。近視・遠視・乱視などの屈折異常が対象で、中等度から高度の近視や乱視まで幅広く矯正できます。

ICL手術の流れとしては、点眼麻酔を行った後に黒目(角膜)の端を約3mm切開し、やわらかい素材でできたレンズを折りたたんで挿入します。レンズは虹彩の後ろ、水晶体の前に固定されます。片眼わずか数分程度で終了し、縫合の必要がない小さな切開なので日帰り手術が可能です。角膜を削らないためドライアイになりにくく、万が一合わない場合はレンズを取り出して元の状態に戻すこともできます。このように眼球組織を温存できる点が、レーシックなどほかの屈折矯正手術との大きな違いです。

ICLをやらなきゃよかったと感じる理由

ICLをやらなきゃよかったと感じる理由

ICL手術を受けた方の多くは高い視力と裸眼生活の快適さに満足されていますが、一部には手術後のトラブルから「やらなければよかった」と感じてしまうケースもあります。それぞれどのような現象で、なぜ起こるのかを解説します。

ハロー・グレア現象

ICL手術後によく報告されるのがハロー・グレア現象と呼ばれる症状です。ハローとは夜間や暗所で点光源(街灯や車のライトなど)の周りにぼんやりと光の輪が見える現象、グレアとは光がギラギラと眩しく感じられる症状を指します。ICL手術後、特に瞳孔が開く暗い環境でレンズの縁やレンズと瞳孔径のミスマッチによって光が散乱し、このハロー・グレアが発生することがあります。実際、ICLを受けた患者さんの15~34%程度にハロー・グレアの訴えがあったとの報告もあります。一部では、夜間運転がしづらいなど日常生活に支障を感じて「手術をしなければよかった」と後悔するほど強いハロー・グレアが持続することもあります。

レンズの位置ずれ

ICL手術では目の中に挿入したレンズを虹彩の裏側で安定させますが、レンズの位置ずれ(偏位や回旋)が起こると視力に悪影響を及ぼします。特に、乱視矯正用のトーリックICLでは、レンズが回転して軸ずれを起こすと乱視補正が不十分になり、視力低下や見え方のゆがみが生じます。こうした場合、再手術でレンズの位置合わせ(再回転)やサイズ交換が必要になることもあります。

幸い現在のICLの設計と術前検査の精度向上により位置ずれの発生率は極めて低く、大規模調査ではICLの再調整や交換が必要になったのは0.2%程度との報告があります。一方、強い衝撃(事故や激しいスポーツによる打撲など)でもレンズが外れる脱臼が起こりえます。これもまれで、外傷が主な原因ですが、万一レンズが所定の位置から逸脱すると、見えにくさや痛みが出るため緊急の対応が必要です。レンズ位置の不具合は手術直後よりもむしろ術後しばらく経ってから気付くこともあり、その場合患者さんは「思ったように見えない」と不満を感じることがあります。

近視の過矯正

ICL手術では患者さん一人ひとりの度数に合わせてレンズ度数をオーダーメイドしますが、まれに近視が過剰に矯正されてしまう(過矯正)こともあります。過矯正になると遠くはよく見えても今度は近くが見づらくなり、特に若い方でも手元がぼやける老眼様の症状を自覚することがあります。「見え方がシャープすぎて疲れる」「手術前より近くを見るのが辛い」といった不満から後悔につながる場合があります。原因としては、術前の度数測定誤差や術後の眼軸長変化(眼の長さの微妙な変化)などが考えられます。ICLの場合、レーシックのように組織を削ってしまうわけではないので、過矯正や残余近視が大きい場合はレンズの入れ替えや追加矯正で対応可能です。

眼圧の上昇や緑内障の発症

ICL手術後の眼圧上昇は重大な合併症の一つです。眼圧が異常に上がると緑内障を引き起こし、放置すれば失明につながる可能性もあります。ICLでは虹彩と水晶体の間にレンズを入れるため、一時的に房水(眼の中を循環する透明な液体)の流れが悪くなることがあります。特に、以前の旧型ICLレンズ(中央に穴のないタイプ)では、術後にレンズが虹彩を押して房水の通り道を塞いでしまい眼圧が急上昇するケースが知られていました。このため旧型レンズでは手術前にレーザーで虹彩に小さな穴(虹彩切開術)を開け、房水のバイパス路を作る対策が取られていました。

現在主流の新しいICLでは、レンズ中央に直径0.36mmほどの孔が開いており、房水が通過できる設計のため、原理的に術後の急性眼圧上昇は起こりにくくなっています。例えばある症例では、ICL手術8年後に緑内障が発症し、長期にわたる経過観察の重要性が指摘されています。したがって、術後は定期的に眼圧チェックを受け、少しでも異常があれば早期に対応することが肝心です。

術後の感染症

どのような手術でも感染症のリスクは付きものですが、ICL手術の場合もごくまれながら術後眼内感染(眼内炎)が報告されています。目の中に細菌が侵入して増殖すると、眼内炎といって強い痛みや視力低下を伴う重篤な状態になります。ICL手術後に眼内炎が発生する確率は約0.01~0.02%(数千~数万件に1件程度)とかなり低率ですが、ひとたび起これば失明につながる恐れもある重大な合併症です。合併症が起こる確率は低くても、患者さんにとっては万一自分がそのまれなケースにあたってしまったらという不安は残るでしょう。実際に感染症により視力が落ちてしまったり追加治療が必要になった患者さんは「手術を受けたのは間違いだった」と感じても無理はありません。

ICLをやらなきゃよかったと感じないためのポイント

ICLをやらなきゃよかったと感じないためのポイント

大切なのは、ICLのリスクを正しく理解しつつ事前準備と適切な選択を行うことで、手術の成功率を高め後悔しない結果につなげることです。以下ではICL手術を検討する段階で気を付けたいポイントを紹介します。

ICLのリスクを確認しておく

まずICL手術特有のリスクを十分に理解しておくことが重要です。上述したような合併症が起こりうることをあらかじめ知っておきましょう。手術前にリスクを承知していれば、万一軽度のハロー現象などが出ても過度に慌てずに済みますし、適切な対処行動をとることができます。リスクを恐れすぎる必要はありませんが、ゼロではないリスクがあることを確認し、不安な点は手術前に医師に質問して解消しておくとよいでしょう。「知らなかった」「聞いていない」という状況を避けることが、後悔防止につながります。

信頼できる眼科を選ぶ

ICL手術を任せるクリニックや術者選びも極めて重要です。信頼できる眼科専門医、特にICL手術の豊富な経験を持つ医師に手術をお願いしましょう。経験豊富な術者ほど適切な患者適応の見極めや手術中の合併症回避に長けており、万一何か起きても迅速適切に対処できる可能性が高いからです。また、信頼できる施設では手術前後のフォロー体制もしっかりしています。術前カウンセリングで質問に丁寧に答えてくれるか、合併症が起きた場合の対応方針はどうか、定期検診のスケジュールは組まれているかなどを確認しましょう。費用だけで判断せず、総合的に信頼のおける医療機関を選んでください。

術前検査をしっかり受ける

ICL手術で後悔しないためには術前検査を厳密に行い、自分の眼の状態を十分に把握することが欠かせません。ICLには適応条件があります。各種条件をクリアしているかを調べる術前検査は重要です。検査結果によってはICL以外の治療法をすすめられることもありますが、それは患者さんの安全を最優先しているからです。術前検査は自分の眼にICLが本当に適しているか確認する大事なプロセスですので、医師の説明をよく聞きましょう。万一検査で問題が見つかれば、その時点で手術を見送る判断も必要です。妥協せずしっかり検査を受けることが後悔防止の第一歩です。

不安なことはカウンセリングで確認する

ICL手術を決断する前に、不安な点は遠慮なく医師やカウンセラーに質問して解消することも大切です。手術への不安を抱えたまま受けてしまうと、ちょっとした症状にも過敏になってしまい「やっぱりやるんじゃなかった」と後悔しやすくなります。信頼できるクリニックであれば、質問に丁寧に答えてくれるはずですし、患者さんが納得してから手術日程を決めるよう配慮してくれます。カウンセリングではリスク説明書や同意書も渡されますので、内容をよく読み理解することも重要です。

ICL手術後の過ごし方のポイント

ICL手術後の過ごし方のポイント

ICL手術を無事終えた後も、適切なアフターケアを行うことで合併症を防ぎ、快適な視力を長く維持することができます。術後の注意点を守らないと思わぬトラブルを招きかねません。ここではICL手術後の過ごし方として押さえておきたいポイントを解説します。

医師に指示された注意点を守ってケアする

術後は担当医から点眼薬の使用方法や生活上の注意事項について詳しい指導があるはずです。これらの指示は合併症予防のために重要なので、必ず守ってセルフケアを行ってください。例えば、抗生物質の目薬は指示どおりの期間しっかり差すことで感染症リスクを下げられますし、消炎剤の点眼も炎症による眼圧上昇を防ぐため欠かせません。処方された点眼薬は勝手に中断せず、指示された回数・期間を守りましょう。洗顔や入浴についても、術後数日は目に水や石けんが入らないよう注意が必要です。このように指導されたアフターケアをきちんと実行することが、良好な経過と後悔しない結果につながります。

激しい運動はしばらく控える

ICL術後は基本的に日常生活はすぐ再開できますが、激しい運動や目に衝撃が加わる可能性のある行為は一定期間控えることが推奨されます。一般的な目安として、軽い運動は術後1週間程度から可能ですが、格闘技のような強い衝撃を伴うスポーツや水泳・ダイビングなどは少なくとも術後1ヶ月は避けた方がよいとされます。これは、術後間もない時期に目に強い圧力や衝撃が加わると、レンズの安定性に影響したり、術創からの感染リスクが高まったりする恐れがあるためです。もちろん、程度問題ではありますので、医師から個別に指示がある場合はそれにしたがってください。

定期的に眼科で検診を受ける

ICL手術後は、たとえ順調でも定期検診を受ける習慣を持ちましょう。術後の経過チェックでは、視力の安定度、レンズの位置や状態、眼圧、角膜内皮細胞の数、水晶体の透明度などを定期的に確認します。一般には術後翌日・1週間・1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月・1年といったスケジュールで検診を行い、その後も年に1回程度は受診すると安心です。医師から「次は〇ヶ月後に来てください」と指示があった場合は必ず守り、何か気になる症状があれば予約日を待たず早めに受診することが、後悔しない術後生活につながります。

ICLの安全性とリスクの現状

ICLの安全性とリスクの現状

ここまでICLのリスクや合併症について説明してきましたが、現在のICL手術は技術革新により安全性が飛躍的に向上しています。最後に、新しい研究や医療ガイドラインに基づき、ICLのリスクと安全性に関する現状を解説します。従来のICLで課題とされていた点がどのように改善され、現時点でどの程度安全な手術と評価されているのかを見ていきましょう。

従来のICLにおける課題

ICLが初めて登場した当初からしばらくの間、いくつか課題となっていたリスクがあります。代表的なものは眼圧上昇と白内障発症のリスクです。上述したように、旧世代のICLレンズでは、術後早期の眼圧上昇が問題となりました。また、レンズサイズの選定が不適切だと、水晶体に触れて白内障を引き起こしたりするリスクも指摘されていました。実際、ICL手術後5年間で1.3%程度の患者さんに白内障が生じたとの長期データもあります。しかし、手術テクニックの向上により、術中合併症も極めて少なくなりました。こうした努力により、旧来型ICLであっても合併症発生はかなり低率に抑えられてきた経緯があります。それでも残っていた課題に対し、デバイス自体の改良が図られ現在の新しいICLへと進化しました。

現在のICLの安全性とリスク

現在主流となっている新しいICLでは、従来の課題が大きく改善され安全性が向上しています。大きな改良点はレンズ中央に小さな孔(ホール)を設けたことです。これにより術前の虹彩切開が不要になり、房水の流れが確保されるため術後の眼圧上昇リスクが劇的に減少しました。白内障に関しても、レンズの形状とサイズ選択アルゴリズムの改良で水晶体とICLの適切な距離が確保しやすくなり、レンズが触れて白内障になるリスクは従来より減っています。こうしたことから、現在のICLは安全性が高い手術になりました。もちろんゼロリスクではないため術者は細心の注意を払いますが、適応を守り正しい手技で行われたICL手術であれば、患者さんが深刻な合併症に見舞われる確率は極めて低いといえるでしょう。

まとめ

まとめ

ICLは、適応を満たした患者さんに対しては有効かつ安全性の高い視力矯正手段です。角膜を削らず高度近視まで矯正できるというメリットから、近年では国内外で多くの方がICLによるクリアな視界を手にしています。一方で、どのような手術にもリスクは存在することも忘れてはなりません。正しい知識を持って慎重かつ前向きに判断すれば、きっと快適な裸眼生活を手に入れて「やってよかった」と思える結果につながることでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
栗原 大智医師(眼科医)

栗原 大智医師(眼科医)

2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。 / 資格:日本眼科学会専門医

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